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堕天の燈火【人間の書】  作者: 深川我無@書籍発売中


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旅の仲間2

「知っている者も多かろう。世界を旅する無頼(ぶらい)の賢者パラケルススだ。余の古い友人に当たる。彼に人選と旅の案内を任せた」

 

 パラケルススと呼ばれた男は深い皺が顔に刻まれた大男だった。目の色は紺碧。髪は銀色で背中のあたりまで波打つように伸びていた。男はネロの背丈ほどある長い杖を持っていた。遥か昔から生き続けた老人のようにも見えたし、生命力に満ちた青年のようにも見えた。

 

「ことは急を要するでな。わしの自己紹介は省かせていただく。一人目は元王国騎士団長のハンニバルだ。実力は折り紙付きじゃ。皆の方がよく知っておろう」

 

 ざわざわとどよめきが起こった。


「あのハンニバルか?」


「邪教徒殲滅の功績を蹴って王国を出た男だ……」

 

 ハンニバルは全身を黒い鎧で固めて背中に巨大な剣を帯びていた。剣は片刃で翡翠の細工が刀身と柄の境目に施されていた。真っ黒な髪は顎あたりまで垂れ、金色の瞳は暗く淀んでいた。ふとネロと目があったがすぐさま別の方に視線をやった。背が高く隙きが無く、なぜか悲しそうに見えた。

 

「二人目はさすらい人のカイン。どこにも定住しない荒野の民を率いている男だ。野営と移動の達人じゃ。薬草にも詳しい。腕も立つ」

 

「どーも」


 カインは笑顔で評議会にひらひらと手を振って見せた。そして王にお辞儀してみせた。油を塗った黒髪を後頭部で束ねた細身の男で、砂漠の民が着る美しい模様のウールのマントを羽織っていた。目尻の皺がどこか柔らかい印象を与えた。ネロと目が合うと笑顔で目配せするのだった。

 

「三人目はパウ。精霊の守り人の一族の次期酋長(しゅうちょう)じゃ。精霊と交信する不思議な魔法を扱う。戦士でもある」

 

 パウは髪の毛の無い丸い頭を下げて皆にお辞儀してみせた。険しい表情で少々気難しい印象に見える。全身に入れ墨が施されているらしく、赤と黒の様々な入れ墨が、ハゲ頭にも顔にも手にも首筋にも彫られていた。手足が長く赤褐色の肌の色をしていた。

 

「王サマ! ご機嫌麗シュウ! ワタシに言わせてくだサイ! このような子供に危険な仕事させナイ! ワタシが燈火持ちマス!」

 

 そう言うとパウは立っていた場所から突然姿を消し、ネロの隣にフッと現れてランタンに手を伸ばした。


 すると突然ランタンの炎が真っ黒に染まってドッっと音を立てて燃え上がった。ランタンから黒い光と衝撃がほとばしり、発せられた衝撃はパウに命中した。


「うっ…!!」


 パウは壁のあたりまで吹き飛ばされてうめき声を上げた。

 

「ハハハ! これは面白い! ネロからランタンを奪おうとすると、堕天の燈火がその者を拒絶するようだ! パウとやら。消し炭にされなくて良かったな」


 王は腹を抱えて笑い転げていた。パウは驚愕の表情でネロとランタンを交互に見つめた。

 

「ふむ。四人目はスー・アン。騎馬族の頭領フビラの娘じゃ。知っての通り騎馬族は馬に精通しておる。スー・アンは騎馬族の中でも随一の馬の名手じゃ」

 

「喧嘩だって男には負けたことないよ。女と思って見下した奴は降りてきな」


 スー・アンは周囲を睨みつけた後、ハッと笑った。

 

 スー・アンは美しい顔立ちの女性で流れるような黒髪を、透かし彫りの施された金色の丸輪でピッタリと一つに束ねていた。見たことのない模様の群青色の服を着て、金色の帯をしめていた。目は力強く誰にも負けない自信の色が見てと取れた。

 

「わしを含めた五人でネロと堕天の燈火の護衛を行う。まずは北の帝国ルコモリエにある終わらぬ夜を照らす祭壇アマテラスを目指す。帝王も世界の終わりに際しては協力してくれるかもしれん」

 

「あの帝王が首都の火を絶やすとは思えん。行くだけ無駄ではないのか? そもそも捕らえられて皆殺しにあうのでは?」タウルス家のミノウが意見した。

 

「他の祭壇はそれより遥かに危険で到達が難しい。できれば行きたくはないのじゃ」パラケルススは答えた。

 

「もし帝国が無理だった場合は最果ての海を照らす北の大灯台シロ、あるいはジャンバルバラ山岳地帯に眠る地下の大神殿を目指すことになる。われわれの行動はバーバヤンガの目を通して確認するがよい」

 

 パラケルススがそう言い終わると、もう誰も何も言わなかった。王は満足そうに頷きながら「素晴らしい。実に素晴らしい」と言ってパラケルススに拍手をした。評議会の面々もそれに習い拍手を送った。

 

「エーテルの加護があらんことを!」王が言う。

「エーテルの加護があらんことを!」それに続いて皆も唱和した。

 

 パラケルススはネロの肩に手を置き「安心おし。わしらは君の味方じゃ」と耳打ちした。

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