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堕天の燈火【人間の書】  作者: 深川我無@書籍発売中


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キリル平原2

「パラケルスス!! ランタンの火が黒く…!!」


 ネロは前方を走るパラケルススに向かって叫んだ。ランタンの火が何者かの悪意に反応して黒く燃えていた。パラケルススは目を細めて周囲を警戒する。

 

「コッチです…!!」


 パウが叫んだ。見るとパウのいる左翼の丘から奴隷を引き連れたジーンエイプの一団が現れた。距離はそう遠くない。長弓の矢が届くくらいの距離だろうか。

 

 ジーンエイプは意地悪そうな顔をした猿人だった。手足が異常に長く兜と胸当てを付けていたが、下は何も履いておらず、真っ黒な毛に覆われた陰茎と睾丸が、だらりと垂れ下がって丸出しになっていた。

 

 奴隷たちは何も衣服を着ておらず、その殆どが男だった。嵌められた首輪を鎖で一直線に繋がれて歩いていたが、なぜかひょこひょこと奇妙な歩き方をしていた。よく見ると皆めそめそと泣いてるのがわかった。

 

 状況を探ろうと、さらに目を凝らしたネロはゾッとした。


 奴隷たちの手首と足首から先が無かったからだ。切断された手足は綺麗に治療されているようで血が出ている様子もなく、すでに傷口は肉で塞がっていた。

 

 ジーンエイプはただただ逃げられなくする目的のためだけに、奴隷の手足を切断して治療していた。


 ジーンエイプにとって奴隷は労働力ではなく、悪意を解消するための玩具なのだ。長く苦しい奴隷としての生活が、ジーンエイプの遺伝子に人族ヒューマンに対する底なしの悪意を刻み付けていた。憎き人族を同じ以上の苦しい目に遭わせなければ気がすまないと……。

 

「助けてくれぇぇええ…!!」


 突如こちらに気がついた先頭の奴隷が大声で叫んだ。するとジーンエイプの一人がギャーギャーと叫びながらその男に近づいていった。


 その猿は奇妙な形の金属の器具を持ち出すと、それを男の口にあてがった。男は大声で叫んで抵抗していたが無駄だった。


 やがて他の猿どもも集まってきて彼を地面に押さえつけると、口の中に器具をねじ込んだ。男は器具のために口を閉をとじられない様子だった。

 

 猿どもは長い柄の付いた鈎針(かぎばり)を取り出すと、それを男に見せびらかしながら興奮した様子でギャーギャーと喚き立てた。


 先程までだらりと垂れていた猿どもの一物はむくむくと膨れ上がっていく。取り押さえられた男は抵抗できぬまま舌に鈎針を突き刺された。


 小さな悲鳴が聞こえた気がした。


 猿どもの一人がその鈎針を手に取ると、全速力で駆け出して、男を引きずり回し始めた。

 

 男は列から外され、まともに立てぬ足と、まともに這えぬ手で、必死に引き回しに追従しようと抗った。なんとか耐えようと試みるのだが、躓き、バランスを崩し、挙げ句無惨に舌を引きちぎられてしまった。そして苦痛に満ちた大声で泣き叫ぶのだった。

 

 それを見た他の猿どもは大興奮の様相で地面や手を打ち鳴らし、足をドタバタと踏み鳴らしながら、雄叫びをあげて笑うのだった。

 


 ネロははらわたが煮えくり返るような怒りを覚えた。ジーンエイプを心底穢らわしい生き物だと思った。


 奴隷の男はただただ嬲り殺しにされている。いや。嬲り殺しならまだマシだっただろう。


 男は痛みを増すために生かされ、生き地獄を強いられていた。


「この邪悪な生き物をこの世に生かしていてはいけない…!!」


 ネロは初めて抱く憎悪に胸を焼かれながら弓に手をかけた。


 するとパラケルススが弓を引くネロの手をグッと握った。


「駄目じゃネロ。()すんじゃ…」


「なんで止めるんだ! パラケルスス! あれくらいの数なら僕らで簡単に殺せる!」


「いかん。奴らを殺しても状況は変わらぬ。あの者たちをここから逃げ延びさせることは出来ぬ。そのうえ追手が放たれれば、わしら共々全滅する危険すらある。気持ちはよう解る。解るが堪えてくれ。ネロ…!!」

 

 やり場の無い怒りが震えとなってネロの中に残っていた。ネロは放つ先を失った矢を見つめてから、もう一度丘の上にいるジーンエイプの一団を睨みつけた。猿どもはこちらのことなど気にもとめず、残酷な遊びに夢中になっていた。

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