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森番






____3ヶ月後









「ミラ、密猟者は見つかった?」

「ワン」

 ミラ曰く、フロースの森の西側に密猟者が5人いるらしい。最近、イグニススクワラル……炎のリスを見かけないと思ったら、密猟者がこの森に出入りしていた。

「この森に入ったこと、後悔させてやる」

 ミラが言っていたところまで飛んでいき、様子を見る。


「今日も、イグニススクワラルが取れたぜ」

「お貴族様がペットで欲しがるから、高く売れるんだよなー」

「今日もあの店に行こうぜ!」

 なんてゲスくてクズで救いようのない野郎共だ。容赦なく痛めつけてやる。


____憐れな蛙(ミセリア・ラーナ)


「なんだ、これ?!」

 蛇に睨まれた蛙に何ができる。金色の糸で5人を一気に縛り上げた。

「いで、いただだだたっ」

「キツくなってきたぞ、どういうことだ?!」

動けば動くほどキツく縛り上げられるのがこの魔法の特徴だ。

「お前たち、どこの組織の者だ?」

「そ、組織じゃねぇよ、俺たちだけでやってるんだ!もう、しねぇから見逃してくれ!!」

「頼む」となんのプライドを持たずに、泣きながら懇願してくる姿が見苦しく、反吐が出る。

「“もうしない”?今まではしてきたんだろ。今までお前たちのせいで死んできた動物たちが浮かばれない。……安心しろ、お前たちの身体は無駄にしない。人間も、高く売れるんだ」

「や、やめてくれ、頼む……!!」

 いい歳した中年の泣き面なんて、汚くて見ていられないな。もちろん、簡単に殺すわけなく、何度も痛めつけた後に酸素を奪い殺した。脳も心臓も売れるから痛めつけられない。

「こら、ミラ。まだ食べちゃダメ」

 5人の死体を拡大魔法をかけた巾着にいれ、家に戻った。








❊❊❊❊❊❊❊










 家の前に騎士がいる。それも大勢だ。家の扉をノックしては周りをうろちょし、何かを探しているようだ。

「……私か?」

 騎士様に目をつけられるような大したことはしていないんだが。騎士が絡むことは面倒極まりないので、このまま隠れて凌ごう。


____こっちを見た


そんな馬鹿な。気配は完全に消している。偶然?いいや、あの男は私を、確実、見た。逃げよう、逃げたほうがいい。

「なっ、!」

 足を一歩動かした瞬間、あの男は剣を私の首に突きつけてきた。いやいや、100mは離れていたのに、この一瞬で間合いを詰めてくるとか意味わかんないでしょ!

「動くな。お前は、誰だ」

「ワン、ワン!!」

 今にも飛びつきそうなラミを待ての合図で落ち着かせる。降参のポーズをしながら、言葉を慎重に選ぶ。

「しがない森番だ。……それと、あの家の持ち主だ」

「なるほど、お前か」

 驚いた顔をしていた。

「次は私に質問させて。何の用だ?」

「っ……」

 人との関わりは最小限に無くしてきたし、街へ行くことは月に一あるかないか。私の家を知る人なんて片手で収まる程度。もちろん、師匠の知り合いだけだ。なのに、ここまで森深くやってきて、家を訪れるなんて怪しい。

「……3ヶ月前、赤龍の群れが村を襲った。そこで、赤龍の大半を殺した少女がいた。その少女は燃えている火のように赤く癖っ毛らしい。……お前に当てはまるな」

 3ヶ月前?赤龍の群れ?……師匠がいなくなる前の前夜か。下のことなんて一切見ていなかった。

「もし、私がそうだったどうするつもりだ?」

 男は突然、はぁ、とため息を付き剣をしまった。

「あのさぁ、毎回毎回、魔力で威圧するのやめてくれない?敵意がないの分からないの?」

「え、いや、」

 もう一度はぁあ、と大きくため息を疲れた。

 敵意がない?なら、どうして剣を首に突き立てたんだ。何だこの男。

「ウォークス家が、その少女にお礼がしたいんだって。で、お前なわけ?」

「……違う」

「違うって……。今の流れ的にはお前でしょ10000%!!この3ヶ月間、お前をどれだけ探したと思ってる?!赤毛の癖っ毛の魔法少女なんて知らないってみーんな言うし、激務をこなしながら探すの超超大変だったんだからね?!あのクソ上司のせいで!!!」

「なんか、ごめん、」

 とち狂ったかのように、怒りだしてラヴィリーナは戸惑った。確かに目の下にはクマがあり寝ていないのがわかる。なぜ、自分が怒られているのか分かっていないが、謝ってしまった。

「はぁ、まぁ、見つかったことだしいいよ。別に。さぁ、早く一緒に来てもらうよ」

「え、ちょ、おい!」

 腕を掴まれて、高そうな馬車に載せられてしまった。もちろん、あの男も一緒にだ。

「俺の名前は、シレンス・インヴィディア。アクィラの副団長をしている。お前は?」

「ラヴィリーナ」

「ラヴィリーナか。お前は、魔法学園かなにかに通っていたのか?」

「いや、通ってない」

 ふーん、と品定めをしているような目で見てくる。足組み、腕を組み、頭からつま先まで見てくるとは失礼なやつだ。

「作法がなってないから、言っておくが、今からお前が行くところは“あの”ウォークス家だ。敬語は、絶っっ対、だ。あと、少しは愛想良くしたらどうだ」

 なんだこの野郎。てか、ウォークス家って、ただのお貴族様じゃないのか?ああ、今すぐに帰りたい。でも、騎士に逆らうと面倒だからなぁ。我慢、、我慢。

 無言で窮屈な馬車に閉じ込められること2時間。ようやく城に着いた。

「当主様たちに面会する前に、身支度を整える。有難いことにご好意で、ドレスやアクセサリーまで取り揃えてくださった。後は侍女に任せる」

 城に入るなり、大勢の使用人たちに出迎えられては、侍女たちにこちらですと、バスルームに案内され、服を脱がされそうになった。

「ちょ、待って!お風呂くらい一人で入れる!」

 赤の他人に裸を見られるなんて溜まったもんじゃない。

「ですが、シレンス様からラヴィリーナ様の身支度を整えるようにと、」

「お風呂は!一人でする!」

 









❊❊❊❊❊❊❊









「え、人探しですか?」

「ああ、ルグルスがどうしてもと言ってね。特徴は、赤毛の癖っ毛の魔法少女だそうだ。頼んだよ!」

 赤毛の癖っ毛の魔法少女なんて、直ぐに見つかると思った。なのに、なのに、

「どこにいるんだよー?!」

 何が「頼んだよ!」だ。クソ上司め!取り柄は顔と剣技だけだろ!面倒な業務は全部俺に押し付けやがって〜!!

 一人では無理だと、団長に言うとなら、第三騎士団を貸そうと言ってきた。遠回しの「無理です。諦めてください」って言ったつもりだったが、まぁ、あの人に通じるわけなかった。


「お仕事中にすみません。赤毛の癖っ毛の少女を知りませんか?」

「知らないね。赤毛の癖っ毛なんて、ここらじゃ珍しいから見たら覚えてると思うけどねえ」

「そうですか。ご協力感謝します」

 だよね、俺もそう思う。北の地、もっといえばウォークス家の領地では、金髪などのブロンドヘアが多い。

 希望なんて無かったが、あのクソ団長は、

「赤毛の癖っ毛の魔法少女を見つけるので、忙しいと思うから僕に任せな」

 と、いつもはやらない癖に珍しく自分の業務をこなしていた。仕事で忙しいので無理です、なんて言わせて貰えないみたいだ。

「どこにいるんだか……」

 ルグルス様曰く、森の方に飛んで行ったので、森周辺に住んでいるはずだとの事。が、しかし、誰一人も見たことがないという。

「もしかして、赤龍に殺された女の子の復讐とか?」

「なるほど、なら、解決だね」

「冗談ですよ。面白かったですか?」

「フィニックは愉快だね。とても」

「目が笑ってないどころか、つり上がってますよ」

 幽霊でした、の方が楽だ。見たことも聞いたこもない、赤毛の癖っ毛の魔法少女。手がかりは森周辺に住んでいることのみ。有力な手がかりのはずなのに、1mmも役に立たない。

 第三騎士団の団長フィニックもそれなりに忙しいはずなのに、団長のせいで付き合わせてしまった。精鋭隊アクィラの団長がウォークス家の騎士の中で一番偉いから逆らえない。

 フィニックはウォークス家初の女性団長で、注目を集めたが女性ということもあり、部下からはまだ舐められたりするそう。馬鹿なやつめ、タイマンしてみろ、マッハでボコされるくせに。

 

 あんまりにも手がかりがないので、闇市に行くことになった。もちろん、騎士の姿で行ったらとんでもない事になるので平民の服に着替えた。

「ここらで、赤毛の癖っ毛の少女を見なかったか?」

「……」

「銀貨1枚だそう」

 飲み屋のオーナーにそういうと、オーナーはまだ黙り込んだ。

「3枚だ。十分だろ」

 ふん、と鼻を鳴らし銀貨を取った。

「少女は見たことないが少年ならある」

 少女だっつてんだろ。銀貨3枚返せよ、ぼったくりジジイが。

「お前さんたち、騎士だろ。見ればわかるさ」

「それがどうした」

「このスラム街同然の闇市に少女が来るわけねぇだろ。……男装くらい魔法薬でちょちょいのちょいよ」

 これだから、お堅い騎士様はよぉと馬鹿にされたが有益な情報を手に入れたので、許そう。

「行くぞ、フィニック」


 他にも怪しそうな店のオーナーに銀貨を渡して情報を売ってもらった。


「噂によると森に住んでるらしい。密猟者の臓器に血を売ってくれるもんだから、感謝してるぜ」


「あの細っい兄ちゃんのことか?月一でくるか、どうかだな」


「お貴族様の愛人の間にできた子だってよ」


などなど、鵜呑みにできない話が多かったが、とりあえず森らしい。この3ヶ月間が馬鹿に思えるほどの収穫だ。銀貨は30枚は吹っ飛んだが、経費だ、経費。

 一度本部に戻り団長にこのことを話し、第三騎士団を連れて森に行くことになった。

「シレンス、フロースの森の深くには幻覚の魔法を持つ植物がある。気をつけろ」

「はい」

 フロースの森は、そんなに大きくないが動物が多く森番が管理しているらしい。なんせ、密猟者が多いんだそう。

 見つかった時は、丁重にもてなせと、ルグルス様から言われたので、馬車を引き連れて、森に入った。

 幻覚の魔法を持つ食物は、直ぐに剣で切った。途中まで、道があったのに無くなってしまい、馬車を持って奥に行くのは大変だったが、騎士団の全員で木を切り道を開けて行った。

「シレンス様、なにやら家が見えます!」

「家だと。早く行くぞ!」

 ようやくこの仕事から解放される。なんて幸せな。

 が、いざ家の前に着くと誰もいなかった。扉を叩くが反応なし。畑は綺麗な状態だから、人は住んでいるはずだ。

 何回手こずらせる気だ。

「しばらく待機だ。しかし、警戒は怠るな。魔獣が潜んでいる可能性がある」


 茂みの中から、視線を感じた。こちらを見ている。


____見えた


 逃げようと、足が動いたので、一気に間を詰め、首に剣を突き立てた。

「なっ、」

「動くな、お前は誰だ」


 赤毛の癖っ毛の少女。


 横顔だけでもわかる、なんて美しい少女だ。陶器のような艶のある肌。癖っ毛だなんて馬鹿らしい。炎が踊っているかのような赤毛だ。手はしなやかで、彫刻だ。見惚れて、剣を下ろしてしまいそうになる。己の剣で、この少女を傷つけてしまったらどうしようか。

 ああ、声まで美しい。一流の奏者が弾くハープのようだ。

「次は私に質問させて。何の用だ」

 さっきまでのハープのような音色が、重圧を、威圧をかけてきた。魔力による威圧。ゾッとするそうな魔力量だ。魔塔主もビックリだな。手に嫌な汗をかいてしまった。

 これで分かった。この少女は魔性だ。綺麗な花を咲かせている癖に、毒があり刺がある。手を伸ばせば一溜りもない。

 少女のことを見るのをやめて、いつもの自分らしく振る舞う。フィニックには、変な目で見られたが。

 馬車に連れ込み対面で2人っきりになったことは、人生で三番目くらいには大きなミスだ。嫌でも視界に入る。

 助かったの言うべきなのか、少女は寝てしまった。気配からして完全に意識を落としたわけではないだろう。

 城に着くなり、侍女を呼び身支度させている間に、当主様とルグルス様に報告しに行った。

「少女はどんな子だった?」

「名はラヴィリーナ。フロースの森の森番だそうです。」

「そうかい。……他になにか気になることはあった?」

「……少女と絶対に目を合わせないでください。あれは魔性です」

「どういうことかね」

 ルグルス様ほど、気にしていなかった当主様が質問してきた。

「……美しすぎるのです、あまりにも。人知を超えた、彫刻でも再現できないような美しさです」

「ほう、それほどにか」

 目は一度もあっていないが、合ったら終わりだということは本能でわかる。しかし、見たいと思うのも本能。ラヴィリーナが、目を合わせようとしなかったことには感謝するべきだ。


「失礼します。ラヴィリーナ様の身支度が済みました」

「入るが良い」








 



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