『羅生の謎』其のニ
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よく拙作を読んでくださる皆様、つい最近読み始めてくださったという方々も、本当にありがとうございます!
これからも日々精進して参りますので、今後ともぜひ、応援お願いいたします!!
挟み撃ちの陣形でレオ一行を捕らえた、“空虫”と、“悪食”なる異形。
「絶対強いだろ、こいつ」
“空虫”は、先ほど弱体化させたこともあり、軍勢は優れていない。
対する“悪食”は、無数に生やされた手で、妖怪を掴みながらの踊り食いをしている。
割とグロテスクな光景には、濁りきった咀嚼音がBGMだ。
「――!?」
“悪食”が食った妖怪、その頭が、“悪食”の体から出現した。
「“強火”!」
両手から炎を出し、左のは青く、右のは強い業火へ変換する。
「るぅっ、らあっ!!」
“空虫”に青炎を、“悪食”に業火を、投げつけ、それぞれ、司令塔と頭に激突させる。
「“ドカーン”!」
合言葉に反応して、チリチリ、と音を立てながら爆ぜる二つの炎。
「空虫は削れたか…」
レオの放った“青炎”は、魔力を燃料に燃える。
それにより無力化には成功した。
そして、
「――まずはお前だ!」
魔剣“龍牙の儀礼剣”を、虚空に数回振り回し、生き残りの“空虫”に向かって、一直線に走る。
また、同時に、自身の魔力を放出しながら、“空虫”まであと二歩のところで後方へと突き出す。
――それは、この魔剣に宿された能力である。
剣を伝うことで放出された魔力を魔剣に一気に収束させる、その技。
名は、
「“龍儀の明星”!!」
再び、剣を前へと突き出し、周囲の建物、壁を跳ね回りながら突き進む光の一振りが、残りの“空虫”を斬り裂いた。
「――その魔力、食わない方がいいぜ?」
「――――ッ!?」
「ほぉら、言わんこっちゃない」
“龍牙の儀礼剣”を通して発動される魔法や魔法系スキルは、毒属性を付与される。
それもただの毒ではなく、相手の魔力構造を乱し、効果が切れるまで、破壊・汚染する“魔毒”。
この術式を初めて発見したのはレオであり、この数少ない使い手も、紛うことなき強者である。
「ま、お前らには効果絶大だわな」
「――――!!!」
彼らの肉体の崩壊を見届けてから、猛スピードで背後を振り返る。
「“業火”を受けてから、警戒してるみたいだな」
どの攻撃が効くのか分からずに、ただの爆炎をぶつけたのだが、それだけの効果があるだけ引きがよかった。
「式神ーズが狙われる前に、さっさと片付けよう」
インベントリから別の剣を取り出して、“悪食”に向かう。
残念ながら、フワに解析を優先させるために、魔力の大部分を渡したのだ。
別の武器でないと戦えない。
「“火”」
刀身に炎を宿し、その鋒を怪物へ向ける。
「一応聞いとくが…、言葉を話せたりはするか?」
「――――ッッッ!!!」
「分かった。話せないなら、逝ってくれ」
付喪神のように、交渉、説得が可能であれば、味方にできる可能性もあったが、それも望み薄だろう。
「現時点での目的は、二人の“呪い”を解除させること」
それが完了すれば、彼らと共闘すれば勝算が上がる。
「頼むぞ、龍牙剣」
渾名のように、愛剣に声をかけながら、その刀身を左右へ数回振って、再度“悪食”に突きつける。
この怪物と戦うにあたって、この魔剣を使うのには、もちろん理由がある。
語るのは二度目であるが、この魔剣を通した魔力は、他の魔力を乱す効果がある。
魔毒は、干渉する、と言う方が正しいだろう。
「この剣はVITが低いんだ、さっさと決める」
レオのMP残量からして、“龍儀の明星”は四発打つのが限界だ。
「ただ、弱点がどこにあるのか分からねえな」
“龍儀の明星”を発動させるには、連続攻撃の場合も含めて、全てクリティカルを発生させなければならない。
失敗すれば、当然MPが無駄になる。
「んじゃ、まずは小手調べだ」
右手の魔剣を、取り出した鞘にしまって腰にかける。
そして、さっき、そこら辺で拾った鉄の斧を右手に構える。
「らぁっ!」
脳内再生だけで、“点火”を発動――、そのまま頭の一つに叩きつける。
「痛えナ!何しやガル!!」
「なんだぁ?喋れる妖怪も食べてるのかな?」
だとすれば、フワの発言に合わせると、中の下以上の実力を有していてもおかしくはないだろう。
そこにフワのような知恵とか、モコのような魔力量とか、別の脅威を加えるのならば、その危険性は大いに増す。
「“烈火”!“爆熱”!――“蕾”!
――“牡丹”!
“松葉”!――間に挟んで“点火”ァ!!
――“散り菊”ゥ!!」
それぞれ異なる頭に、一発ずつ効果力を叩きつけ、そのうちの何回かは表面を削ることに成功した。
その結果、剥き出しとなった弱点部位の一つに、“龍儀の明星”を叩きつける。
「――、魔力が薄まった!」
だが、モコたちの症状は治っていない。
「あと三発でマシにできるかぁ…?」
まあ、その時はその時だ、と乗り切って、再生しかけている弱点にもう一発を命中させる。
「痛い、痛いよォ!!!」
「うるせえんだよ!怨霊!今楽にしてやるから、あとちょっと耐えろ!」
恐らく、死後、怨霊に転じたのだろうそれの、泣き喚く姿を宥めながら、狙いをその怨霊へ変えて一撃で、
「――迷ったな?」
レオの横っ腹に、別の妖怪、怨霊たちの拳が乱舞した。
「――レオ!!」
「――どけ」
「「「――――!!?」」」
「何驚いてるんだ、カスども?」
無数の拳は、荒々しさを増して振り回された斧撃によって切断された。
「待たせたな、眠れ」
「――ありがとう」
あくまでこれはロールプレイ――、レオは自分に言い聞かせながら、龍牙剣が怨霊の首を断ち切った。
「なるほどな、首を切ったら“胃袋”ん中の霊が消えるのか」
「お前の呪力では、光も出せんだろ!あと一発を防いでしまえば、お前は即死じゃ!!」
「どうかな!!」
一つの頭の上に着地し、斧で斬りつつ、一度地面へと着地する。
「――図星か?人間のやることはつまらんのォ」
何も答えずに、ただ迫る攻撃を斧で捌く。
「そこじゃア!!」
ガードの姿勢、という名のフェイントを見せびらかし、それに乗った“悪食”へ、
「“龍儀の明星”!!」
クリティカルで命中させ、残り一発となる。
「もう一本!!」
「――――!?」
傷口へと、残るMPを全消費して放たれた、現時点での最大の特攻ダメージが、叩きつけられた。
「ハッタリかよぉ…!!」
先程の怨霊の首を切った際、この下卑た妖怪は、恐らくレオのMPが減少するのを確認したことで、“龍儀の明星”を発動した、と確認したのだろう。
“あと何発打てるか”的なワードをぼやいたのを聞いていたのだろう、妖怪に、それをまんまと信じる低脳しかなかったことが幸いだろう。
怨霊のキルには、極少量のMPだけで行い、後の一発、そして、ラストの一発で騙すことができたのだ。
ただ、ただでさえVITの低い、この魔剣を、一発多く使ってしまったが、それも仕方ないと割り切れる。
「さぁて」
「もう、終わりかァ――?」
「喰わせろォ」
「美味そうダナァ」
「チョキ、プリィィィ!!!」
「なんか聞き覚えのある鳴き声あったぞ!!?まあいいや――
――俺の役目は果たした」
そう言って、魔剣をインベントリに戻して、斧を持ち帰るが、その瞬間に、レオの頭上を、淡い閃光が突っ切った。
「――“呪断”!!」
両手それぞれに斧を持った六夢が、それらを“悪食”へと殴りつけた。
「ナイス高火力!!」
そこへ、レオも加わった。
「――“美しき、小さな芽”」
完全詠唱により、威力を底上げして、その炎が撒かれた。
「――“蕾”!」
一つ目。十秒間という時間の中、言葉の由来のように攻撃を重ねるたびに、火力が上がり、頭に激突するたびに、その火の玉は大きさを増す。
頭はざっと二十頭を撃破。
「“牡丹”!!」
二つ目。力強い爆炎が、また新たな頭へと、次々に打ち砕いていく。
十秒間の結果、頭の三十頭ほどを撃破。
「“松葉”!!」
三つ目。範囲が広がった火花が、一度に何体もの頭を破壊する。
三十頭ほどを撃破。
――そして最後に、
「――“散り菊”!!」
斧身に纏われた火花が散り、威力だけを置いていく、最後の一撃。
「体力も限界だろ!!」
残りの数が少なくなった“悪食”に、最後は弱点部位であろう、皮膚へと叩きつけた。
「――見事」
「さらばだ」
「あの世で待っている」
そう言い残して、彼らはポリゴンに変質した。




