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八話「鍛造(オーダーメイド)」

ついに武器の鍛造オーダーメイドの予約が取れたらしい

とても嬉しい、心の底から熱い何かがこみあげてくるが

パーティーから何日たったのだろうか?


「父さま、パーティーから結構経ちますが何か事情があったのですか?」


悪意はない、ただ純粋な疑問をアルフレットに聞いた

彼のことだから「明日にはお前の武器を作ってもらえるから準備しておけよ」

みたいなことを言ってきそうなのに

いつも元気なやつが具合が悪そうだったらその理由を聞くだろう?

それと同じ理屈だ


「いやな、本来ならバーティーの次の日には作ってくれる予定だったんだけどな」


「あいつ鍛冶の腕がいいから、事後とが急に増えて無理って言われたんだ」


「そういうことですか」


「でも、今から行く鍛冶師ってどんな人物ですか?」


アルフレットと外を歩きながら俺の武器を作ってくれる人物について尋ねてみる

そうすると彼は少し難しそうな顔をしながら


「どんな人物か~、真面目というか何というか」


「まあ、信用できる奴だぞ、冗談は通じないが」


そう言うアルフレットの顔はどこか苦い過去があるのか、少し引きつっている

しかし、その中には確かに昔の友人に会えるという懐かしさも感じせる顔もしていた


「そうですか、それは楽しみです」


「なら、良かった」


そんな会話をしながら外を歩く

どうやら今行っている鍛冶師の工房は俺の家から歩いていける距離(4時間以上)とのことで

鍛錬の意味を含めて馬車などには乗らず、鍛冶師の下に向かっている


道中、何度も魔獣に襲われたがアルフレットと武器について話せれた


「そういえば、ラウロは魔剣とかは知っているか?」


「魔剣ですか?」


「確か魔法とかを無詠唱で打つことができる特殊な剣のことですよね?」


前世でも魔剣という存在はあった

設定では剣から炎や氷、はたまた「運命まで決定づける」ものまであるとかないとか


「まあ、その認識で大体はあっているが一つ訂正を加えておくと、

魔剣は剣だけじゃないんだ」


「物によっては弓矢や鞭なども魔剣と呼ばれることがある」


「まあ、剣と名前はついているがそこら辺はあやふやなんだ」


「へえ~、それはすごいですね」


「父さまは魔剣などを持った人とかに会ったことはあるんだすか?」


「あるっちゃあるが、そこまで強い魔剣にはあんまり合わなかったな」


「そうですか」


「強い魔剣ってどういったのもがあるのです?」


「そうだな、「全てを燃やす剣」や「未来を改変する手記」があるって聞いたな」


そう話していると例の鍛冶師の工房があるところまでついていた

工房の外側は主に煉瓦(れんが)でできており、少しボロい

しかし、内装は奇麗の一言に尽きる

必要な道具に必要な鋼、火花は飛び散っているが物が散らかったりはしていない

その内装からは鍛冶師が鋼に捧げる「敬意」とも呼べる物を感じ取ることができた


そう奇麗な攻防に関心を覚えていると、部屋の中心にいる鋼を打ってる男性はその手を止め

俺らの方へ筋骨隆々の体を振り向け


「よお、アルフレット何年ぶりだ」


「さあな、1年数えた後からはあやふやだ」


「俺より寿命が短いくせに長寿の考えをしているな」


男アルフレットより背は小さいが長年生きてきた奴特有の雰囲気

その渋い顔と鼠色の髪からは前世でいうところの「イケオジ」を彷彿(ほうふつ)とさせる

一目見てわかるのは(あ、この人あまり笑わない人だな)だ


そう思っているとそのイケオジは俺を見た途端、難しい顔を驚きの顔に変える


「!!、そこのヒヨッコがお前の」


そう言われた俺は無表情

しかし、アルフレットは少し苦笑しながら


「そうだ、俺の息子のラウロ・ソルフリー。

この年で中級剣士の実力がある期待の息子だ」


それを聞いた鍛冶師は


「そうか、お前が幸せそうでよかった」


アルフレットの笑顔にイケオジは彼が生活を送っていたのか想像できたらしく、

そのことに安堵したのか、長い息を吐いてそう呟いた

そしてイケオジは俺の方を見て


「はじめましてだな、ラウロ。

俺の名前は「ドーガ」種族はドワーフだ」


「こちらこそ初めまして、ラウロと申します」


「僕の武器を作ってくださってくれるのですよね?」


「剣を作って言うのは傲慢な考えだ」


そういったドーガは何の邪な考えもない真剣な顔で語りだす


「俺はただ素材が相手の最適な形になるための手助けをしているだけだ。

決して俺が作っているわけじゃない」


それはドーガの鍛冶師としての誇りとも呼べるものだと思う

決して素材に(おご)りを出さず、(さげ)すまず、

対等な立場で真摯に向き合う彼なりの信念

俺はその言葉に少し感銘を受けてしまった

こうも鋼に、、、いや素材全てに真摯に向き合う人物は初めて会ったからだ


「まあ、なんだ。喋り続けるのもいいが今日はラウロの武器を

鍛造オーダーメイドするっていう話だろ?今からやるから、お前らはどうする?」


その言葉にアルフレットは純度100%の笑顔で


「俺は近くの町に行って何があるか確かめてくるわ」


ただ俺は彼とは真逆の回答をドーガにした


「僕は自分の武器が鍛造オーダーメイドされるところを見たいです」


俺の一言にドーガは驚愕したのか目を少し見開き、その口を少し緩めた


「どうしてだ?見ていてもつまらないぞ」


「僕が使う武器です、窮地(きゅうち)を共に切り抜き戦い続ける半身

ただ僕はその半身に少しでも向き合って接したいのです」


「そうか、わかった。アルフレットお前の息子は「剣士」だな」


「だろ、俺の自慢の息子にして将来を期待できる剣士だ」


強者から認められるとは少しむず(かゆ)いが正直に嬉しい

だが、現状に甘えてはいけない俺はもっと強くなりたいからな


「よし、ならお前は俺の後ろで火花から顔を守ってくれるこの仮面をつけろ。

それが俺の鍛造オーダーメイドを見る条件だ」


「わかりました‼」


アルフレットはそのまま扉を開け鍛冶の工房から出ていき

俺はドーガが提示した条件に沿い、顔を守る仮面をつけて彼の後ろについた

それを合図にドーガはこの世界特有の鉱石を手に取り、真紅の火が付いた釜戸の中に入れ作業を開始する

何分も鉱石を熱し、それをハンマーのような道具で伸ばし折り曲げ、それを繰り返す

鉱石が打たれるたびに俺の体を震わせる重たい音が部屋を満たし、

度々火花が出る光景に俺は今武器が鍛造オーダーメイドされていることを実感した


何度も何度も、それが繰り返される光景は普通の人には暇な時間に感じられるだろうが剣を握り、

振ったことのある俺には、そんなふざけたことは考えられなかった

そうして考えているといつの間にか数時間が経っており、

ドーガは形になった鋼を水で満たされた鉄の箱の中に入れて鉄を締め上げる

ジュっと水が沸騰(ふっとう)する音が聞こえ、その音は鍛造が終えたことが宣言するようだった


そこからドーガは特殊な研ぎ石で形になった鋼を磨き上げ、作った武器を見せてくれた

それは刀のような片刃ではなく、柄もないスリムな両刃の剣


ドーガは少し笑いながら


「この剣に使われている素材は魔力の伝導率が極めて高い「ネオ・クリスタル」で

その伝導率は驚異の80%だ、すごいだろ」


「確かに数字ではすごいですが、それってどれくらいすごいのですか?」


俺の素朴な疑問にドーガは顎をさすりながら


「通常の剣だったら確か10、良くても20%くらいだな」


そりゃ凄い、60%も伝導率が高いとは

しかも、この剣は一目見ただけでも「業物」とわかる程に完成されていた

正直この魔力伝導率がなくても剣その物の切れ味でも相当の域に達していると思う

鋭く、また美しく、一種の芸術作品とも呼べる武器

それをドーガは仏頂面を少し緩ませながら鞘に納められた剣を俺に差し出してきた


「これは今からお前のものだ、時には修行に、時には窮地に、時には守る者のために

お前の武器はその時共に戦い、道を切り開くだろう」


差し出された剣を俺は小さい手で受け取る

鍛冶師としての仕事を終えたことを確認できたドーガは窓を開け

開かれた窓からはオレンジ色の夕日が差し込む

部屋の明かりがなく暗かったせいか、その光は凄くまぶしく感じた


その光を遮るように手で顔に影を作る俺に鍛冶師ドーガは


「強くなれよ、ラウロ・ソルフリー」


俺はその言葉に


「はい、絶対に今よりもさらに強くなります」


敬語を崩し、そう鍛冶師と剣士の誓いを立てた

手に握った美しい剣は俺の顔を奇麗に映し出し、その美しさに俺の心を見入らせる


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