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堕天の燈火【人間の書】  作者: 深川我無@書籍発売中


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キリル平原1

 朝靄(あさもや)がキリル平原に立ち込めていた。遥か遠くに太陽の気配を感じるが今日もどんよりと曇った空が日光を遮ってしまうだろう。ネロは堕天の燈火の封印されたランタンを腰に結びつけた。

 

 初めにこのランタンの不思議な性質に気がついたのは旅から三日目のことだった。何気なくランタンに手をかざすとまったく熱を感じない。


 不思議に思い恐る恐るつついてみたが、やはりランタンは熱くなかった。それからネロはランタンを手に持つことをやめて腰に結わえて旅をしていた。

 

「よいか。ここはジーンエイプの縄張りじゃ。出来る限り奴らに見つからず、戦いは避けてこの平原を突破したい」


 パラケルススは魔法で空中に描いた地図を指しながら皆に説明した。

 

「ジーンエイプって?」


 ネロはみんなに尋ねた。

 

「ジーンエイプはかつて人間の労働力確保のために、猿と人間の遺伝子を組み合わせてつくられた超遺伝子生物だ。かつてこのキリル平原の東にはシルグルと呼ばれる大国があった。シルグルの人々は従順に命令に従うジーンエイプを、使い捨ての労働力とみなして残酷に使役したそうだ。しかしだ、ジーンエイプは腹の奥底で狡賢く辛抱強く邪悪な悪意の火種を燃やし続けていた。ある日ジーンエイプは一斉に武装蜂起し、油断していたシルグル人を虐殺し、奴隷にし、残虐に弄んだ」


 ハンニバルは感情を面に出さずに淡々と説明した。

 

「それだけじゃないよ…!! 奴らはシルグルの資源を食い尽くすと、アタシの仲間の部族が住んでいたキリル平原に目を付けたんだ!! キリルの騎馬民族を襲って奴隷にし、犯し、蹂躙してキリル平原を乗っ取ったんだ…!!」


 スーが瞳に憎しみの炎を燃やしながら吐き捨てるように言った。


「この旅が無事に終わったら、アタシはブラフマンの援軍を率いてキリル平原を奴らから奪い返す!! 一族の名誉と仇のために…!!」

 

「今、奴らはここを抜けようとする行商人の一行や帝国軍の偵察部隊を襲って物資や奴隷を確保しておる。いわば人間狩りじゃ。絶対に奴らに捕まってはならん。奴らの数は夥しい。戦いも避けるにこしたことはない。中でも突然変異種のレッドエイプは強靭な体と高い知能を持っておる」

 

 一同はパラケルススの話に頷いた。



 

「あともう一つ大きな危険が存在する。六つ目狼じゃ…」

 

「聞いたことがある。ジーンエイプを駆逐するためにシルグル国の残党が作った合成生物(キメラ)だな」


 ハンニバルが目を細めた。

 

「さよう。毛の無い身体に触手が生えた巨大な狼じゃ。名前の通り目が六つあるように見える」


「見えるだ? 含みのある言い方じゃねえか!?」


 そう言ってカインがパラケルススに突っかかった。


「実際には百の目が隠されておるという噂じゃ。わしも実際に見たことはない。六つ目狼は個体数は極めて少ないが万能細胞を埋め込まれた影響で無類の再生能力を持つという。事実上殺すのは不可能だと言われておる。会敵した場合はとくかく逃げるのじゃ」

 

「ここから先頭はスーに頼む。ツァガーンで先行し周囲を警戒してくれ。ネロを中心にして左翼をパウ、右翼をカイン、殿しんがひはハンニバルに任せる。わしはネロの前を行く」

 

 こうして一行はキリル平原に足を踏み入れた。スーはツァガーンの上に立って先頭を駆けた。平原を駆けるツァガーンはとんでもない速さだった。それでもスーはバランスを崩すことなくツァガーンの上に立って周囲に目を配るのだった。そしてはるか彼方に異変を感じるとパラケルススのもとに戻り進路を確認するのだった。

 

 パウはネロの左翼を走っていたが、ことあるごとにネロの方へ近寄ってきてネロに話しかけるのだった。

 

「ネロ。ここ精霊少ナイ! 悪霊の声大きいデス! 危険な場所! 恐ろしイ!」

 

 そう言ってパウは大きな体を小さくしながら馬に乗っていた。

 

 しばらく何事もなく順調に旅は進んだ。しかしキリル平原に入り三日を過ぎたころから異変が起こり始めた。

 

 ジリジリっと左の腰が熱くなるを感じてネロは腰に目をやった。するとランタンの火が黒く変わり火の粉を撒き散らしていた。

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