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堕天の燈火【人間の書】  作者: 深川我無@書籍発売中


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死の雪中行軍2


「おいおい。いきなり黙りこくってどうしたんだよ?」


 カインがネロとベルのところにやってきて言った。

 

「あれ…」


 ベルが引きつった表情で指さした。

 

 そこには人間の下半身に食らいつく白い毛皮に覆われた《《口》》がいた。正確には人の下半身に食らいついた状態で凍っている口だった。

 

 その口は真っ白な長い被毛に覆われていて、がま口のような形をしていた。開いた口の中には鋭い牙がいくつも生えていた。しかも凶悪なことに牙は《《カエシ》》になっており、一度食いついた獲物が逃げようと藻掻けば、さらに深々と牙が食い込む構造になっている。

 

 カインが驚いて一歩後ずさった。

 

「なんだぁ? こいつは? おい! みんな来てくれ」


 カインは皆を集めて口の怪物を見せようとした。

 

「あれだよ」


 ネロが指さした先を見つめる一行。

 

「どれだい?」


 スーが尋ねる。

 

 ネロ達三人が見るとそこには怪物がいなくなっていた。

 

「馬鹿な!?」


 カインが氷に顔を押し付けて叫んだ。

 

「たしかにいたのよ!」


 ベルも驚いて訴える。

 

「三人とも見てるんだ。おそらく間違いない。警戒しろ」


 ハンニバルが剣に手をかけた時だった。

 


「ジャアアアアオオオオ!!!!」


 叫び声とともに氷の天井からズルリと化け物が落ちてきた。口を大きく開けて。

 

 ハンニバルは大剣ライラの背に片方の手を添えると、刃を垂直に斬り上げ口の怪物を両断した。

 

「なんだこいつは? 氷をすり抜けて出てきたぞ?」


 カインが青ざめた顔で言った。

 

「皆サン! 静かに! 音が聞こえマス」


 パウが耳を地面に付けて言った。

 

 全員が聞き耳を立てて、音に全神経を集中させた。すると氷の壁の向こう、天井の奥、凍った地の底から、何かが這いずり回るような音が聞こえてくる。

 

「一匹違いマス……」


 パウは恐怖の表情でつぶやいた。

 

「おそらく此奴が調査隊を全滅させた正体じゃ」

 

雪噛み(ゆきがみ)……」


 ベルがつぶやいた。

 

「知ってるの?」


 ネロが尋ねた。

 

「ううん。そんな気がして」

 

「ここは分が悪い。場所を嗅ぎつけて襲われる前に脱出しよう」


 ハンニバルの提案に一行は賛成した。

 

 吹雪は都合よく止んではくれなかった。一行はまたしても吹雪の中を手探りの状態で進んでいった。崖は北に向かってまっすぐ伸びていたが、どこから雪噛みが飛び出してくるかわからないので、崖から少し離れた所を列になって進んだ。

 

 体力の限界に達すると氷の壁に穴を開けて、仕方なくそこに避難しながらひたすら北を目指した。

 

 吹雪の中を進んでいると突然ツァガーンが(いなな)いて前足を高く上げた。ベルは振り落とされないようにスーにしがみついた。

 

「どうしたんだい? ツァガーン!」


 スーが尋ねるのと同時に先程までツァガーンの前足があった場所から大口を開けた雪噛みが飛び出してきた。

 

 すかさずカインがユバルを投げて、雪噛みの脳天と思しき場所を突き刺した。雪噛みはピクピク痙攣しながら死んだ。

 

「冗談じゃないぜ! こんな罠みたいな奴いつまでも避けきれねぇ!」


 カインが両手を広げて言うとカインの左手がブチンと音を立てて無くなった。

 

 パウがカインの腕を咥えて降ってくる雪噛みを突き殺した。

 


「ぐぉおおお…!!」


 カインは落ちた左手を拾い上げて傷に押し当てると、すぐさま肩についた呪いの目玉を突き刺してちぎれた腕を結合した。

 

「気を付けろ! どうやら嗅ぎつけられたらしい……」


 カインは痛みで悶絶しながらも次の襲撃に備えて鉈を構えた。

 

 ネロはぞっとした。今のがカインでなかったら死んでいた。

 

 一行はどこから飛び出すか分からない、死の罠が張り巡らされた白銀の世界を行進した。それはまさしく死の雪中行軍だった。

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