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ありす召喚  作者: 左傘 蕨
本編
1/4

さてやってしまいました。まさかの連載。

大丈夫。三つで終わります。


そして遂にあの人が……!


それではどうぞ。



 さて、私は毎日を楽しく、けれどそれを楽しいなんて思わずに当たり前として享受して。

 それが楽しくてしょうがなくて。


 そのせいで。


 どうやら私は忘れてしまっていたらしい。

 当たり前や日常なんて儚いもの、とんでもない奇跡でいとも容易く脆く崩れてしまうものだってことを。




 ♢




 To 有子

 From 有守にぃ

 件名 召喚された。

 ーーーーーーーーー

 なんか知らないけどわけわかんない奴らに召喚されたっぽい。勇者を倒して欲しいんだって。

 面倒くさいけど倒さないと返してくれそうもないからがんばってくる。


 今日中に帰れそうにはないから晩御飯いらない。


 ーーーーーーーーー




 …………………………………………………………………………………………………………………………………………………………は?

 思わず声をあげてしまった私はきっと悪くない。

 え、だって。だってわけわかんない。


 取り敢えず義兄よ、何があったのだ。もうちょっと詳しく説明しようぜ。

 て言うかこれなに?嫌がらせ?受けて立つべき?

 寧ろ召喚ってなんだし。今時流行りの異世界トリップってやつ?何が悲しくてお前が召喚されなきゃならん。


 て言うかメール……異世界召喚?でメールってどんな状況。何してんだ義兄よ。



 取り敢えず返信おくか。

 内容はー……了解、だけでいっか。


 送信、と。



 数秒の間もおかずすぐに携帯が震えた。

 早いな、と思ったら今度は兄だった。


 兄が私にメールをするなんて珍しい……と思ったらこれまた巫山戯た内容だった。



 曰く





 ……兄も召喚されたらしい……




 と。


 兄は勇者として魔王を倒すために呼ばれたらしい。

 もしこれおんなじ世界だったら世界を超えての兄弟喧嘩か?それもまたすごいな。



 ぼんやり携帯片手に窓の外に目を向けた。もともと先生の話なんて、聞いてない。



 ふと。今日の夕飯どうしようかな、なんて。


 今日はクリスマスイブだから、美味しいもの食べて、ケーキも作って、たまには三人仲良くできるかな。なんて思ってたけど。

 やっぱり間が悪い。

 延期、か中止だな、美味しいもの食べるのは。



 ま、いいか。喧嘩しないからきっと静かだし。その分私も楽できるだろうし。




 ♢




「ただいま」


 なんだか少し不思議な感じがする。いつもなら道路で兄が転がってるとか家の中でばたばたとあにたちが暴れる音が聞こえてくるはずなのに。


 何より、おかえりって。

 誰かしらいつだって言ってくれる筈なのに。




 当たり前のものがない家は何処か空虚に独りだけの寂しさを思い出させた。


 しん、と静まり返った家は慣れなくて嫌だ。

 誰もいないのは少し、やなことを思い出させるから嫌いだ。

 声が返ってこないのはちょっと前みたいで吐き気がする。


 ぐるぐるぐるぐる。


 なんでだろう。

 あにたちがいないのは“私”からすれば歓迎すべきことの筈で。

 それなのに。


 どうして。




 ♢




 カチャリ、と。フォークを食べ終わって空になった皿においた。


「……ご馳走様でした」


 ついいつもの癖で手を合わせる。

 けど、ひとりぼっち。

 いつもならナイフが飛んだりフォークが飛んだり。賑やかで、けれど確かに食べ終わったら皆で手を合わせてご馳走様って……。


 なんだろう。

 これは、歓迎すべき出来事の筈で。

 それで、だから。つまり。


 ……可笑しいな。さっきもこんなこと考えた気がする。




「寂しいなぁ……」


 ポツリ、と意識せずして言葉が零れた。


 そして、口に出した言葉が意味を持って私の中で形をなして、驚く。

 寂しい、だなんて。

 そんなこと。


 思ったことなかった。



 私の中で形をなした言葉はゆっくりと溶けて染み渡り、そこでやっと私は気づく。


 確かに、あにたちがいないのは“私”にとっては歓迎すべきことだけれど。

 けれど“有子(わたし)”には、きっとすごく大切なもので。

 だから、いつもあるべきものがないことに寂しさを覚えたんだ。


 気づいて苦笑する。


 なんだ。私、あにたちのこと、大好きなんじゃん。


 何より、あにたちが向こう(・・・)で私の知らないうちに何かあったりだなんて。

 そんなこと許せるはずもない。


 だってやっぱりそうでしょう。

 あにたちは、私のだ。


 他の奴に取られたまんま、私のあずかり知らないところで。なんて。そんなの私のものなのに許されるわけなんてなかったのに。


 それを許しちゃったなんて随分と私も腑抜けたもんだね。



「うふふ」


 思わず声が零れた。


 そうだ。取られちゃったなら取り返しにいかなくてはいけない。


 苦笑だった私の笑みがその形を変えていく。

 その形は、歪に歪んで三日月のよう。



 自覚して、楽になった。

 ふんわりと、心踊るよう。


 そうだ。迎えに行こう。


 折角のクリスマスなのに皆でいないだなんて。そんなのつまらないし勿体無い。




「それじゃぁ、愚兄ども(私の)をお迎えにでも行きますか」



 召喚された?そんなの関係ない。

 どこにいるのかわからない?調べればいい。

 迎えに行ける距離じゃない?送ってもらえば一発だし。

 何より世界が違うって?


 そんなもの。


 “私”からすれば大した障害じゃあないわ。


さて。遂にあの人がやんできましたね。

て言うか私が書いてて病まない人なんて……ね?


それでは。


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