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堕天の燈火【人間の書】  作者: 深川我無@書籍発売中


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西の森林地帯3

 神聖で穏やかな森の空気の影響か、旅の一行に初対面の気負いが無くなりつつあった。


 それでも相変わらずパウとカインは険悪そのものだった。


 ネロはどうしてパウが呪いのことをそんなに気にするのかわからなかった。


 そこで、ある日の狩りの帰り道、ネロはカインに尋ねてみることにした。


「カインはなんで呪われてるの?」


「あー。何ていうかな…。俺のご先祖様が神様の命令に背いて呪われちまったんだな」


 カインは月桂樹の枝をはみながら答えた。


「おかげでどこにも定住できねぇ。一所に長く留まると酷いことが起きる…」


 ネロの顔をチラリと見てから、カインはパンと音を立てて自身の太腿を叩いた。


「だがよ! それももうしまいだ! この旅が無事に終われば、呪いを解くためのお宝をブラフマンからもらえることになってるんだ!! 一族の連中もこれでやっと自分の家を持てるようになるってわけよ!! お前さんのおかげだな!!」


 カインはひひひっとネロに笑ってみせた。

 

「じゃあ別に誰にも迷惑をかけないじゃないか。どうしてパウはあんなに呪いを見て怒ったんだろう」


 ネロは思い切って聞いてみた。


「さあな。だが(やっこ)さんには奴さんの事情があるんだろ。この旅に志願するようなのは、みんな訳ありだろうさ」


「さて! 獲物も手に入ったし帰るとするかな!」


 カインは空気がしんみりする前にそう言って野営地の方角に歩いていった。

 

 こうして旅を始めて三週間が経ったころ、一行はついに森を抜けてキリル平原の東の端に到着した。広大な草原地帯の上空には暗雲が低く垂れ込めている。


 この頃になるとネロの体格は以前より随分と逞しくなり、力も強くなっていた。


「ちったぁ男らしくなってきたじゃないか。見直したよ!!」


 スーはそんなネロの肩を拳で叩いて笑った。

 

 スーはいつもネロをからかって楽しんでいたが、ネロの訓練する姿勢とツァガーンに対する接し方を見ていた。


 初めはネロに、決して体を触らせようとしなかったツァガーンも、ネロがエーテルと剣の扱いを学ぶにつれて少しづつ心を開いていった。


 ネロがなんとかツァガーンに触ろうとして毎日ハーブを摘んではツァガーンに持っていったのも功を奏したのかもしれない。

 


 パラケルススは前方に広がったキリル平原の地平線を睨みながら言った。


「皆の衆、ピクニックは終わりじゃ。ここから先に待ち構えておるキリル平原は、この世に実在する地獄のひとつじゃ…」



 彼方に見える暗雲と緑の境界線では、稲妻が蒼い光を放ちながら威嚇するように遠雷を轟かせていた。

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