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009 迷宮なんてぶっつぶせ

迷宮・・・それは自然発生の災害。

迷宮の口が開くと、多数の魔物が溢れ出す。


その正体は魔力の吹き溜まりとも、神の気まぐれとも言われているが、実際の所は今だ解明されてない。


ただ一つ言える事は、迷宮が発生した土地に住んでいた人達は、最早住み続ける事が出来ないということだ。


だが、それはマスターのいない迷宮の話であり、マスターの存在する迷宮は全くの別物となる。


マスターの意のままに動く従順なモンスター。

地上に満ちる潤滑な魔力。

魔力の恩恵は莫大な富となる。


迷宮のマスターとなる方法は一つ。

迷宮の核に認められる事。


1つのパーティーが迷宮を進む。


迷宮の名はガーウェン


編成は重戦士・侍・僧正・魔導師・レンジャー・盗賊。

バランス良く連携も鋭いこのパーティーは、迷宮攻略まで後一歩まで来ていた。


「やっと・・・ここまで来たな。」


リーダーであり、唯一の男性

人間の魔導師、クエスがみんなを鼓舞する。


「はい。この先に居る守護者を倒せば、聖杖ガーウェンが手に入るのですね。」


人族の侍、アカネが周囲を間断なく見渡す。


「そうすりゃクエス。

 あんたがこの都市のマスターになれる。」


ドワーフの重戦士、コーラルが大盾と斧を担ぎなおす。


「マスターの居る迷宮は大人しくなり、地上に打ち棄てられた都市に魔力が潤滑に供給される・・・ですね。

 住む場所の無い人たちの希望の地となるはずです。

 もう一息頑張りましょう!!」


有翼人の僧正、ナターシャが改めてこの冒険の意味をかみ締める。


「罠、そして敵の気配はありません。」


エルフのレンジャー、ミーサは間断なく周囲を見渡す。


「クエス様っ、最後の戦いです。

 頑張りましょうね。」


人間の盗賊、ネルシは後方に注意しつつ殿を歩く。


「皆、ここまで着いて来てくれてありがとう。

 もう一息だ!!

 もう一息で都市を開放できる!!」


「あぁ、アタシ等の故郷を迷宮から奪還できるんだ。」


「拙者は昔の都市を知りませぬが、クエスやコーラルの故国・・・拙い力なれど恩義を返す為、精一杯力を尽くしましょうぞ。」


「皆様お待ちください。

 前方に扉が見えます。」


先行するクエス・コーラル・アカネをミーサが止める。


「ネルシ、扉を調べてくれ。」


「はーい、すぐ行きます。

 アカネ、殿しんがりよろしく♪」


ネルシが扉に向かって駆けて行く。

アカネはネルシの代わりに殿に付き、後方に警戒を払う。


「オッケー、扉まで罠の類いは無し。

 ナターシャ、魔法が扉に掛かってないか確認して。」


「判りました。」


周囲の警戒を怠らないまま、扉の前にたどり着くとナターシャが扉に向けて手をかざす。


「禍々しい気配を感じますが、扉に魔法は掛かっておりません。

 おそらく、この門の先に守護者が居ます。」


そう言って手を下ろすと、その額には冷や汗がびっしりと浮いていた。

その汗がどれだけの強者が向こうにいるかを物語っている。


「ネルシ、鍵は?」


「・・・おっけ、開いたよ。」


だが、6人は後退を選択しない。


「俺とナターシャで全員に障壁と強化の魔法をかける。

 その後はコーラルが敵の気を引きつつ、アカネとネルシが遊撃。

 敵が多数いる場合は3人で防いでくれ。


 後方からミーサと俺で攻撃だ。

 ミーサは敵が多数なら雑魚から殲滅。

 一体なら急所を狙ってくれ。

 俺も同様に動く。


 ナターシャは常に回復が出来るよう待機。

 障壁が破れ次第、新しい障壁を頼む。

 最後の生命線だ、絶対に危険な場所に行かないように。」


「「「はい」」」


全員が理解した事を確認すると、ナターシャが障壁を、クエスが強化を掛けてゆく。


「・・・これで・・・最後の戦いだね。」


誰とも無しに呟いた言葉に全員が頷く。



「それじゃっ、行くよ!!」


コーラルが勢い良く扉を蹴破る。


ガコンッ


ゆっくりと扉は開く。

中には巨大なレッドドラゴンと数十体のスケルトンが立っていた。


「多い!?

 コーラル!!扉から中に入るな。

 アカネとネルシも敵が扉を超えないよう支えてくれ!!

 

 ミーサ、俺と一緒に雑魚から潰すぞ。

 ナターシャ、"浄化"でスケルトンの一掃を狙ってくれ。」


「「「ハイ!!」」」


悲鳴のようにクエスは叫ぶと詠唱を唱え始める。


幸運な事にレッドドラゴンは奥に鎮座したまま動かない。

コーラルは大盾を両手で構え、扉の中央に立つ。

アカネは刀でコーラルの右側を、ネルシは片手盾と短剣で左側を抑える。


「強ぇ!?

 コイツ等ただのスケルトンじゃねぇ、アカネ、ネルシ気をつけろ!!」


コーラルがうめき声に近い声を上げる。


「くっ・・・一撃が重い・・・竜気を受けたか?

 変異種かも知れません。」


「わっ・・・きゃっ・・・ちょっ・・・動きが速いよっ。

 間に合わな・・・きゃっ」


アカネ・ネルシも2・3匹相手に苦戦のていだ。


「ネルシ危ないっ!!」


パシュ


ミーサも3人に迫る攻撃をいなすので精一杯だ。

スケルトン本体に向かって撃つ事が出来ない。


「魔法行くぞっ!!」


永遠とも数瞬とも言える攻防の中、クエスの言葉が響く。


前衛3人の頭上に無数の氷の矢が出現する。


「行っけえっ!!」


ネルシの声に声援を受けて後ろに殺到していたスケルトンに突き刺さって行く。

魔法の直撃を受けたスケルトンは、大半が体の各部位を欠損し動きが鈍る。

スケルトンに動揺が走ったか、3人に迫る勢いも弱まる。


「今です!!

 "浄化"行きます!!」


スケルトンの群れの中心から魔法陣が浮き上がる。


「せりゃぁ!!」


「てぇい!!」


「やあっ!!」


3人が群がっていたスケルトンを渾身の力で押し戻す。

数瞬後、魔法陣からまばゆいほどの白い光が放たれる。


シュバァッ


「よっしゃ!!」


「後はレッドドラゴンだけだっ!!」


「・・・いえ、まだです。」


一息つくコーラルとネルシとは裏腹に、アカネは眼光鋭く前方を見据える。


「気を抜くな!!」


クエスの檄と共に、一体のスケルトンがコーラルへ切りかかる。


「危ないっ!!」


ミーサの放つ矢がスケルトンの頭部に吸い込まれ、砕ける。


光がおさまったその場には、6体のスケルトンが無傷で立っていた。


「ですがっ!!」


更にミーサは矢を打ち込むと、2体のスケルトンを打ち砕く。


「「「これでっ!!」」」


アカネの一閃で更に一体が。

大盾から斧へ持ち替えたコーラルの一撃でもう一体が。

ネルシに眉間を貫かれたもう一体が崩れ落ちる。


「終りだっ!!」


クエスの投げたチャクラムが最後の一体の首を払う。


「もう・・・一度っ!!」


ナターシャが"浄化"を放つと、復活することなくスケルトンは消えて行った。


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」


肩で息をつく6人。

だが、ここでレッドドラゴンが動きだす。


『よくぞ試練を乗り越えた。

 これより先は迷宮の核を得るべき為の選別の間。

 選別を受けるか?』


クエスは物怖じせず、レッドドラゴンの眼前へ進む。


「もちろん受ける。」


『その心意気は良し。

 選別は私と戦い、勝利する事だ。

 

 10分時間をやろう。

 その間に先ほどの疲労を回復するが良い。』


レッドドラゴンはそれだけ告げると、元の場所へと戻り、目を閉じる。

6人は地面にへたり込み、アイテムパックから回復薬を取り出した。


「やはり、戦いは避けられそうにないですね。」


「ああ・・・ナターシャ、魔力は大丈夫か?」


「皆を治癒したら魔法薬で回復いたします。」


「分かった。頼む。

 皆、回復薬はいざと言う時用にとっておいてくれ。」


「分かった・・・ナターシャ、アタイは疲労回復だけで良い。」


「分かりました。

 コーネルさん、耐熱障壁も一緒にかけますね。」


「ありがとうよ。」


その後もナターシャはコーネル・アカネ・ネルシを回復し、耐熱障壁を張っていった。


クエスも魔法薬で魔力を回復すると、全員に強化の魔法をかけていった。


『そろそろ時間だ、覚悟は良いか?』


レッドドラゴンは目を開くと、開戦の合図をする。


「皆、作戦はさっきの通りだ。

 行くぞ!!」


「「「「「ハイ!!」」」」」




それから数分・・・


「クソッ・・・何故だっ・・・何故通じない!!」


部屋の中は激戦を物語っていた。

部屋のいたるところは凍りつき、壁には血の痕と焼け焦げた痕が残っている。


6人は生きているが、満身創痍。

それに対してドラゴンはまだ健在だった。


『人の子よ、それなりの力を見せてもらったが、まだまだ力不足。

 我に挑むのは早かったようだな。』


「ここまで差があるたぁねぇ・・・」


にやりと笑うコーラルだったが、右手は炭化し、左手の大盾も変形や溶融でほぼ使い物にならなくなっている。


「やり直しってことで見逃しては・・・くれないよね?」


おどけるように言うネルシは、鎧に大きなカギ裂きがあり、腹部が赤く染まっている。

立つのもやっとと言う状態だ。


『選別の結果は死か栄光のみ。

 逃亡は許されない。』


「ならばせめて一太刀だけでも・・・」


気丈に振舞うアカネだったが、両足とも焼け焦げ、歩く事さえままならない。


「みなさん・・・すぐに・・・癒します。

 おまち・・・ください。」


すでに魔力を使い果たし、命を削って回復魔法を施行するナターシャ。

だが、その命の力も尽き始めていた。


その手は、目の前の倒れ付したミーサに向けられていた。

ミーサは体の半分が焼け爛れており、生きているのが不思議なくらいだ。


「死ぬわけには・・・死ぬわけには行かないんだっ!!

 俺は約束したんだ・・・皆と共に聖杖を手にすると!!」


杖を掲げ、精神を集中するクエスだが、その手はどす黒い。

全ての魔術が聞かなかったクエスは、最後の手段として禁術を発動し両腕を代償として捧げていた。


「これを・・・食らえっ!!」


クエスの掲げた杖からは、夜よりも暗い闇の球体がレッドドラゴンへと飛ぶ。


『笑止。』


ドッゴォォォォォン


だが、レッドドラゴンが右手に炎を纏い、球体を殴りつけると爆音を立てて球体は消滅した。

レッドドラゴンは右手から血を噴出し、力が抜けたように垂れ下がる。


『人の身で扱うには強大な力だったが、我には及ばなかったようだな。

 大人しく、黄泉へ向かうが良い。』


レッドドラゴンは火球を吐き出す。

勢い良く飛んでくる火球は6人を焼き尽くすコースだ。


だが、クエスの目に映っていた火球は大盾によって遮られた。


「クエス・・・今までありがとな。

 こんなナリだし、ずっと言えなかったけど・・・お前の事、愛してたぜ。」


ッゴオオオオオォォン


火球は大盾に接触すると、高熱と爆発でコーラルの体を吹き飛ばす。


「コーラァァァァァル!!!!」


クエスは絶叫する。

吹き飛ばされたコーラルはまだ生きているが、すでに虫の息状態。

すぐに回復しなければ危ない。


『1人犠牲となり、全員を守るとは天晴れな盾。

 だが、残り5人が後を追うのも直ぐだ。』


レッドドラゴンは翼をはためかせ、立ち尽くすクエスへと風の刃を放つ。


「させませんっ!!

 拙者だって・・・コーラルに負けないぐらい主殿の事をお慕いしております!!

 最早できる事は少ないですが、主殿の盾にならば!!」


「僕だって同じだっ!!

 言えなかったけど、クエス様愛してる!!

 クエス様・・・何とか生き延びてくださいっ!!」


アカネとネルシはその体を盾にしてクエスを守る。


「アカネッ!!ネルシッ!!」


『まだまだだっ!!

 ・・・なっ!?』


ズタズタに切り裂かれた2人は、コーラルと同じように息はあるがこのままでは・・・

更に追撃しようとするレッドドラゴンの動きが止められる。


「"刻の砂時計"・・・私とミーサの命が尽きるまで貴方は動けません・・・

 愛しのクエス様・・・今の内にお逃げください。」


「クエス・・・お願い・・・逃げて。

 貴方を失うのは・・・嫌。」


ナターシャ・ミーサの顔からは急速に生気が抜け落ちていく。

レッドドラゴンはそんな2人を慈しむ眼差しで見る。


『愛する者を守ろうとする気持ち、天晴れなり。

 だが、我も守護者・・・すまぬな。』


「皆っ・・・何故俺を庇おうとする!!

 俺も・・・俺も皆を愛している。

 だから・・・だから死なないでくれっ!!」


極限下の状況・・・

たとえ、誰からのそしりを受けようとも、彼を責める事はできない。




・・・だが、条件は成った。





わ~れっらむ~てっきの~そ~ろぐ~んだ~ん♪

ハーレムな~んってぶっとばせ~(おー)♪

はーれっむゆ~しゃは?(めっさつだー)♪

はーれっむこっくおっう?(ぼっくさっつだ~)♪

ほっかにっもいっろいっろあっるけ~れど~♪

いっぷたさ~いは~(みなごろし~)♪

お~と~こた~るも~の(ひっとり~にし~ぼれ~)♪

お~んな~はも~ちろ~ん(つ~つま~しく~)♪

あ~あ~♪

そう~しそ~うあ~いつら~ぬ~けば~♪

お~のず~と~な~るな~る(いっぷいっさい)♪

いってお~くが~♪

ひ~がみ~じゃ~な~いぞ~♪

じゅ~んあ~いろせ~ん~がすっきな~だけ~(おー)♪

き~っとであいがあ~るは~ずと~(想いつづけてうんじゅうね~ん)♪

さびしくないさ~、さびしくないよ~(背中がすすけて見えるだけ~)♪

ハーレムな~んて(ぼっくさ~つ、めっさ~つ)♪

あ~あ~、われ~らむってき~のそ~ろぐ~んだ~ん♪

あした~もきっと~、ち~のあ~めだ~♪




何所からともなく聞こえてくる歌。

力の抜ける音楽にナターシャ・ミーサの張った"刻の砂時計"は消え去る。


だが、レッドドラゴンは動けない。


この歌は何所から聞こえてくる?

近づいてくる強大な魔力は一体?

というか、何が起こってるの?


と脳の許容範囲を逸脱していたからだ。


「な・・・なんでこんな所で奴が・・・」


クエスも困惑の表情だ。


ここは迷宮の最深部。

いくら常識外れのぼっち魔王といえど、これるはずがない・・・そう思っていたから。


だが、現実とは小説より奇なり!!


クエスとレッドドラゴンの中間位置に、常識の壁をぶち破って魔王様は顕現した。


「ファーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ

 我っ!!降っ臨!!!!」


レッドドラゴンはその強大な存在にどう立ち向かうか逡巡している。


クエスは色々な事が交じり合いすぎて、思考停止に陥っている。


「む?ここは迷宮の中か?

 いかん!!

 いかんなぁ、こんな暗くて狭い所でハーレムを築こうとは!!

 世間が許そうとも、この俺が許さん!!」


ぼっち魔王はドヤ顔で言うが、誰も反応できない。


珍しく反応の無いことに改めて周りを見渡す魔王。


「なんだ、戦闘中だったのか。

 反応が来てすぐに飛んできたんだが・・・またずれてたか?


 ・・・むっ、美少女が死にかけている!?

 これはまずい!!」


魔王は慌てて手を振ると、光の欠片が5つ飛んでいく。


光の欠片はコーネル・アカネ・ネルシ・ナターシャ・ミーサを包み込むと、傷を瞬く間に癒した。

命を削って魔法を行使していたはずのナターシャとミーサも元に戻っている。


5人の様子を見ると、魔王は頷く。


「うむ、これで良し。

 説教するにも相手がいないとな。」


正論に聞こえるが、何かが違う気がする。


「ところで、お前等は何だ?」


今だ立ち尽くしているレッドドラゴンとクエスに問いかける魔王。


「あっ・・・私はクエスという冒険者です。

 仲間を救っていただき、ありがとうございます。」


ぼっち魔王と警戒していたが、仲間5人を癒して貰った事にお礼はしっかりと行うクエスだ。


『我はこの迷宮の守護者・・・お主こそその魔力量・・・一体何者だ?』


「俺か?

 俺はただのハーレムを根絶やしにする者だ。」


『いや、それは形容詞に"ただの"とか付かないと思うが・・・』


その溢れる力にレッドドラゴンも戸惑っている。


「気にするな。とにかく・・・犯人は・・・お前だっ!!」


魔王はクエスに向い、指をびしぃっと突きつける。


「え・・・えっ?そうなの・・・か?」


「間違いない!!

 じっちゃんの名にかけて!!・・・じゃなくて。

 間違いなくハーレムレーダーが反応しているからな。」


『「なっ・・・なんだってぇ~!!!???」』


驚愕するレッドドラゴンとクエス。


「なんでお前まで驚いているんだ?」


魔王は冷めた目でレッドドラゴンを見る。


『いや、その方がいいかと思ってな。』


案外ノリの良いレッドドラゴンである。


『だが、それはそれとして人間よ、今は選別の最中。

 途中参加は認められておらぬ。

 直ぐに引き返すか、無限の回廊へ堕ちるかどちらかを選べ。』


「五月蝿い、今はこいつに話があるんだ。

 暫く黙ってろ。」


『引き返さないと受け取る。

 ならば無限の回廊へ案内しよう。』


レッドドラゴンの目が怪しく光ると、魔王に黒い光が集まってゆく。


「うん?」


『光と共に、無限の刻へと堕ちるが良い!!』


光が瞬間的に爆発すると、そこには塵一つ残らない。

・・・・・・はずだった。


「何かしたか?」


『なっ・・・何故異次元跳躍が発動しない!?

 迷宮の法則は絶対!!無視するなどありえん!?』


事も無しに立っている魔王に対し、レッドドラゴンは明らかに狼狽する。


「・・・邪魔する奴は全てぼっちの敵だ。」


魔王が手を振ると、レッドドラゴンの皮膚に多数の裂傷が開く。


『なっ・・・我に傷を!?』


「思った以上に頑丈だな。

 だが、これ以上邪魔するなら本気出すぞ?」


『ありえん・・・我に傷をつけるなど・・・

 許さんぞっ!!』


レッドドラゴンは激昂すると、先ほどまで生み出していた火球よりもかなり小さな・・・バスケットボール大の火球を複数生み出す。

だが、火球より生じる熱は先ほどまでの比ではない。

火球の一つ一つが相当のエネルギーを内封しているようだ。


『人間よ・・・食らえ!!』


咆哮と共に火球が魔王へと向かう。


「それでも向かってくるか。

 愚かな。」


魔王が虚空へ手を入れ、抜き出す。

その手には先ほどまではなかった真っ赤な刀身の刀が握られていた。


「とりあえず・・・死んどけ。」


無造作に刀を振るうと、魔王へと向かって放たれていた火球が吹き飛ぶ。


『なっ・・・我の渾身の力が・・・』


呆然とするレッドドラゴンへ魔王の凶刃が迫る。


「じゃぁな。」


上段から下段に振り下ろされる刀。


『馬鹿なぁぁぁぁぁぁ。』


そして2つに分かれて行くレッドドラゴン。


「手も足も出なかったレッドドラゴンが・・・あんなにあっさりと・・・」


そしてそれを呆然と見つめるクエス。


「「「「「・・・・・・・・・」」」」」


魔王の回復魔法で意識を取り戻していた5人は、顎が外れるほど呆然と口を開いていた。


「さてと、邪魔者もいなくなった事だし詳しく聞いてみようか。」


にやぁっと邪悪に笑うと魔王はクエスへと向き直る。

気分は蛇に睨まれた蛙。

クエスは全身から汗が噴出す。


「は・・・話とは何を・・・」


「決まっているだろう。

 お前とあの女達との関係だ。」


その言葉に先ほど言った言葉を思い出す。


【俺も・・・俺も皆を愛している。】

「・・・あ。」


クエスの顔が青くなる。


「思い出したようだな。」


魔王の目が光る。


「それについてはアタイも聞いておきたいな。」


ふらつく体でコーラルが、


「"皆を"と一括りにされてしまいましたからね。」


憔悴しきっていたナターシャ、


「私も・・・詳しく聞きたいです。」


ミーサが、


「僕も聞きたいな。」


「主殿・・・私は側室でも・・・」


ネルシとアカネも集まってくる。


「少なくとも女性陣はハーレムを望んじゃいないようだぜ。」


「あ・・・え・・・えっと・・・」


「じっくりと話が出来るように回復しておいてやる。

 おまけだ。」


魔王がクエスの肩に手を置くと、先ほどまでの傷が瞬時にして回復する。


「がんばれよ♪」


さわやかな笑顔で魔王はクエスを女性陣の元へ送り出す。


「あ・・・え・・・ちょ・・・まってぇぇぇぇぇぇ」


「「「「「ク~エ~スぅぅぅ~」」」」」


味方が居ないまま、クエスの第2ラウンドが始まる。



ちょんちょん


「ん?」


女性陣に詰問にあっているクエスを、面白そうに見ている魔王の肩が叩かれる。

振り向くとそこには先ほど真っ二つになったはずのレッドドラゴンが居た。


『そろそろ宜しいでしょうか?』


こっちも第2ラウンドか?と魔王は構える。


『マスターに危害を加えるつもりはありません。

 警戒をお解きください。』


丁寧な物腰でレッドドラゴンは頭を下げる。


「マスター?」


『はい、我を倒した以上この迷宮はマスターの管理下に置かれました。

 もちろん、地上にある街へ魔力の供給も開始しております。』


「迷宮の主ぃ?そんな暇は無いっ!!」


『ですが・・・貴方様は既に、迷宮のマスターとして認識されました。

 マスターに見捨てられた迷宮は野良迷宮となり、地上へモンスターほ放出する程の危険性を持つでしょう。』


「ふむ・・・」


魔王は何か考え込む。


「ぐえっ!?」


そして、魔力を飛ばすと詰問中のクエスの襟首を掴み、レッドドラゴンの目の前まで引き寄せる。


「ちょっとッ何っ!?

 ・・・えっ!?レッドドラゴンっ!?

 あぁ・・・さっきまでのは夢だったのか・・・

 皆が生きていると思って嬉しかったのに・・・」


青い顔をして目を閉じるクエス。

だが、魔王はお構い無しに続ける。


「よし、こうしよう。

 お前、迷宮マスター代理になれ。」


肩を叩かれたクエスは我に返る。

・・・が、事態に着いて行けない。


「へ?」


「元々、マスターになりに来たんだろう?

 なら、ちょうど良い、お前マスター代理な。決定。」


「えっ・・ちょっ?」


「返事はハイかYESかよろこんでだ!!」


「えっ・・・あっ・・・うん。」


「うんとは何事だぁ!!」


バキィ


「ひっ・・・酷い・・・」


「もう一度言おう。

 返事はハイかYESかよろこんでだ!!」


「って、全部答えが同じですよ!?」


バキィ


「いいから答えは!?」


「は・・・ハイッ!!」


「よし、そう言う事でお前迷宮マスター代理な。決定。」


「えっ・・・ええっ!?」


頭がついて来て、何に対しての返事だったか理解する。


「後はこいつに聞け。

 困った事があったらこの笛を吹け。

 暇な時は飛んできてやる。」


そう言ってクエスに笛を渡す。


『マスター、そう簡単に代理は・・・』


「出来ないのか?出来ないとは言わせねぇぞ?」


『出来ないのですが・・・』


バキィ


魔王は魔力で拳を形作ると、レッドドラゴンを殴る。


「出来ないとは言わせねぇと言った!!」


『で・・・ですが、マスターの魔力で認識しておりますので・・・』


バキィ


「最初から諦めるんじゃない!!」


『ですが・・・』


「考えるんじゃない!!感じるんだ!!」


マスターの認識は世界の理で代えることは出来ない。

無茶を言うにも程々がある。


『感じる・・・はっ!?

 これは・・・これですね!!感じました!!

 マスター代理としてクエス様を認証いたしました。』


・・・・・出来たらしい。


「何故出来る!?」


・・・そして突っ込むのかい。


『マスター・・・

 やれと言ったのは貴方のはずですが・・・』


「うむ・・・そうだな。

 でかした!!」


ビッと親指を立て、エエ顔でごまかす。


このテンションに女性陣はついていけていない。


「いいかクエス。

 3日後に話し合いの結果を聞きに来る。

 それまでに誰か1人選んでおけ!!」


「ハイッ!!」


「じゃぁ、さらばだ!!」



わ~れっらむ~てっきの~そ~ろぐ~んだ~ん♪

ハーレムな~んってぶっとばせ~(おー)♪

はーれっむゆ~しゃは?(めっさつだー)♪

はーれっむこっくおっう?(ぼっくさっつだ~)♪

ほっかにっもいっろいっろあっるけ~れど~♪

いっぷたさ~いは~(みなごろし~)♪

お~と~こた~るも~の(ひっとり~にし~ぼれ~)♪

お~んな~はも~ちろ~ん(つ~つま~しく~)♪

あ~あ~♪

そう~しそ~うあ~いつら~ぬ~けば~♪

お~のず~と~な~るな~る(いっぷいっさい)♪

いってお~くが~♪

ひ~がみ~じゃ~な~いぞ~♪

じゅ~んあ~いろせ~ん~がすっきな~だけ~(おー)♪

き~っとであいがあ~るは~ずと~(想いつづけてうんじゅうね~ん)♪

さびしくないさ~、さびしくないよ~(背中がすすけて見えるだけ~)♪

ハーレムな~んて(ぼっくさ~つ、めっさ~つ)♪

あ~あ~、われ~らむってき~のそ~ろぐ~んだ~ん♪

あした~もきっと~、ち~のあ~めだ~♪

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