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堕天の燈火【人間の書】  作者: 深川我無@書籍発売中


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奈落の大螺旋階段1

 「みんな! 入り口が開いた!!」


 ネロはあらん限りの声で叫んだ。

 

 ハンニバルはパラケルススを抱えて飛んでくるとパラケルススを穴の中に押し込んだ。

 

「パラケルススには悪いが、とりあえず先に入ってもらおう」


 ネロは黙ってそれに同意した。

 

 するとパウが空を全速力で走ってやってきた。

 

「中へ入りなサイ!!」


 パウは目を見開き、風圧で唇を震わせながら叫んだ。

 

 見ると巨大な天使が身体を崩壊させながらこちらに向かって飛んできている。目を凝らすと、砂埃の中をカインとスーも鬼の形相で走っているのが見えた。

 

 ハンニバルは黒いエーテルの斬撃を崩壊する巨大な天使像に向けて幾重にも放った。天使像はその衝撃で少しずつ減速していった。

 

「俺のエーテルももうすぐ限界だ……」

 

「カイン! スー! 急いで!!」

 

 二人は最後の力を振り絞ってさらに加速した。崩れ落ちた天使像の瓦礫が二人の背後から迫ってくる。

 

「ネロ! ベル! 限界だ! 中に入れ!」

 

 ハンニバルはそういうと二人を抱えて穴に飛び込んだ。パウは入り口で手を伸ばしてカイン達を待っている。

 

「ぬおおおおおおおお!!」

 

 砂埃と崩壊音が響き入り口が瓦礫で塞がれてしまった。


 パウは砂埃にまみれて真っ白になっている。

 

 ネロは慌ててカインとスーの姿を探した。

 

「カイン! スー! 無事なの!?」

 

 返事が無い。ネロが瓦礫で塞がった入り口に駆け寄ろうとした時だった。

 

 瓦礫から突然足が突き出て来た。それに続いてカインとスーが瓦礫の中から姿を現した。

 

「ぷはっ!! 口の中が砂だらけだ! ぺっ! ぺっ!」

 

「最悪な目に合ったよ。死ぬかと思ったね」

 

 スーはホコリを払いながら言った。

 

「まったくだぜ! だがなんとか間に合った! 助かったぜネロ!」

 

 二人の無事を確認してネロはほっと胸を撫で下ろす。


 一行はあらためてあたりを見回した。入り口は閉じられたが穴の中には松明が灯っていて明るかった。

 

 人が二人並べる程度の細い通路が下に向かって伸びている。


 一行は通路を進むことにした。しかし通路はすぐに終わり、代わりに奈落へと続く巨大な縦穴が現れた。

 

 ネロは思わず後退りした。穴の底は深過ぎてまったく見えない。


 そこには虚無があった。


 見るものを引きずり込まんとする無慈悲な引力を持つ虚無が、穴の底に黒く渦巻いている。

 

 丸い縦穴の直径は放った矢が届かないほど大きかった。


 そんな巨大な縦穴の壁伝いに、崩れそうな細く頼りない螺旋階段が奈落の底に向かって続いている。

 

 時折、深い穴の底の方からヒュオオォォォと低いような、甲高いような、不気味な唸り声を伴った風が吹き上げてきて、一行をさらに不安にさせた。

 

  螺旋階段の壁にはところどころ窪みが設けてあり。そこには壺が置かれていた。


 壺には火が灯っており、穴の中を照らしていたが、その火が地下からの風で揺れる度に、それに合わせて黒い影もゆらゆらと揺れるのだった。

 

 それはまるで亡霊の踊る舞いのように見えた。数多の亡霊が神殿に捧げる舞を踊る様は、邪神を祀る醜悪な儀式を連想させた。

 

「ここを降りるのか……」

 

 一行が二の足を踏んでいるとパラケルススが目を覚ました。

 

「ここはいったいどこじゃ!?」

 

「パラケルスス気がついたの?」


 ネロはおそるおそる尋ねた。またパラケルススがおかしくなるのではないかという一抹の不安があったからだ。

 

「ここはどこじゃ? わしはどうなった?」

 

 パラケルススの眼はいつもの知性に満ちた眼に戻っていた。


 ネロはそれ見て安心すると、ことの顛末を話して聞かせた。パラケルススは顔を歪めてその話を聞いていたが、ネロが話し終えると何度か頷いてから謝罪した。

 

「皆の衆、迷惑をかけたのう。アストラルを使いすぎたようじゃ。脳に強い負荷がかかり思慮を失うことがあるという。わしもなったのは初めてじゃ…」

 

 一行はパラケルススがもとに戻って安堵した。パラケルススがいるだけで何が起こるかわからない恐怖が和らぐのだ。パラケルススの知恵と思慮深さはいつもこの群れを支えていた。

 

「進むとしよう」

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