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堕天の燈火【人間の書】  作者: 深川我無@書籍発売中


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奈落の大螺旋階段2

 

 一行は深い奈落の底に向かって進み始めた。幸いなことに壁には鉄の杭で鎖が打ち付けてあったので、それをしっかりと握りしめてゆっくりと螺旋階段を降りることができた。

 

 壁のくぼみには壺ではなく天使像の首が置かれていることもあった。最初に首の前を通った時、パウは驚いて穴に落ちそうになった。


 延々と続く螺旋階段は一行の感覚をおかしくした。ネロはカロカラ族の催眠ガスを思い出してゾクリとしたが、誰も幻を見たり、幻覚に陥ることはなかった。

 

 随分歩いたがまだまだ底に着く気配はない。


 さらに進むと一行は底ではなく、円形の広い踊り場に到着した。

 

「ふぅ。一休みにしようぜ」


 カインが踊り場に倒れ込んだ。

 

「随分降りてきたが先が見えないな」


 ハンニバルは上を見上げてつぶやいた。

 

「ここ、とても邪悪な気配しマス……」


 パウはネロに耳打ちした。

 

「僕もそう思うよ」


 ネロは苦笑いしながらパウに答えた。

 

 すると踊り場を歩き回っていたスーが何かを見つけて帰ってきた。

 

「こっちに鉄の扉があるよ!」

 

 スーのもとに向かうと、観音開きの重たい鉄の扉が壁に付いていた。扉はいかにも頑丈に出来ていて、そのうえ鍵がかかっていた。

 

「嫌な魔力を感じる。開けんほうがいいように思う」

 

「わたしもそう思う……」

 

 パラケルススの意見にベルは何度も頷いた。

 

 少し休むと一行は再び地下に向かって螺旋階段を下り始めた。壁の穴は数を増していき、それにともなって天使像の首が増えてきた。ネロは外に打ち捨てられていた首の無い天使像達のことを思い出した。ここにある首は、きっとあの天使像達のものに違いない。

 

 いったい誰がなんのために、天使像の首を刎ねてこんなところに置いたのだろう?


 ネロは答えの無い問いかけをしながら螺旋階段を下っていた。なにか重要な意味があるような気がしたからだ。

 

「一度休もう」

 

 最初の踊り場から何度目かの踊り場にたどり着いた時、ハンニバルが提案した。踊り場は定期的に設けられているようで、そこには決まって頑丈な鉄の扉が備えられていた。

 

「何時間進んだのか、今が昼か夜かも分からない。一旦休んで、起きたら出発しよう」

 

「うむ。しかし何が起きるかわからん。交代で見張りをするとしよう」

 

 こうして一行は踊り場で眠ることにした。持っていた最後の食料を分け合うと一行は眠りについた。

 

「起きるのじゃ!!」

 

 パラケルススの声で一同は目を覚ました。

 

「なにかあったのか?」


 ハンニバルが尋ねる。

 

 すると上から音が聞こえてきた。それは金属の爪か何かで、壁を引っ掻くような音だった。

 

「音が聞こえ始めたのはついさっきじゃ。音がどんどん近づいておる」

 

 パラケルススが上を見ながら聞き耳を立てている。

 

「やばい感じだな。俺たちも下へ急ごう」

 

「待って!」


 ネロが叫んだ。

 

「ベルがどこにもいない!」

 

 ネロは大声を上げた。ネロの声が穴の中にこだました。ネロはすぐさま、そのことを後悔した。

 

 一行は反響するネロの声に聞き耳を立てていた。正確にはネロの声に反応するかもしれない何者かの発する音に聞き耳を立てた。

 

 ギイギギギギギギギイイイギイギギギ

 

 耳を(つんざ)く、けたたましい音が聞こえた。一行はすぐに、それが鉤爪を壁に引っ掛けてまっすぐ縦穴を降りてくる音だと理解した。

 

 いつしか音はドン、ドン、ドンという着地音に変わった。それは矢も届かぬほど遠く離れた反対側の壁に向かって、飛び移っていることを意味している。


 それは化け物が驚異的な身体能力か、或いはそれ以上のなにかを有していることを暗示していた。

 

 ついにネロ達がいる踊り場の真ん中でドシンと音がした。

 

 見るとそこには地面まで伸びた長い爪を持つ、人間のような姿の生き物が立っていた。

 

 生き物には目が無く鼻も無かった。顔にはただ口があるだけで、その口には口唇が無かった。全身の肌は焼け(ただ)れて醜く縮みあがり、身体の凹凸はことごとく溶けていた。

 

 長く伸びた爪は鎌のように鋭利で、ぬらぬらと怪しい金属光沢を放っている。壁を引っ掻く音の原因はこの爪だと誰もが直感する。

 

 化け物は焼け爛れて溶けた鼻の面影をぴくぴくと動かし、そこに空いた小さな穴ですぅーすぅーと周囲の臭いを嗅ぎ取った。

 

「ぎいぃいいいぃいいやあぁあああぁああああ!!!!」

 

 化け物は大声で叫ぶと、すごい速さでこちらに向かって走ってきた。

 

 見た目からは想像できないような速さで化け物は動いた。ハンニバルは咄嗟に剣を構えたが化け物はハンニバルを手の甲で払って、吹き飛ばしてしまった。

 

 ハンニバルは壁に激突して気を失った。

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