四話「剣を握る」
あれからさらに半年がたった
あの時より体は見違えるほど鍛えられ、鋼でできた少し横幅が広い短剣を持ち上げれるまでに
before
腕立て伏せ:20回
短剣を持った状態でスクワット:30回
走り込み:2キロ
after
腕立て伏せ:70回
短剣を持った状態でのスクワット:80回
走り込み:7キロ
俺の体は半年前の瘦せてはいないが筋肉はついていない体と違い
全身には満遍なく無駄のない筋肉が付き、体力もあの時と呉べれば段違いだ
今の俺の体なら本物の剣を持つこともある程度できると思う
俺の体を見たアルフレットはこの体なら剣を振ることができると思ったのか木刀を俺に渡してくれた
「ラウロ、今日からは体の鍛錬と共に剣術の訓練もする」
とアルフレットは昔どっかで見た自衛隊の教官のようにそういった
「わかりました、お願いします」
「よし」
アルフレットは「闘神流」の基本的な構え方から剣の振り方を言葉ではなく、
実際に自分の体を使って教えてくれた
俺はアルフレットを見て真似る
そして、本当にこの振り方で合っているのか時々アルフレットに聞く
これを何時間も繰り返した
じっくりと堅実に「闘神流」の型を体に馴染ませるように
気が付いたら夜だった
あたりは暗く、懐中電灯などの明かりがなければ何も見えないほどに
「ラウロ、今日の訓練はここまでだ」
「よくやった」
初めて木刀を握り剣の訓練をした息子にアルフレットはそう言った
父の言葉を聞いて今日の鍛錬の終了を実感した俺は広間から家に戻る前に
俺はアルフレットにとあるお願いをする
「父様、いきなりですが一つお願いを言ってもよろしいですか?」
いきなりの言葉にアルフレットは少し硬直し答えた
「いいぞ」
その言葉を聞いた俺は
「父様が今まで握ってきた本物の剣を持たせてほしいです」
何でそう頼んだのか、それは将来俺が持つ剣の感触を早い段階で知っておきたかったのと
何年も戦ったであろうアルフレットの剣がどういった剣なのか興味がわいたからだ
俺の願いを聞いたアルフレットは汗に濡れた顔の顎に手を当て悩んだ
そして彼が悩んで数分が経ち
「わかった、持つだけだぞ」
と、初めて息子にお願いされたからなのか、その願いを聞いてくれた
その言葉を聞いた俺は
「ありがとうございます」
と一言、感謝の言葉をいった
感謝の言葉を聞いたアルフレットは家に戻り、数秒後
エミリオと使用人たちと共にアルフレットが大きなものを持って出てきた
ただ剣を握るだけなのに、それはまるで選定の剣を抜くアーサーのようだ
そう思っていると
「これが俺が実際に戦う時に使った騎士剣だ」
初めて見た
何度も画面に映っていた何度の鍛え上げられ、戦闘に特化した
あまりに美しい鋼の刃を
その美しさに思わず唾を一回飲み込む
「父様、失礼します」
そういい剣を持つ、アルフレットの剣を持って初めて感じたのは「重さ」だった
確かに鋼でできた剣は重たかったが
それでここまでの重さにはならない
例えるなら大きな鉄球だ
そう感じた俺は再現不可能な重さをしている剣に驚く
この重さがどうやって再現されているのか数秒考え、俺なりの答えが出た
これはアルフレットの「経験の重さ」だ
彼の年はわからないが何年も共に、時には戦場を時には強者と打ち合った経験
本物の剣を初めて握ったバリバリの初心者である俺ですらわかるほどの圧倒的な
その重さを俺は噛みしめてアルフレットに剣を返した
「ありがとうございます」
剣を横にし、片方の手は柄をもう片方の手は刀身を持ちアルフレットに返した
剣を返されたアルフレットは
「どうだった?」
と鋭い顔で一言俺に問う
「すごく重かったです、それこそ手から落ちそうなほどに」
その言葉を聞いたアルフレットは鋭い顔を少し崩し
「ラウロ覚えておけ、それが積み重ねだ」
「積み重さですか」
「でもすごいな、お前は初めて剣を握ったのにそれを感じ取ったんだな」
アルフレットはさっきまでの鋭い顔を崩し嬉しに笑う、
周りにいる母や使用人も少し嬉しそうな顔をしていたが
俺はその顔を見て心の中で「違う」と彼らの考えを否定した
仮にそこらの騎士の剣を持っても、これほどの重さは感じ取れないと思う
けどそのことは言えなかった
無粋だと思ったからだ
そう思っている俺にアルフレットは重たい気持ちを一瞬で緩ませるような笑みで
「家に戻ろう」
その言葉を聞いた俺は家族と共に家の扉を開いた
次の日の朝、庭に出た俺は昨日習った闘神流を振り返りながら木刀を振る
アルフレットの洗練された剣捌きを思い出しながら
何度も、何度も
同じ型を動きを繰り返して、俺の体に染み込ませるよう
その時、庭に出る扉を開けエミリオが木刀を携え庭に出てくる
「おはよう、ラウロ」
「こんな朝早くに剣を振るなんて偉いわね」
エミリオの言葉を聞いた俺はすかさず
「いえ、今よりもっと強くなるためには当然のことです」
当然だ、今の俺はとても弱い
例え相手が初級の剣士といえど、戦えば確実に負ける
そんな俺が強くなるために誰よりも早く庭に出て習ったことを
体に染み込ませるのは当然のことだ
ただ俺の言葉を聞いたエミリオは少し驚いた顔をし
たった一言「ラウロ、避ければ私が使う剣術を習ってみる?」と聞いてきた
突然のことで俺は一瞬思考が停止したが、俺はすぐさま
「よろしくお願いします」と答える
その言葉を合図に俺とエミリオは横に並び互いに構える
昨日の鍛錬同様、俺は彼女に夜桜流の型を教えて貰いながら
分からないことがあったときはその都度エミリオに聞きながら鍛錬をした
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あれから何時間が経っただろうか
気づいたら辺りは朝より太陽の光に照らされ少し熱い
夜桜流の異例な足運びを教えてもらい実践したおかげか、
動きは少し良くなり、些細だが剣が冴えている
どうやら俺は「闘神流」と「夜桜流」が体に合っているらしい
実は2日前くらいに執事のシルバリルに魔道流の初歩の動きを教えてもらったが
少し違和感が残っていた
その点、両親の流派は違和感なく体に染み渡る
練習したらしただけ剣が冴え渡り、強くなっていることを確信できた
俺がそう考えていると彼女が
「少し休憩しましょうか」
その一言と共に俺は木刀を地面に置き少し座る
「母様、夜桜流で大切なことって何ですか?」
座った俺は強くなるために先人の知恵を引き出すことにした
息子の質問にエミリオは
「そうね、足運びや手首の使い方が大事だと思うわ」
「夜桜流って、力がない剣士が技術で相手を圧倒する流派だから
地味な歩法術や攻撃を受け流す技術が重要ね」
「そうですか」
「でしたら母様、少しわがままを言ってもよろしいですか?」
「??、どうしたの?」
「僕に歩法術や攻撃を受け流す技術を教えてほしいのです」
俺のわがままを聞いたエミリオは最初は驚いた顔をしていたが
一気に嬉しそうな顔をして俺が目視で確認できない速度で近づいてきた
その光景に驚く俺をエミリオは無視して
「わかったわ、ラウロ」
「私があなたに夜桜流を徹底的に教えてあげるわ」
その言葉を聞いた俺はすぐさま「ありがとうございます」と彼女に言い
地面に置いていた木刀を強く握り戦闘態勢を取る
それを合図にエミリオと夜桜流の鍛錬をした