表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
堕天の燈火【人間の書】  作者: 深川我無@書籍発売中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/55

宝物庫2

 ブラフマンに連れられて、あれこれと見て回っていると一際異様な物体が安置されていた。真っ黒の樹脂製の立方体に四角いガラス板がはめ込まれている。しかもガラスはごく僅かに凸レンズ状に加工されていた。立方体の下部にはいくつか凹凸があり、何かをはめ込むためのものだろうか? 細長い四角の穴が開けられていた。

 

「ほほう。これが気になるか? これは超古代遺物(アーティファクト)だ。ブラウンカンというものらしい。かつて人類はこれに映像を映し出して情報を発信していたそうだ。情報を封印したテープなるものをこの穴にはめて、封印された映像を見ることもできたらしい」

 

 ふと見るとブラウンカンのとなりに美しい楡の木で出来た短弓が立てかけれていた。ネロはそれを手にとった。


「エルフの弓じゃ」


 どこからともなくパラケルススが現れてそう言った。


「これをもらっても?」


 ネロは王とパラケルススに尋ねた。


「かまわぬ。持っていくがよい」


 王は腕組みした手をほどき、片方の手をゆったりとした動作でシッシッと振って見せた。

 

 三人で並んで宝物庫の入り口まで歩いていくとハンニバルが鞘に納められた一振りの短剣を携えて待っていた。

 

「これを持ってみろ」


 そう言うとネロに短剣を放って寄越した。


 ネロは鞘から短剣を引き抜いた。するとビロードのように黒く輝く、美しい漆黒の刀身が現れた。

 

「その剣は名をノワールという。俺の漆黒の大剣ライラと同じ刀匠《《ゾーリンゲ》》の作品だ」


 ノワールは夜の闇のようにネロの手に吸い付いた。軽く振るとスルスルと虚空を切り裂いていくように太刀筋が走った。

 

「うむ。良さそうじゃの。ブラフマンあれももらっていくぞ」


「まったく無遠慮な男だパラケルスス。持っていくがよい」


 そう言うとブラフマンはネロの持つランタンを指さしてこう続けた。

 

「ネロ。今お前が手にしているこのランタンもとても貴重な魔法具だ。あらゆる火を封印し携えることができると言われている。そのうえ簡単には壊れないように、余とパラケルスス、そしてバーバヤンガの三人の魔術で封印の呪文をほどこした。それなのにだ。堕天の燈火の力には全く刃が立たない」


 ブラフマンは膨れ面でランタンを小突いた。

 

「我々の魔法で可能なのは物理的な衝撃で簡単には壊れないようにするのが精一杯だった。しかも魔法の効力を高めるために開け閉めできる小窓が付いている。くれぐれも開けぬようにな? 開ければ抑えていた炎が一気に外に溢れ出し、消えぬ炎であたり一面を焼き尽くすだろう。ちょうどソドムとゴモラに降った裁きの火のようにな」

 

 ネロはランタンに付いた小さな窓を見つめて頷いた。

 

 ネロたちは宝物庫をあとにした。宝物庫を出る時、見たこともない宝物に身を包んでいる自分の姿が出口の脇に立てかけられた鏡に写った。


 その姿はまるで夢か何かのようで現実味がまるで無かった。ネロはハッと夢から醒めたように母さんを思い出した。


 堕天の燈火を無事天界に返し生きて帰らなければ、母さんの命もないのだ。現実味がないなどと言ってはいられない。この現実をなんとしても生き延びなければならないのだ。

 

 ネロは鏡に映る自分の顔を睨み覚悟を新たにするのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ