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チートなおじさんが覚醒しました。

おじさん頑張ります。誤字等ありましたら指摘ください。


蔦できた椅子は根を這わせてゆっくりと前へ進んでいく。慌てて降りようとするが地面からの高さを考えると顔が青ざめる。考えている間にもどんどん進む蔦に、数分後ついに諦め、僅かに近くなった空を眺める。異世界、と言って間違いは無いだろう。そう認めた瞬間、疲れがどっと身体に溢れ、重くなり始めた瞼は自動的に閉じられた。無防備過ぎる姿だったが、幸いにも次に起きるまで別に命の危機に晒されることは無かった。

そんなこんなで段々木々がまばらになっていく森を抜け、辿り着いたのは広大な大地と空を見渡せる高い崖だった。爽やかに吹く風は何故か海のかおりがする。近くに海があるのだろうか。異世界に来て容姿が変わり更に自分が出したのかもしれない蔦でできた椅子に揺られていると言う異常(アブノーマル)な状況に既に感覚が麻痺したのかそんな呑気な事を考えていると崖の中央付近で蔦の椅子は止まり、高い位置から地面に逆再生のように蔦が戻っていき、先程までの椅子は無くなって今は立っている状態になった。しかし、便利なものだ。

「ここからどうしようかねぇ…」

森を抜けたといっても目の前には大自然しかないしここは崖だ。人はいるはずない。

「まぁ、歩くしかないよね」

仕方なく歩を進め、崖のギリギリ端まで体を動かし覗きこむ。

「うわぁ高い…」

落ちたらヤバイどころじゃない。何とか、また先程の蔦のような出来事が起こらないだろうか。地面を手でペチン、と触りながら冗談混じりに思うと、何と、崖の先端部分、つまり自分のいる場所がピンポイントで崩れ落ちた。

「なっ…!?」

終わった。本能的に目を瞑る。きっと数秒後には地面に叩きつけられてお陀仏だ。走馬灯が流れる間も無いのだろう、そう思った。だが、いつまで立っても衝撃が訪れない。

「…?」

不思議で恐る恐る目をあけると、何と。

自分は地面から約1m離れた空中で止まっていた。足の下には小さな風の渦が巻き起こっている。これで浮いているのだろう。妙な浮遊感のわりにはしっかりとバランスが取れる。何故か的確に分析した後、我に返りこの風の解除方法を探す。

「か、風、止まれッ…とか?」

いくら動いても止まらなかったので適当に唱えると、足下の風はいともたやすく消滅した。

「おっと」

そのまま着地し、結果オーライで降りてこられた広大な大自然は森ほどではないが木が生えていて地面も都会のコンクリートではなく固い土だ。

「町的なものはあるのかな?」

顎に手を当て呟く。

一応人には会っておきたいし、この世界の話も聞きたい。情報がないままじゃあまり迂闊に行動できないからな。

暫く真っ直ぐに歩いていると、流石に疲れてきたので近くの木の下で一休みする。さっきの能力を使えばいいのだろうが、如何せん制御があまりできないので止めておく。数分後、歩き始めようとして立ち上がった。だが、ある違和感を感じた。木陰から出たはずなのに、まだ少し暗い。何でだろう?疑問に思い訝しげに上を見ると、そこには禍々しく、巨大な、骨だけの竜がこちらを狙っていた。

「……!!?」

竜はこれまた骨だけの翼をはためかせ、宙に浮いたまま日光を浴びて白く光る骨の体を揺らしている。骨の体といっても、所々機械のチューブのようなものが繋がれており、更に顔部分には明らかに動物の頭蓋骨ではなく人間の頭蓋骨を巨大化し犬歯を長くしたような感じだった。口からは金属を擦り合わせたような奇声を出すその竜は、自分に襲いかかっているのだ、と気づくのと、竜が自分に向かってその長い尻尾を降り下ろすタイミングは、僅かに竜の方が先だった。

「がぁッ、ぐ!?」

鈍い痛みが身体に走った。脇腹が痛い。骨が砕けて肺に刺さったのだろうが、息が詰まる。喉に違和感を感じ激しい咳を繰り返すと、量が多すぎて黒に近くなった血が一気に吐き出された。目からも出血しているのか視界が真っ赤に染まっている。ヤバイ、眠い。体全体が重くなって、沈んでいく。

痛い痛い痛い痛い…!!!

情けない嗚咽しか出ない。焦りが体を満たしていく。

「…はー、はー」

手を竜に向かって(かざ)しても、蔦や風が現れることは無くて、全部嘘だったのかと疑うほど、絶望と恐怖に支配された感覚が、血に混じって涙を流した。尚も尻尾で押し潰されメキメキと骨が軋む。あまりの痛みに吐き気がこみ上げてきた。

「う、ぅ」

霞む世界に、すべてを諦めかけたその時だった。


「おらぁぁああッ!」

勇ましい雄叫びと共に、可愛らしい少女が不釣り合いな巨大ハンマーを持って竜に突撃した。

「なっ!?」

痛みも忘れ呆然と少女を見つめる。少女は巨大なハンマーの一撃で怯んでいる竜の隙をつき、こちらを守るように前に立ちはだかった。

艶やかな菖蒲色の長髪と群青色の瞳が常人離れした雰囲気を放つその少女は、薄紫の袴を揺らして、もう一度巨大なハンマーを竜の頭に叩きつけた。

「はぁッ!りゃああっ!」

凄まじい轟音と突風が何回も間髪入れずに巻き起こり、竜はついに奇声をあげながらその場に倒れた。少女はそれを確かめると、こちらを向いてニコッと笑った。

「大丈夫か?…って大丈夫じゃないよな。こんなところにいるなんて君はトラブルにでも巻き込まれたのかい?その珍妙な瞳の色も。聞きたい事が沢山あるけれど今は君をこの危機的状況から救出する事が最優先だ。取り敢えず私の住む町に__、」

ベキッ。気味の悪い音がして、目の前の少女の首の骨が折れた。

「なっ、に?」

倒れた少女の後ろにいたのは、あのハンマーをうけて傷ひとつしていないあの竜だった。竜はまたあの金属を擦り合わせたような音を出しながら、こちらに襲いかかろうと身構えている。

「…やっばいなぁ、僕。死にたくないなぁ…ねー、どーにかしてよ、さっきの力だって僕のなんだろ…だったらどーにかしろよ、なぁ、おい!!!」

力任せに既に傷付きすぎて機能しない喉から声を何とか捻り出して、叫ぶ。すると、丁度襲いかかってきた竜が腕に触れる直前、辺りが静寂に包まれた。そして、信じられないことに、竜の動きが空中でぴったりと止まったのだ。

「……は?これなに?」

自分以外の全てが止まっている。空気も、物も、時間さえ。簡単に言えば、時を止めたのだ。自分は。

「いくらなんでもブッ飛びすぎだろ、ハハ…」

思わず笑いが込み上げてくる。そして、別の感情も。

「見ず知らずのオンナノコ巻き込んじゃって殺しちゃったんだ。責任は取らないとね……ということで、消え失せろ、ガイコツ」

血がどくどくと流れる右手の平を竜に向け、ゆっくりと、一本ずつ指を閉じて拳をつくっていく。

「……は・れ・つ・し・ろ」

最後の指が下ろされ完全な拳が出来上がった直後、竜は拳の動きに合わせるように、爆発した。辺りには肉片が飛び散った。返り血をたっぷり浴びて真っ赤な体を軽く揺らして、全ての血を蒸発させる。この力の扱い方は大体分かった。血が跡形もなく消えたころ、一息吐いて指を鳴らすとまた時間が動き始めた。

「……大丈夫じゃないよね。この子」

倒れたままの少女を見下ろし、申し訳ない気持ちになる。鼻の奥がツンとする変な気持ちだ。せめて血は拭ってあげようと手を翳す。

「わぁっ?!」

その手が何と少女によって掴まれたのだ。そして少女は何事もなかったかのように血だらけの顔で倒れたままニコッと微笑んだ。

「先程は油断していてな、すまなかった。私もまだまだ鍛練不足だな、ハハハ。でも君が倒してくれて助かった。ありがとう。そこで頼みたいんだけれど、先の君の戦い、といっても始まりと終わりしか見ていないが、それで君は超自然的な力らしきものを使っていると私は思ったのだよ。だから、私のこの傷を治すことはできないかね?」

血を吐きながらペラペラと喋る少女に少し驚いたが、小さく頷いて手をまた翳すと、少女の体の傷は嘘のように癒えた。

「ありがとう、申し訳ないね」

「いや…良いんだ。それより、キミは?」

立ち上がる少女に合わせて自分も立ちながら質問すると、少女は可笑しそうにクスリとした。その行為を疑問に感じ首をかしげると、少女は答えた。

「私は王国騎士団の女団長兼王女のカサネだよ、知らないのか?」

短いですかね、すいません。

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