楽しむって勝ちじゃん?
初めての投稿なので、どれくらい書けばいいかわかりませんでしたが、感想、レビューの方、お願い致します!
――一人の少年。
中学に入学して一年が経とうという頃、つまるところ春休みを迎えた彼の脳裏に過るのは、いつもの日常とも、大した差はない。
春休みの宿題、そんなものは先生が授業中に予告した日のうちに終わっている。
最後まで溜め込むのに嫌気がさしたから、そんな理由さえあれば十分、多少の無理をしてでも済ましておくがベストと言える理由になる。
早朝。
部屋に鳴り響くアラームを止めて、残る睡魔をエナドリによって打ち勝つ。
今日からは一日二食が基本となるので、前日に親の用意した大量の食事を半ば急いで完食する。
速く食べるのは味わえていない証拠だ、などとほざいてきた人もいたが、相変わらず母の食事は美味、それを感じられているのならば、こちらとしては十分だ。
再び部屋へと戻り、テーブルの上からVRゴーグルを取って装着。
準備は万端、これからのゲーム三昧な時間を想像すると心が躍り続けているのが分かる。
ゴーグルの電源を入れて、ベッドに寝転がると、仮想の世界が少年を歓迎した。
俺の名は「レオ」。
それはこのゲームの世界における名だが、本名をそのまま使用しているから大した違いもない。
念願の春休みが始まった今日この頃、現在午前三時。
俺はゲームの世界にいる。
というのも、現代におけるゲームは、十数年前のそれとは異なる。
フルダイブを用いたVRゲームが世間一般の娯楽の一つとなり、ディスプレイを用いたものは、よくてレトロ悪くて古臭い、そんな扱いになった。
そうして、フルダイブゲーに熱狂する人口は年々増える傾向にあった。
その結果、現代のプロゲーマーの社会的地位は、オリンピックの中心的な種目よりやや低い、といったところだ。つまり大人気。
他にも歴史はあるのだが、それは置いておく。
そして今年一月(つまるところ約二ヶ月前)、世界におけるプロゲーマーの二強国が一つたる、我が国じゃぷぁんにて、歴史的な報告がSNSにて発された。
数々の公式戦での称号(即ち『ホルダー』)の所有経験を持つ、国内の全プロ、その数七十名が、今後の公式戦への不参加、つまりは活動の臨時休止を発表した。
それだけでもかなりの衝撃だが、全国のゲーマーへの追い打ちは止まることを知らず、国内人気一位のMMO『天地』のイベントに参加することを、翌日加えて発表したのだ。
そうして、『天地』の新規プレイヤー数は鰻登り。
ゲーム内のプレイヤーは世界一位の三千万人を突破し、某世界記録に認定された。
そしてここからは俺の話。
俺も『天地』をプレイしており、もっと言うとリリース当初からの古参だ。
小坊だった頃に、あるプロに出会って、生まれて初めて貰ったサインに心躍らせた。
そうして親から貰ったVR機器、当時リリースされた『天地』をプレイし続けて廃人ゲーマーになった身だ。
そして、何の運命か、サインをくれたプロに、憧れの彼に、挑めるチャンスが来て、俺は感激した。
そして今日は、イベントが始まる前日。
なぜ俺がこんな早朝にログインするのか、それは、
『予定時間になりました!只今より、SA順位決定戦を開始致します!』
機械音声とともに告知が表示され、それが消失するのと同時に、暗闇だった待機画面ならぬ待機空間に光が流れ込んだ。
イベント開始前、『天地』には三つの階級があった。
上から順にA、B、C級と言い、それを日々のプレイヤーのバトルロワイヤル(要は辻斬り)で上を目指すという形式だ。
A級は『天軍』というチームに所属し、対するBC級は『地軍』に所属する。
A級(即ち天軍)は、総プレイヤー数が三千万人超の時点では130名(割合にして上位0,0006%)の精鋭、その存在を示しており、全員が協力関係。
が、地軍は全員が全員敵対関係であり、ジャングルのような生態系ができても、ほんの一瞬で崩壊するレベルで暴れて回る状態だ。
(余談だが、天軍に繰り上がったプレイヤーが、急に味方になった人とは、最初は牽制しあうのも珍しくない。)
そして、大陸レベルで広いフィールド内で二軍が争うのが、天地というゲームなのだ。
話を戻して、S級とは、プロゲーマーが君臨する最高位のこと。
そうして、イベント期間中は、両軍内のランキングが変動するだけで、軍の移動は発生しない。
元よりA級に所属する俺にもありがたい話だが、今日、順位決定戦なるものが開催されるのは、天地を代表する、我らがA級と、プロゲーマーの交流会の意味があってのことらしい。
その結果、当然ながらいるであろう、プロファンのA級プレイヤーは大歓喜。
その俺たちはゲーム内のグループチャットでそれを叫んでいる。
――そして、今日が来た。
誰も彼もが、この時を待ち望んていただろう。
何せ、ゲーマーの頂点たるプロと、殴り合えるのだ。
さあ、
「暴れよう!!」
◆
ゲームの形式は至ってシンプル。
ワンライフ制の個人戦バトルロワイヤル。
A級プレイヤーは、直前まで愛用してきたステータスビルドとアバターを継続して使用。
S級は運営と深く話し合った末に完成した、彼ら専用のスキル、魔法を持ったステータスの権化。
それらが今から、激突を始めた。
のだが、
専用マップ『バケモノ街』、あまりにも敬意か揶揄が込められている名の大都市。
その全域にて、戦闘が勃発する音が、空に響いた。
その一角にて、俺もまた暴れていた。
今、この状況においては、誰よりも俺が「バケモノ」だっただろう。
なぜなら、
「やっべぇ…逃げろ!!レオだぞ!!」
「いや誰!?A級さんら教えてくれ!!」
「乱獲者とか呼ばれてるトッププレイヤーっすよ!!ってかハルマじゃん!!」
「ホントだ、最期に握手…」
「するわけねえだろ爆弾野郎!首チョンパァ!!」
そう、A級トップ10である俺…、ってハルマ選手何してんの?
「煙臭え!まあいいや。おおい、レオとやら」
止めようとして結局自爆されて吹き飛んだプロ――ハルマは、俺を指差して叫ぶ。
「全国ベスト4たる俺と勝負しやがれ!!」
「えー?まあいいよ?」
全力で自慢して勝負を挑むハルマ選手に、つい本音のまま返答してしまう。
それに彼は眉を震えさせた。
「なんだと!?この「お調子者ロールプレイ」が気に入らんのか?じゃあ、普通に話した方が、いいですか?」
「変化しすぎだろ、温度差で風邪ひくわ」
「やかましいわ」
まあ、ここで芸人的な振る舞いをいつも通りするのも無理はないだろう。
「――?」
ハルマ選手の背後に浮かぶ黒い球体をじっと見つめて黙り込む俺。
「あー、生配信には映りたくないですか?」
「いや、別に構わない、ですよ?立ち話もなんですし、早く戦おう、ます?」
ゲームとはいえ敬語を使うべきか悩む俺に、周りのアマゲーマーは武器を構えて黙ってるし、ハルマ選手は笑いを堪えるのに必死で言葉を選んでいる。
「はっはー!!ふぇえい…。敬語は不要です。まぁでも、その立ち方、隙だら…け――
いきなり武器を投擲し、攻撃する姿勢を向けるハルマ選手。同時に場の空気は一瞬にして急変した。
それは、戦闘が始まったからであっても、ハルマ選手が理由ではない。
彼のナイフが手から離れたと同時、それは幾つかの断片へと分けられた。
それからコンマ一秒ほどしか過ぎていないだろう、二人の周辺にいたプレイヤーの群衆が、武器を構えていた彼らが、横一直線に、体が真っ二つになった。
「は?――っ!!?」
精神を統一し、すぐに臨戦体制を取ろうと、ナイフを取り出そうとしたハルマ選手、だがそこで気づく。
自身の両手が地面に落下し、ポリゴンとなって消えていくことに。
そうして、いつの間にか姿を消していた、ように見えていたであろう俺はネタバラシよろしく彼の前に立つ。
そして、足を切り離して、武器を持たない手で拘束する。
「で?隙だらけだって?」
「わぁお」
俺がやったのは、あくまで地軍の群れをまとめて一網打尽にするための、ただの高速移動の攻撃だが、あれは割と初見殺しの類だし、見切れないのも無理はないか。
「今のはなんですか?あなたの短剣…ナイフ?が浮いているように見えたんですが?」
「ああー、まずそこからか」
せっかくなので、ここで手の内を明かしておこうか。生配信で危険だが、戦いたいプロがいるんだ。ここで宣戦布告でもしておこうか。
背中にしまっていた武器を再度取り出して、それをハルマ選手に見せる。
「ロープ?いや鞭か。先端にナイフをつけて振り回しているのか、面白い武器ですね!」
元々素がこれなのだろう、戦い方を教えると興味津々に聞いている。
こうしていると彼の視聴者の前で見せびらかした甲斐もあるか、と思う。
「「あ、そうだ」」
二人の声が重なり、俺は手で譲るハンドサイン、それにより、ハルマ選手の体重を支えるものがなくなり、地面へと激突する。
「なにしてんすか?まあいいや、太っ腹に披露してくれたお礼です、何か視聴者にでも一言いかが?」
地面に埋もれたせいで、包んだような声になるがそう聞き取れたので、俺は黒い球体の方へ向き、
「ええと、阿部ハルマ選手の配信の視聴者の皆さん、伝言をお願いしてもいいですかー?」
暫しの沈黙。
そうして、
「全然いいよ乱獲者ーって言ってますよ」
「あー、それじゃあ」
ナイフの切先を黒い球体へと向けて、
「――夏目ソウスケ選手に、挑戦状を挑みたい、とお願いします!」
そう、言い放った。
何を書けばいいかわからんけど、とりま主人公の武器の詳細でも書いときます。
普段の武器。
伸縮自在の鞭とナイフを組み合わせることで、周囲5〜12mの範囲を攻防する。(左前腕に小盾)
射程範囲が変動するのは、鞭のモード変更によるもので、鞭の長さ、伸縮性が変化することで、インファイトから槍みたいにチクチクできる、万能なクソ武器。
初見殺しの代表例みたいな技もたくさん編み出せる。
ゲームの特性上、距離を詰められると終わり、かと思うがそうでもなく、極限まで近づいてきた敵には背面を鞭で攻撃し、自分の方へ飛んできた体をバフ盛りの足技で跳ね返して、被弾時にバフを掛ける。
一応言っておくと、
メインジョブ:調教師、
サブ:付与術師