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堕天の燈火【人間の書】  作者: 深川我無@書籍発売中


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伝説のクリムゾンエイプ

「なんなんだよ!? あのどでかい猿は!」


 カインが叫んだ。


「あれは伝説の存在。ジーンエイプの始祖。クリムゾンエイプじゃ…」


 パラケルススが呆然としながら答えた。

 

 優にレッドエイプの三倍はあろうかという巨体で軽やかな猿の動きをするその怪物は、古びた凸凹でこぼこの棍棒を手に持ち、地平の彼方からこちらに向かってくる。レッドエイプと異なり腕は二本しかなかったが、そんなことは問題にならないような禍々しい迫力を持っていた。


 

「逃げよう!」



 ネロが叫んだ。その声で一同は我に返り、遠くに小さく見える廃村の方角へと馬を走らせた。

 

 全速力で馬を走らせているにもかかわらず、クリムゾンエイプとの距離はどんどん縮まっていく。後方からどしん! どしん! と巨大猿の飛び跳ねる音が近づいてくる。

 

「ボアネルゲ! ボアネルゲ! 彼の邪悪な血族を打ち払い給え!」


 パラケルススは杖を巨大猿に向けて叫んだ。


 するとネロ達のまわりに付いていた雷の化身がドンっと雷鳴を響かせてクリムゾンエイプのもとに飛んでいった。

 

 二体のボアネルゲはクリムゾンエイプに組み付くと雷を放ってクリムゾンエイプを焦がした。しかしクリムゾンエイプは雷に焼かれながらも一体のボアネルゲを棍棒で粉々に粉砕し、もう一体のボアネルゲの延髄あたりに噛みつくと、バリバリと音を立てて首を食い千切ってしまった。

 

 一行はその隙に少しでも巨大猿との距離を広げようと一心不乱に馬を駆った。雷で痺れた影響か、クリムゾンエイプは上手く走れない様子でぎこちない動きをしていた。

 

 後方で巨大猿がもたついている間に、ネロ達はなんとか廃村に到着した。そこは白いレンガづくりの塀と家が集まった比較的大きな集落だった。こんな場所になぜこんな立派な集落があるのだろうかとネロは不思議に思った。どうやら皆も同じことを考えているようだった。

 

「とにかく今は迫りくる脅威から逃れるのが先決じゃ! あれに勝つことは、今のわしらには叶わぬからな」

 

  村の中に入り、できるだけ入り組んだ道を通りながらクリムゾンエイプをやり過ごせる場所を探した。村の中心に近づくほど大きな建物が目立ってきた。建物の死角になって巨大猿の姿は見えなくなった。

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