006 ハーレム女帝はぶっつぶせ
「オーッホッホッホッホッホ。
さぁ、膝まずいて靴をお舐め!!」
玉座に座る妙齢の女性へと、脇に控えた美形の男達が我先に群がる。
1人の男性が、女性の足元に群がる有象無象を投げ飛ばし、悠々と頭を垂れる。
「ふふふ、皆可愛いのぅ。
今宵の夜伽はお主にしようか。」
だが、女性が選んだのは、投げ飛ばされつつも強く自分を睨みつけるエルフの男性だった。
女性はゆっくりとした仕草で立ち上がると、エルフの直ぐ隣まで行き、顎を撫でる。
「光栄じゃろう?
わらわはお主を選んでやったのじゃぞ?」
「・・・ははっ、ありがたき幸せ。」
エルフの男性はついと目を逸らして言う。
「ふふふ、お主はわらわの近衛にして、ハーレムの新入り。
すぐにわらわに染まるじゃろうて・・・」
女性は蠱惑的な笑みを浮かべると、顎に置いた手を頬までなで上げる。
ここはクアル王国玉座であると共に、ハーレムの一室。
警護を担当する近衛は、全て女王のハーレムの一員なのだ。
今宵の夜伽を命じられたエルフは、他の者のねたみの視線の中、諦めのような笑みを顔に貼り付けるのだった。
カンッカンッ
そんな折、門番から使者の来訪を継げる合図がなる。
「入れ。」
女王の返事を合図に、足元へと群がっていた美形たちは所定の位置へ戻る。
扉が開くと、1人の男性が入ってきた。
「あら、貴女でしたの?」
入ってきたのはこの国の大臣にして、女王の正室であるエリック・フォン・ラウル、その人であった。
大臣は玉座前で立ち止まり、臣下の礼として一礼。
「陛下、本日は民の陳情を聞いていただきたく「嫌じゃ。」思い・・・」
間髪居れずに断られ、大臣は顔をゆがめる。
「何時も周りに男をはべらせるばかりでなく、民の声をお聞き入れ「五月蝿い。」ください。」
女王が、食い気味に否定しても大臣は言葉を続ける。
「私の権限で行える治世には限界があります。「黙れ。」
陛下にも、民の声を聞いていただき「帰れ。」治世に携わっていただきたいと思っております。「聞きたくない。」
それにこのハーレムも国庫を圧迫して「去るのじゃ。」おります。
これ以上の側室は「誰ぞつまみ出せ!!」民の為にもお控え下さい!!」
ガツッ
何度否定しても言葉を続ける大臣に、切れた女王は持っていた扇子を投げつける。
木製とは言え、強い勢いで当たった事から大臣の額が切れ、血が流れる。
「私の命令が聞けないのか!!
この男をつまみ出せ!!」
一際大きく女王の声が響き渡る。
先ほど選ばれたエルフや、1人女王の足元にたどり着いた男が大臣を掴み、入り口へ連れて行こうとする。
「陛下!!
民の声を・・・民の声を聞いてくだされ!!
国民は疲弊し、明日の食事にさえ事欠く始末!!
全て、我等支配者層の責任でございます!!」
ひきずられながらも大臣は女王への提言をやめない。
「ええい、五月蝿い!!
わらわの正室だからと、多少多めに見ておいてやったが、最早我慢ならぬ!!
そやつを切り捨てるがよいわ!!」
声高々と命令するが、美形たちは困ったように顔を見合わせるばかりで、処刑しようとする者は居ない。
皆、判っているからだ。
エリックが本当にこの国を思って言っている事を。
エリックが居なくなれば飢え死にする人間が大勢居る事を。
エリックが貴族をなだめているからこそ、起こらない内紛も始まってしまう事を。
エリック以外にこの国を立て直せる者が居ない事を。
さらに、ハーレムと言えば他の誰を押しのけても寵愛を得ようとするモノだ。
だが、エリックは大臣という地位も、正室という立場も使おうとせず、他の皆が快適に過ごせるよう。
仲違いが起こらないように常に行動していた。
つまり、ハーレムの美形は全員がこの大臣を好きだった。(主に性的な意味で。)
「おい、お前やれよ・・・」
「やだよ、俺にはエリちゃんは殺せねぇ。
お前こそやれよ。」
「エリちゃんを殺るぐらいなら、俺は裏切る。」
「実家はいいのか?」
「俺は愛を選ぶ!!」
「ずるいぞ!!なら俺だって愛を選ぶ。」
「よし、裏切る時は一緒だぞ。」
などと言うやり取りが動けずに居る兵士達の間で行われており、大臣を先ほどから抑えていた兵士達も、
(やった!!久しぶりの生エリちゃん!!)とか
(はぁ~、エリたんエリたん・・・可愛いよエリたん。
今日はエリたんの身代わりに女王に奉仕してくるから、これぐらいの役得はいいよね?)とか
(すぅぅ~、はぁぁ~、エリっち走ってきたんだね?
汗のにおいがたまらないよ~。)
等と考えているのは大臣ですら知らない。
もちろん、女王もそんな事を知らない為、誰も殺そうとしないことにいらいらが募ってくる。
「もう良い!!
私が切る!!」
玉座より降り立つと剣を抜き放ち、大臣の元へ駆け寄っていく。
「女王様!!
畏れながら申し上げます。
大臣がおらぬばこの国は持ちませぬ!!」
大臣と女王の間に割り言った兵士が止めに入る。
「ならば!!新たな大臣を選出すればよかろう。」
女王は本気だ・・・
ここに居る全員が決断に迫られた時!!
バァァァン!!
入り口の扉が吹き飛んできた。
「なっ・・・何奴!?
敵襲かっ!!」
これには躊躇って動けなかった美形たちも即座に対応する。
女王に近かった者は女王を。
大臣に近かった者は大臣を守るよう隊列を組む。
「私よりも女王を!!」
大臣は叫ぶ。
「いえ!!
女王様も大事ですが、エリたん・・・いや、大臣様もこの国に無くてはならない人。
決して傷つけさせてはなりません!!」
「君達・・・」
大臣は感動する。
だが、大臣から見えない位置では、美形たちがホクホク顔で女王を守る者達に勝ち誇った笑みを浮かべていた。
扉から入ってきたのは、12・3歳の少年。
その特徴は、黒目・黒髪、切れ長の瞳。
その鋭い眼光には、侮蔑の感情が渦巻いていた。
「・・・貴様、何者じゃ。」
女王の問いに少年は答える。
「俺は・・・ハーレムを滅ぼす者。」
その答えに空気が凍る。
ここ最近、巷を騒がしているハーレムを持つ者へ制裁を加え続けている犯人。
それが目の前に居る、何所にでも居そうな少年だと言う事に驚き、信じられなかったからだ。
曰く、その人物はでたらめな強さを誇る。
曰く、勇者でも歯が立たなかった。
曰く、その人物は最上位の魔物。
それだけ噂を持つものが、目の前に居る少年じゃない。
誰もがそう思った。
「ふん、お主の様な小僧っこになにができるか。」
女王は胸を張ると、少年を見下ろす。
「何が出来るか・・・か。
こんなんじゃどうだ?」
ドガァァァァァァァン
ガララララララララ
少年が手を一振りすると、玉座の後ろの壁が音を立てて崩れ去る。
「・・・え?」
「・・・は?」
「・・・何・・・したの?」
その場にいた誰もが彼の所業を見抜く事が出来ない。
「何って、風圧で吹き飛ばしただけだが?」
恐るべき事に、魔法すら使わないで壁を壊したと言う。
「「「「「・・・・・・・・・」」」」」
数秒間の沈黙。
そして、
「ハイヤァァァァァァァ!!」
「くらええぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「死ねぇぇぇぇぇ!!」
我に返った美形達が少年へと踊りかかる。
「ふん。」
だが、少年の一振によって、壁に撃つ付けられる。
「ぐぁっ。」
「がはっ・・・」
「がぁっ・・・
皆っ・・・エリたんを・・・頼む。」
踊りかかった美形達は、壁からずり落ちるとそのまま倒れこむ。
それを見ていた少年は呆れたように言う。
「念のため言っておくが、殺していないし、衝撃を吸い取ったから、死亡者は居ないぞ?」
その言葉を受けてか、バツが悪そうに全員が起き上がる。
だが、実力の差を思い知ったのか、誰も斬りかかろうとしない。
「10数える間に、女王以外部屋から出て行け。
命だけは助けてやる。」
少年はそう言うと、数字を数え始める。
「10・・・」
見渡すと、壁際でばつが悪そうにしている兵士や、女王、大臣を守っていた兵士を視界に入れる。
「9・・・」
少年と目が合った美形達は、一目散に入り口から逃げ出そうとする。
「8・・・」
最初に壁際の美形が、次に女王を守っていた兵士が入り口から出て行く。
「7・・・」
大臣を守っていた美形達は最後の最後まで抵抗している。
「6・・・」
だが、恐怖には勝てなかったのか、大臣を無理やり連れて外へ出ようとする。
「5・・・」
「ごめん・・・誘ってくれたのは嬉しいんだけど・・・」
そう言って入り口前で、案内してくれた美形の背中を押す。
「えっ!?」
「そんなっ!?」
「4・・・」
外に出た美形達は、大臣を連れ戻す為にも中に入ろうとするが、入る事ができない。
「3・・・」
大臣はきびすを返すと、女王の元へ走る。
「2・・・」
落ちていた剣を拾うと、女王と少年の間に立ちはだかる。
「1・・・」
「君は・・・絶対に守る。」
大臣は、それでも女王を守ろうと、剣を振り回し始めた。
「0・・・」
とうとう中に残っていたのは、女王と大臣のみになった。
「ほう、お前は命がいらないと見える。」
その言葉に大臣は震えながらも、少年の前からどこうとはしない。
「くっ!!誰ぞ!!誰ぞおらぬか!!」
残念ながらその言葉に応じる者は居ない。
「入場不可の結界だ。
助けを呼んでも、入ってくる者はいない。」
「くっ・・・わらわをどうする気じゃ!!」
「どうするも何も。
2度とハーレムが作れないようにしてやるだけだ。」
少年がにやりと笑い、女王へと近づく。
だが・・・
「そこまでだっ!!
命を掛けてでも女王様は私が守る!!」
大臣が震える手で剣を握り、少年の前に立ちはだかった。
「お・・・お主・・・」
女王はその姿に言葉を振るわせる。
「良い度胸だ、ならお前から。」
ドンッ
少年が手を振り上げると、後ろから大きな音がする。
先ほど逃げた美形達が何とか入ろうと、結界の壁を全力で叩いている音だ。
「残念だが、俺の結界はお前達如きには壊す事はできない。
1度女王を捨てたお前達が、もう一度入ってこようとしても無駄な事だ。」
「くそぅ、なんとかっ!!なんとか大臣だけでも助け出すんだっ!!」
「「「「「オー!!」」」」」
「いやお前等・・・こういう時は女王を助けるんじゃないのか・・・
まぁいい、五月蝿いからあっちの音だけ消しておくか。」
少年が手を振ると、入り口の美形達の音が途絶える。
自分を助けようと頑張っている美形達・・・と希望に染まった女王の顔が絶望へと変わる。
「大丈夫!!
彼らが入ってこれなくとも、僕が君の命を必ず守る!!」
だが、大臣はいっぱいいっぱいで外の声はまるで聞こえていない。
その言葉に、女王は大臣の顔をしっかと見つめる。
「くっくっく、良い!!
良いぞっ!!」
再び振り上げられる手。
「エリック!!」
絶叫する女王
「ウリャァァァァ!!」
何度も剣を少年へ振り下ろす大臣。
悲しいが、全て少年を傷つけることは無い
「・・・・・・・・・」
入り口から何かを叫び、結界を叩き続ける美形達。
そして・・・
あげられた手がゆっくりと下ろされる。
「イヤーーーーー!!!!!」
女王の絶叫が響く中・・・
ぽん
大臣の頭に手が乗せられる。
なでなで
「うん、良い心がけだ。」
その光景には全員が口をあけたまま固まる。
「・・・・・・え?」
それは撫でられる大臣も同じだった。
「命を掛けてでも惚れた女を守ろうとする。
良い根性じゃねぇか。」
命を狙われた相手に褒められる。
訳の判らなさに大臣はさらに混乱する。
「さて、女王よ。」
少年は女王へと向き直る。
「なっ・・・何じゃ!!」
多少毒気は抜かれたものの、目の前の脅威はまだおさまっていない。
女王の顔に緊張が走る。
「こいつの男気にどう感じる?」
予想外の問いかけだった。
「えっ・・・・・?」
そしてそのまま時間にして数秒。女王には数時間以上の時間が掛かると、女王の顔が真っ赤に染まった。
「えっと・・・いや・・・その・・・うぅ・・・」
今まで美形をはべらす事のみに喜びを感じていた彼女が、初めて1人の人間と真摯に向き合ったのである。
「ふ、その様子なら大丈夫だな。」
少年は訳知ったように頷く。
「俺の目的はハーレムの滅殺。
相互相愛、掛け値なしの一夫一妻にちゃちゃを入れるつもりは無い。」
その言葉に女王と大臣は見つめあうと赤くなって下を向いてしまう。
「いいか!!俺が許すのは一夫一妻のみだ!!
もし、またハーレムに手を出したら・・・次は国を潰す。」
その言葉が本気である事は、彼の実力とその殺気から判る。
女王と大臣は互いの手をギュっと握り締める。
「・・・くしが・・・
私が・・・間違っておりましたわ。
真の愛と言うものを初めて知りました。
これからは1本だけで生きて行こうと思います。」
「例えがおかしいが・・・
まぁ、いいだろう。
その気持ち!!忘れるな!!」
少年はそう言うときびすを返し、くやしがる美形達を踏みつけながら帰っていく。
「「少年よ、ありがとう!!」」
大臣と女王・・・ついでに踏みつけられた極一部の美形が声をかける。
美形は頬を赤らめながら上気して言っていたが、気のせいだろう。
少年は片手を挙げ、去っていった。
それから5年・・・
「ダーリンッ!!今、帰りましたわっ!!」
ウラル女王が壮年の男性へ、駆け寄りざまに抱きつく。
「ハニー、会議お疲れ様。
結果はどうだった?」
2人は抱き合ったまま、熱く見詰め合う。
「それがね、ダーリン聞いて。
各国から勇者を選出し、魔王様を討伐しようって話になったの!!」
女王は男性の胸に、指でのの字を書きながら拗ねた様に言う。
「そうかい、困った事になったね。」
と言いつつ、男性の顔に困った様子は全く無い。
「でしょぅ。
魔王様を傷つける事ができる人なんて、居るわけ無いのにね。」
「そうだよ、彼に叶うものなど居ないよ。」
「でも勇者はどうしようかしら?」
2人はしばし困ったように見つめ合うが、男性は何か思いついたように言う。
「こういうのはどうだろうか?
来月は剣術大会があるだろう?
その優勝者を勇者として送る。
国一番の者を出す訳だから、他国へ権威を示す事ができる。
それに選ばれた者も更に上が居ると知れば、鍛錬を欠かすことは無いだろう。」
「さすが、エリック!!
一石二鳥で素敵な考えですわっ!!」
そう、この壮年の男性は、あのエリックだったのだ。
5年と言う月日は人を変える。
とは言え、女王がこうまで変わるとは誰も思っていなかっただろう。
「そんな事無いさ、ハニーが僕を支えてくれるからできることさ。」
「ダーリン・・・」
「ハニー・・・」
そのまま2人は、桃色オーラを周囲に撒き続ける。
ずらっと居並ぶ近衛達(美形)は5年前の事情を知っているだけに、生暖かく見守っている。
御年14歳となった王女もその1人だが・・・
王女にそっと近づく影があった。
「姫様、監視対象に動きがありました。」
その報告に王女はそれまでの呆れた表情から、ハンターのそれになる。
「場所は?」
「B-4です。」
「判りました、すぐ行きます。」
そんな王女の様子を温かく見守る女王と大臣。
「お父様!!お母様!!」
「あぁ、行っておいで。」
「気をつけるのですよ。」
2人の声援を受け、王女は駆け出す。
「はい!!行って参ります!!」
残った女王と大臣は、
「ふふふ、射止めることが出来ると思いますか?」
「どうだろう?でも、彼なら安心して国を任せられるよ。」
「うふふ、ダーリンったら。」
「ふふ、ハニーこそ。」
等と話し合っていた。
それからすぐに、ウラル国王都の、ある貴族邸には音楽が聞こえていた。
わ~れっらむってき~の~そ~ろぐ~んだ~ん♪
は~れっむゆ~しゃをぶっとばせ~(おー)♪
ど~んなてっきで~もいっちげっきひっさ~つ♪
なっかま~にな~んか~た~よら~ない~♪
すって~いたっすっは ちっから~にごっくぶっり♪
かいふ~くや~くはひっつじゅっひ~ん♪
やっかみ~な~んか~もっちゃ~な~いけ~ど♪
は~れっむゆ~しゃっはめっさ~つだ~(いぇ~い)♪
「こっ・・・この歌はっ!!」
「奴だっ・・・奴が来るぞ~」
「待てっ!!あっちからは姫様も来るぞ!!」
「道だっ!!道を開けろー!!」
「魔王様の雄姿を見に、姫様がやってくるぅ~~!!」
通りを疾走する一台の馬車。
そこに乗っているのは、先ほど王城を駆け出した王女。
彼女は今、歌の震源地・・・ぼっち魔王の元へ急いでいた。
ガララララララ・・・ぴた。
「ここがデンザエモン邸ね!!」
「はっ!!」
「扉開きまーす!!」
「姫様、こちらに!!」
阿吽の呼吸で、付近の住人達が奥の間までの扉を開く。
そこには・・・
「ハーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ
ひれ伏せ者共!!」
地面にひれ伏している大量の冒険者達。
ついでにデンザエモン男爵(女性)と数人の美形が居た。
「俺は誰だ!!」
「「「「「ぼっち魔王様です!!」」」」」
「ちがぁーう!! ハーレム撲滅委員会会長が抜けている。
もう一回!!」
「「「「「ハーレム撲滅委員会会長 ぼっち魔王様です!!」」」」」」
「俺の目的は何だっ!!」
「「「「「ハーレムの撲滅です!!」」」」」
「お前らは誰だぁ!!」
「「「「「冒険者です!!」」」」」
「ちがぁう!!
冒険者って言うのはな・・・人のために働く者達のことを言う!!
ハーレムに雇われ、ハーレムの為に動くのは冒険者に非ず!!
金のために動き、金の為に働く・・・
貴様等など、金の亡者で十分だっ!!
お前等は誰だっ!!」
「「「「「金の亡者です!!」」」」」
すでに冒険者達はヤケクソである。
「よぉ~し!!」
「良しじゃないっ!!」
すぱぁん
何時の間に手にしたのか、王女がスリッパで魔王の横っ面をはたく。
もちろん寸前でバリアによってさえぎられるが、良い音が出るよう調整済みのバリアである。
「おう、来たか王女。」
「来たか王女・・・じゃない!!
これは一体どういう状況なの?」
王女は頭を抑えながら問う。
「うむ。
ハーレムレーダーに掛かる。
↓
俺来る。
↓
迎え撃ちされる。
↓
返り討ち。 ← 今ここだ。
どうだ、判り易かろう。」
「はしょり過ぎっ!!」
すぱぁん
「そうじゃなく、詳しく説明してって言ってるのよ!!」
「ああ、そうか。
詳しく知りたかったのか。
良かろう。
ハーレムレーダーと言っているが、実際には感知魔法の一種でな、そもそ「じゃなくて!!」・・・チッ、違うのか。
つまらん。」
「つまる、つまらんじゃなくて・・・
どういう理由で、床に座らせ、変なことを言わせていたのか、知りたいんだけど・・・」
魔王は手を打ち、何かに納得したように頷くと、
「なんだ、そう言う事だったか。
勘違いしてたから、更生させてやろうと思ってな。」
「勘違い?」
「ああ、命を掛けてでも俺を倒すと息巻いていたからな。
こいつ等程度じゃ、後5万人ぐらいの命が必要な事と、命を掛ける場所が間違っていると教えてやろうと思ってな。
・・・・・・・・・それとつい面白くなって。」
すぱぁん
王女のスリッパが飛ぶ。
「最後のが本音でしょうが!!」
「・・・・・・テヘ♪」
すぱぁん
「テヘ♪じゃない!!
男がそんな仕草しても可愛くないし、キモい!!
万が一女だとしても、そんなことされたらムカつくわっ!!」
「何その暴論!?」
「と・も・か・くっ!!
そんな面白い事を、何で私が来る前に始めてるのよ!!
ちゃんと私も混ぜなさい!!」
そう!!
王女がハーレム対象を監視していたのも。
急いで駆けつけたのも。
女王や大臣が思っていた、淡い恋心とかそんなものではない。
単に面白い事が好きだからだ!!
「とりあえず、バツとして雇われた冒険者には1ヶ月変声機を通した声になって貰うと言うのは?」
「いえ、ここはひとつ、しばらく自分の名前を『剣士A』とか『魔導師B』としか名乗れない呪いを掛けるってのは?」
「いいなそれ・・・やってみるか。」
「やれるんだ・・・」
「ん?おう。
以前驚かせようと思って作った。」
「じゃ、それで。」
「さ、本命には・・・」
「どんなおしおきを・・・」
「「考えようかねぇ~。」」
2人は目を怪しく光らせると、涙と鼻水とで顔がぐじゅぐじゅとなっているデンザエモン男爵(23歳 女性 未婚)へとにじり寄る。
結構お似合いの2人だとは思うのだが・・・




