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堕天の燈火【人間の書】  作者: 深川我無@書籍発売中


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ジャンバルバラ山岳地帯2

 寺院の扉に続く幅の広いなだらかな階段の両脇には、打ち捨てられていた石像と同じ鉱石で造られた八体の石像が並んでいた。

 

 それはどれも美しい女神か天使のような風貌だった。あたまから頭巾をかぶって(ひざまず)く女性や、剣を掲げて馬にのる女性の像もあった。

 

 一行はその荘厳な様に圧倒されながら緩やかな階段を登っていった。階段の中程までくると首と四肢の無い天使の石像が静かに佇んでいる。

 

 天使の石像はやはり深緑の翡翠で出来ており、美しい翼をひろげていた。そして胸の真ん中には真っ赤に輝く紅玉(ルビー)の心臓が埋め込まれていた。

 

 紅玉の心臓はおそろしく精巧にできていて、まるで本物の心臓を邪悪な魔法で紅玉に変えてしまったかのような出来栄えをしていた。

 

「綺麗…」


 ベルが思わずつぶやいた。

 

「そうかい? アタシは少し気味が悪いよ」


 スーが首をかしげている。

 

「さっさと行っちまおう」


 カインが翡翠の天使を通り抜けようとした時だった。

 

 フォン……

 

 奇妙な音が鳴り、紅玉の心臓が脈打ち始めた。

 

 一行は慌てて飛び退くと武器を手に取り身構えた。

 

 心臓の鼓動に合わせて、翡翠の身体に赤く光る血管が網目のように伸びていった。血管が全身に行き巡ると、翡翠の天使は羽を動かして宙に浮かんだ。

 

「みんな! 見て!」

 

 ベルが指差す方を見ると、あちらこちらで砂に埋れた石像達がよみがえり、こちらに向かって登ってくるではないか。

 

「歓迎ではなさそうだ。とにかく寺院に向かうぞ!」


 ハンニバルが心臓を持つ天使像に斬りかかると、天使像は心臓から紅い光線を放ってハンニバルを吹き飛ばしてしまった。

 


「ハンニバル!」


 ネロは叫んだ。

 

「大丈夫だ……」


 ハンニバルは階段の下方から答えた。

 

 ハンニバルの鎧は胸の部分が融けて煙を上げていた。

 

「おいおい。嘘だろ?」


 カインは口を開けてハンニバルの背後を見ている。

 

 見ると石像達が宙に浮かび、紅い光線を撃つべく、空気中のエーテルを吸収しているのが見えた。

 

「とにかく寺院の中に逃げよう!」


 ネロは叫ぶとベルの手を引いて走った。

 

 一行もそれに続いた。先程の天使像はぐるりと回転してネロ達を存在しない目で追ったが、不思議なことに攻撃はしてこなかった。

 

 巨大な門の隙間から寺院の中に飛び込むと、一行は地下への入り口を探し始めた。

 

 寺院の中は薄暗く、美しいステンドグラスから差し込む、色とりどりの光が地面に複雑な紋様を映し出していた。

 

「地下への入り口なんてどこにもない!!」

 ネロが叫んだ。

 

「パラケルスス! 何か魔力の痕跡はないのか!?」


 ハンニバルも大声で言った。

 

「何も感じぬ。行き止まりじゃ……」

 

 パラケルススがうなだれて地面に両手を付くと門の隙間から一体の石像が入り込んできた。

 

「来たぞ! しっかりしろ!」


 ハンニバルが叫んでもパラケルススは地を見つめたまま動かない。

 

 ネロはノワールを片手に構えベルを自分の背後に隠した。

 

 パウが空を蹴って飛び上がると、入ってきた石像を真上から攻撃した。石像はパウの槍で突かれると粉々に砕けた。

 

「それほど強くありまセン!」

 

「ここから脱出するぞ! 俺はパラケルススを連れて行く! カインとパウはネロ達を頼む!」

 

 次々と扉を押し開けて入ってくる石像達を破壊しながら一行は寺院の外に出た。

 

 外に出ると、そこには恐ろしい光景が広がっていた。石像達が宙を舞ってつなぎ合わさり、巨大な天使の姿になっていたのだ。

 

 巨大な天使にもやはり首から上は無く不安定な姿勢で空中を旋回すると真紅の閃光をでたらめな方向に放つのだった。

 

 その閃光は山肌に命中すると大爆発を起こした。山肌には巨大な穴があき、そこからもくもくと噴煙が吹き出している。

 

 一行が絶望しかけたときベルが紅い心臓を持つ天使像を指さして言った。

 

「あそこが入り口…あの下に入り口があるわ…!!」

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