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堕天の燈火【人間の書】  作者: 深川我無@書籍発売中


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邪悪なる大湿原1

 

 一行は身の丈ほどもある葦の藪をかき分けながら進んでいた。雪に覆われた北の大地とは打って変わって、あたりは無数の小さな生き物の気配で満ち溢れていた。

 

 氷の城を抜け出した一行は、もう一度シロの灯台を目指そうとした。しかし洞窟の入り口は氷で閉ざされておりどうやっても城の中に入ることが出来なかった。


 パラケルススいわく、双子の巨人は閉じ込められているだけではなく、あの城の中にある何かを守っているのではないかということだった。

 

 一行が双子に傷を負わせたことと、ネロが持つ堕天の燈火の存在を知ったことが、城の入り口を閉ざした理由ではないかというのだ。

 

 ともかく一行は最果てを照らす灯台シロへ続く道が閉ざされてしまい、目的地の変更を余儀なくされてしまった。

 

 残る祭壇の在り処は、遥か南に位置するジャンバルバラ山岳地帯にあると言われる地下神殿だけだった。

 

 一行は何日もかけて険しい旅路を南へ南へと進んでいった。途中で念の為にルコモリエを迂回して遠回りしたこともあり、ジャンバルバラ山岳地帯を視界に捉えた頃には、月の満ち欠けが一巡半ほど進んでいた。

 

 ルコモリエの南部は背丈の高い真っ直ぐな植物がたくさん生えていた。黄色く枯れたような色をしたススキの仲間や、派手な赤色の尖った草も目立った。


 どれも固く真っ直ぐ天に向かって鋭い葉を伸ばし一行の行く手を邪魔するのだった。

 

 哺乳類はあまり見かけられず、無数の昆虫や羽虫が群れをなすばかりだったが、ときおり、夜になると猛獣の低く唸る声が辺りに響き、一行を不安にさせるのだった。


 そんな時に限ってカインが適当なことを言ってみんなを和ませていた。

 

「うお! 今のはジャガーだな」

 

「ジャガー?」


 ベルがカインに尋ねた。

 

「そうさ。ジャガーは可愛い女の子しか食わないんだぜ?」

 

「絶対嘘だ」


 ベルはしかめっ面でそう言いながら、こっそりスーの近くに逃げた。

 

「おいおい!! 何でアタシのとこに逃げてくるわけ!? アタシだって可愛い女の子だよ!?」


 スーがベルにそう言うとみんなは大笑いするのだった。

 

 

 さらに南下するに従って、葦の茂みの中に水たまりが点在するようになった。水辺には大きな蛙や、足の長い水鳥の姿が見られた。水鳥は空を見上げると、もの悲しい悲鳴をあげてはどこかに飛んでいった。

 

 一行は水鳥や大きな蛙を捕まえては串焼きにして食べながら湿地をさらに南下した。食料の蓄えは底をつき、食べられるものはなんでも食べるしかなかった。濁った水を濾過して煮沸するとなんとか飲むことができたが、独特の臭いは取れず一行を疲れさせた。

 

「ああ。まともな飯が食いてぇなあ」


 カインが藪を切り開きながら言った。

 

「ワタシ新鮮な水飲みたいデス」


 パウもげんなりした様子で応えた。

 

「だいたいこの土地はなんだってこんなに進みにくいんだよ!」

 

 カインの言うとおりだった。南下するにつれて、ぬかるみは酷くなり、植物は葦やガマの穂が多くなってきた。ガマの穂はぶつかるとブリブリと気持ちの悪い音を立てて、紫色の穂の中身を撒き散らした。

 

 あたりは腐った水の酷い臭いが立ち込めるようになってきた。いつしか水たまりはなくなり、小さな沼が点在するようになった。たまに見かける木はほとんど枯れていた。

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