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襲天のユサーパーズ  作者: Ba-N0rth
調和するは、文芸と語り
14/14

『羅生の謎』其のニ

ユニークアクセス数が300を突破しました!


よく拙作を読んでくださる皆様、つい最近読み始めてくださったという方々も、本当にありがとうございます!


これからも日々精進して参りますので、今後ともぜひ、応援お願いいたします!!

挟み撃ちの陣形でレオ一行を捕らえた、“空虫”と、“悪食”なる異形。


「絶対強いだろ、こいつ」


“空虫”は、先ほど弱体化させたこともあり、軍勢は優れていない。


対する“悪食”は、無数に生やされた手で、妖怪を掴みながらの踊り食いをしている。


割とグロテスクな光景には、濁りきった咀嚼音がBGMだ。




「――!?」


“悪食”が食った妖怪、その頭が、“悪食”の体から出現した。




「“強火”!」


両手から炎を出し、左のは青く、右のは強い業火へ変換する。


「るぅっ、らあっ!!」


“空虫”に青炎を、“悪食”に業火を、投げつけ、それぞれ、司令塔と頭に激突させる。


「“ドカーン”!」


合言葉に反応して、チリチリ、と音を立てながら爆ぜる二つの炎。


「空虫は削れたか…」


レオの放った“青炎”は、魔力を燃料に燃える。


それにより無力化には成功した。


そして、


「――まずはお前だ!」


魔剣“龍牙の儀礼剣レイツェル・ウロボロス”を、虚空に数回振り回し、生き残りの“空虫”に向かって、一直線に走る。


また、同時に、自身の魔力を放出しながら、“空虫”まであと二歩のところで後方へと突き出す。



――それは、この魔剣に宿された能力である。


剣を伝うことで放出された魔力を魔剣に一気に収束させる、その技。


名は、






「“龍儀の明星(ティンクル)”!!」



再び、剣を前へと突き出し、周囲の建物、壁を跳ね回りながら突き進む光の一振りが、残りの“空虫”を斬り裂いた。



「――その魔力、食わない方がいいぜ?」


「――――ッ!?」


「ほぉら、言わんこっちゃない」



“龍牙の儀礼剣”を通して発動される魔法や魔法系スキルは、毒属性を付与される。


それもただの毒ではなく、相手の魔力構造を乱し、効果が切れるまで、破壊・汚染する“魔毒”。


この術式を初めて発見したのはレオであり、この数少ない使い手も、紛うことなき強者である。



「ま、お前らには効果絶大だわな」


「――――!!!」


彼らの肉体の崩壊を見届けてから、猛スピードで背後を振り返る。



「“業火”を受けてから、警戒してるみたいだな」



どの攻撃が効くのか分からずに、ただの爆炎をぶつけたのだが、それだけの効果があるだけ引きがよかった。



「式神ーズが狙われる前に、さっさと片付けよう」


インベントリから別の剣を取り出して、“悪食”に向かう。


残念ながら、フワに解析を優先させるために、魔力の大部分を渡したのだ。


別の武器でないと戦えない。



「“火”」


刀身に炎を宿し、その鋒を怪物へ向ける。



「一応聞いとくが…、言葉を話せたりはするか?」


「――――ッッッ!!!」


「分かった。話せないなら、逝ってくれ」



付喪神のように、交渉、説得が可能であれば、味方にできる可能性もあったが、それも望み薄だろう。



「現時点での目的は、二人の“呪い(デバフ)”を解除させること」


それが完了すれば、彼らと共闘すれば勝算が上がる。



「頼むぞ、龍牙剣(ウロボロス)


渾名のように、愛剣に声をかけながら、その刀身を左右へ数回振って、再度“悪食”に突きつける。



この怪物と戦うにあたって、この魔剣を使うのには、もちろん理由がある。


語るのは二度目であるが、この魔剣を通した魔力は、他の魔力を乱す効果がある。


魔毒は、干渉する、と言う方が正しいだろう。



「この剣はVITが低いんだ、さっさと決める」


レオのMP残量からして、“龍儀の明星”は四発打つのが限界だ。



「ただ、弱点がどこにあるのか分からねえな」



“龍儀の明星”を発動させるには、連続攻撃の場合も含めて、全てクリティカルを発生させなければならない。


失敗すれば、当然MPが無駄になる。



「んじゃ、まずは小手調べだ」


右手の魔剣を、取り出した鞘にしまって腰にかける。


そして、さっき、そこら辺で拾った鉄の斧を右手に構える。



「らぁっ!」



脳内再生だけで、“点火”を発動――、そのまま頭の一つに叩きつける。


「痛えナ!何しやガル!!」


「なんだぁ?喋れる妖怪も食べてるのかな?」


だとすれば、フワの発言に合わせると、中の下以上の実力を有していてもおかしくはないだろう。


そこにフワのような知恵とか、モコのような魔力量とか、別の脅威を加えるのならば、その危険性は大いに増す。



「“烈火”!“爆熱”!――“蕾”!

――“牡丹”!

“松葉”!――間に挟んで“点火”ァ!!

――“散り菊”ゥ!!」


それぞれ異なる頭に、一発ずつ効果力を叩きつけ、そのうちの何回かは表面を削ることに成功した。


その結果、剥き出しとなった弱点部位の一つに、“龍儀の明星”を叩きつける。



「――、魔力が薄まった!」


だが、モコたちの症状は治っていない。


「あと三発でマシにできるかぁ…?」


まあ、その時はその時だ、と乗り切って、再生しかけている弱点にもう一発を命中させる。



「痛い、痛いよォ!!!」


「うるせえんだよ!怨霊!今楽にしてやるから、あとちょっと耐えろ!」



恐らく、死後、怨霊に転じたのだろうそれの、泣き喚く姿を宥めながら、狙いをその怨霊へ変えて一撃で、


「――迷ったな?」


レオの横っ腹に、別の妖怪、怨霊たちの拳が乱舞した。


「――レオ!!」











「――どけ」


「「「――――!!?」」」


「何驚いてるんだ、カスども?」



無数の拳は、荒々しさを増して振り回された斧撃によって切断された。


「待たせたな、眠れ」


「――ありがとう」



あくまでこれはロールプレイ――、レオは自分に言い聞かせながら、龍牙剣が怨霊の首を断ち切った。



「なるほどな、首を切ったら“胃袋”ん中の霊が消えるのか」



「お前の呪力では、光も出せんだろ!あと一発を防いでしまえば、お前は即死じゃ!!」


「どうかな!!」



一つの頭の上に着地し、斧で斬りつつ、一度地面へと着地する。



「――図星か?人間のやることはつまらんのォ」


何も答えずに、ただ迫る攻撃を斧で捌く。



「そこじゃア!!」


ガードの姿勢、という名のフェイントを見せびらかし、それに乗った“悪食”へ、


「“龍儀の明星”!!」






クリティカルで命中させ、()()()()となる。



「もう一本!!」


「――――!?」



傷口へと、残るMPを全消費して放たれた、現時点での最大の特攻ダメージが、叩きつけられた。



「ハッタリかよぉ…!!」



先程の怨霊の首を切った際、この下卑た妖怪は、恐らくレオのMPが減少するのを確認したことで、“龍儀の明星”を発動した、と確認したのだろう。



“あと何発打てるか”的なワードをぼやいたのを聞いていたのだろう、妖怪に、それをまんまと信じる低脳しかなかったことが幸いだろう。



怨霊のキルには、極少量のMPだけで行い、後の一発、そして、ラストの一発で騙すことができたのだ。


ただ、ただでさえVITの低い、この魔剣を、一発多く使ってしまったが、それも仕方ないと割り切れる。




「さぁて」


「もう、終わりかァ――?」

「喰わせろォ」

「美味そうダナァ」

「チョキ、プリィィィ!!!」



「なんか聞き覚えのある鳴き声あったぞ!!?まあいいや――




――俺の役目は果たした」



そう言って、魔剣をインベントリに戻して、斧を持ち帰るが、その瞬間に、レオの頭上を、淡い閃光が突っ切った。



「――“呪断(ノロイタチ)”!!」


両手それぞれに斧を持った六夢が、それらを“悪食”へと殴りつけた。



「ナイス高火力!!」


そこへ、レオも加わった。



「――“美しき、小さな芽”」


完全詠唱により、威力を底上げして、その炎が撒かれた。


「――“蕾”!」



一つ目。十秒間という時間の中、言葉の由来のように攻撃を重ねるたびに、火力が上がり、頭に激突するたびに、その火の玉は大きさを増す。


頭はざっと二十頭を撃破。




「“牡丹”!!」


二つ目。力強い爆炎が、また新たな頭へと、次々に打ち砕いていく。


十秒間の結果、頭の三十頭ほどを撃破。



「“松葉”!!」


三つ目。範囲が広がった火花が、一度に何体もの頭を破壊する。


三十頭ほどを撃破。




――そして最後に、


「――“散り菊”!!」


斧身に纏われた火花が散り、威力だけを置いていく、最後の一撃。


「体力も限界だろ!!」



残りの数が少なくなった“悪食”に、最後は弱点部位であろう、皮膚へと叩きつけた。



「――見事」

「さらばだ」

「あの世で待っている」



そう言い残して、彼らはポリゴンに変質した。

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