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二話「命を懸けた鍛錬 後編」

 体中がボロボロだ。

 ディアン副隊長との攻防を逃げ、森の特に大きい木の下にいる。

 左手の小指と中指が副隊長が使うレイピアによって切断され剣を満足に持てない。

 出血による死亡を回避するために俺は上級治療魔術の詠唱えいしょううたう。


 詠唱と共に魔力を傷に込める。

 俺の練度では欠損の負傷は上級の治療魔術でしか直せない。


ラウロ:「ふうぅ~」


 魔術を発動させ山場を乗り越えた俺は一日を掛け、食料や拠点きょてん設営せつえいできる場所を調べていく。

 どうやら水や食料となる魔獣は沢山たくさんあるが拠点となる安全な所が存在しない。

 森に生息している魔獣は大きく”昼行性ちゅうこうせい”と”夜行性やこうせい”の二つに分かれている。

 朝や昼はれを形成する魔獣が跋扈ばっこし、夜は単体で強い二足歩行の魔獣が歩き回る。

 要するに一日中魔獣が動いているせいで寝ることができないということだ。

 しかもディアン副隊長、俺が森から出れないよう皇帝級の実力がないと突破できない結界けっかいを張りやがった。

 現状を整理すると森からの脱出だっしゅつは不可能、一日中魔獣が徘徊はいかいしているせいで寝ることができない、最後に副隊長がランダムで襲撃してくる。


 まあ何とも最悪な状況だな。

 予想していた以上の状況に億劫おっくうになってしまう。


 あれから五日いつか、合計六日たった。

 毎日ディアン副隊長に襲撃しゅうげきされ設営した拠点ごと俺はズタボロにされた。

 戦いが終わると体中は裂傷れっしょうと骨折だらけ。

 さらに魔獣の襲撃もあいまって、この六日間は地獄だった。

 気付けば着ている戦闘服バトル・クローズは所どころ破れており、魔力不足で眩暈めまいがする。

 

 この鍛錬の本質は”戦場”だ。

 鍛錬では自分のタイミングで休んだり、死ぬことはほとんどない。

 だが戦場は自由に休めないし、死ぬ可能性の方が高い。

 ディアン副隊長は俺がガルディアンに入隊した後に経験することを今させているのだ。


 そうして今日もボロボロの状態で木の上に作った小さい簡易拠点かんいきょてんで寝た。


 七日目の最終日。

 全身が光に照らされる。

 レイピアにまとわれた光の線が俺の体を切り裂く。

 致命傷は何とか避けれたが攻撃事態は防げない。


ディアン:「おいおい、どうしたよ」


 光の斬撃を容赦ようしゃなく放ってくるディアン副隊長が吠える。

 一か月かけて分析した彼の戦闘スタイルを一言でいうと”技術を用いた戦闘”。

 通常、魔力を使用する際は多少なりともロスが発生する。

 100の魔力を使った場合、20か10くらいは無駄になる。

 いくら達人でも5は消費されてしまう。

 だがディアン副隊長にそれがない。

 必要な量を一切のロスなく、あまつさえ10の魔力を極限まで運用し20以上の威力で放ってくる。


 剣技もそうだ。

 彼はレイピアをあり得ない技術で使いこなし。

 鉄だろうと何だろうと強度関係なく切り裂く。

 その光景は前世にあった人気ラノベに登場した、とある”世界最強の剣士”のようだった。


 俺の理想を体現した戦闘スタイルを見て死にそうなのに見惚みほれてしまう。

 欲しい、到達したい。

 今だ届かない境地に手を伸ばすよう必死で剣を振る。


 斜めに振られるレイピアを剣で受け流し、反撃として上段からの一撃を放つ。

 しかし副隊長の流麗な動きで剣は別の方向へ流される。

 予想範囲内。

 流された剣をさやへ納め、つかに手を添える。

 居合いあいの構え。


ラウロ:「”一の太刀”」


 最速の構えからディアン副隊長の首へと最短の距離で剣を振り抜く。

 ”闘神流とうしんりゅう”の基礎きそにして最も速く重要な技。

 さらに俺は剣に雷の魔力を付与することによって威力と速さを上げる。

 今放てる最高の斬撃。

 しかしディアン副隊長からしてみれば...


ディアン「雑」


 たった一言と共にレイピアで受け流され、カウンターで放たれた斬撃が深々《ふかぶか》と胸から腹を切り裂く。

 大量の血が流れる。

 内側から生命に必要な赤い液体が流れる感覚と剣で斬られた激痛が共に意識を襲う。

 ”死”、その言葉が脳裏のうりに過る。


 嫌だ、嫌だ、いやだ。

 前世のように何も残せず、何も掴めなかったゴミみたいな人生にしたくない。

 心の中に渦巻うずまく悪感情。

 それに従うように俺は全身に魔力を込める。

 上位治療魔術の無詠唱発動。

 今までやれずに放置していたことを死の間際まぎわで始める。

 確信がある、この時が俺の今後の強さを左右さゆうすると。


 思い出す、治療魔術を使う感覚を。

 記憶を思い浮かべ、魔力を込める。

 たった数秒の出来事、されど数秒。

 この数秒が命運を分けた。


 深く切られた胸と腹筋は緑色に光り、傷が蒸気じょうきを発して再生する。

 上級治療魔術の成功。

 それによる傷の完全治癒。

 体中の傷が再生したのと同時、俺は意識を覚醒させる。


 剣を握り、体内の魔力を回す。

 ”臨廻りんかい”魔力を体に固める”闘獅とうし”と違い、回すことによって通常の身体強化を大きく上回る”まれ”の技術。

 さらに俺は内側に回している魔力に”雷属性の魔力”を付与する。

 すると全身が発行した。

 雷特有の破裂音はれつおんが耳に木霊する。


 前から可能ではと想像し練習していたが何度も出力をミスって体を爆散させた。

 だが今この瞬間、成功した。

 その事実が俺の心を高揚こうようさせる。


 ディアン:「土壇場どたんばで成長したか、この鍛錬の目的は達成できた」


 彼はそう言いながらも煽るような、子馬鹿こばかにするような笑みで俺に問いを投げかける。


ディアン:「このまま鍛錬を終わるか?」


 その質問に俺は


ラウロ:「いいえ、最後までやりましょう。今はただ新しい技を試したい」


 答えると同時に俺は体を雷に変え副隊長の背後を取る。

 先ほどとは比べ物にならない速度に対応が遅れた副隊長はワンテンポ動きが遅れた。

 隙をとらえた首への一撃。

 普通の戦闘なら俺の勝ちで終わるが相手は化物。

 不意の斬撃をレイピアではじく。

 初めてディアン副隊長は攻撃を受け流すではなく、弾いた。


 この好機こうきは逃せない。

 俺は副隊長に勝つため、闘神流の基本的な構えを取り放つ。


ラウロ:「”蓮華れんか”」


 闘神流の連続斬撃の技。

 それを眼前のディアン副隊長へ容赦ようしゃなく繰り出す。

 雷の速度に到達した俺の斬撃は英雄級の実力者なら何もさせず体をバラバラにさせただろう。

 しかし副隊長の実力は皇帝級。

 俺が放った斬撃すべてを防ぎ切った。

 だが防がれることを予想し思い付きの技を放つため、俺は副隊長へ”とあるものを残す”。


そして...


ラウロ:「溜まり切ったな」


 俺の言葉にディアン副隊長がまゆを寄せると彼めがけ雷の線が放たれる。

 今置いていったものは”雷の属性が付与された魔力”。

 相手の体に雷を蓄積ちくせきさせ、線と線が繋がるように殺人級の雷で敵の体を消し飛ばす前世の人気漫画で見た技。

 今その技を再現した。


 雷の線がディアン副隊長の体に触れると爆発音が鳴り響く。

 完全に入った。

 技が当たったときに感じる特有の感覚がそう確信付ける。

 爆発した場所からは煙が放たれ、副隊長の姿が見えない。

 数秒、けむりが消えるのを待っていると


ディアン:「この数秒でよく成長した。合格だ」


 声が聞こえると彼の周囲に発生していた煙が消える。

 あの圧倒的な強者であるディアン副隊長のレイピアを持っている腕から血が流れていたのだ。


 初めて付けれた傷を見て驚く。

 できないと思っていたことが突然できたことへの驚き。

 その事実が俺の実力が上がったことを自覚させる。


ディアン:「よくやった。ラウロ・ソルフリー」


 純粋じゅんすいめ言葉。

 それを聞いた俺は今まで張りつめていた緊張が一気に解け地面に体を倒してしまう。

 しかしディアン副隊長は倒れる俺の体を無傷の腕で支え


ディアン:「お前はもう”逸脱者”の実力を経た」


 その言葉を聞いたと同時に俺の意識はプツンとひもが切れるように意識が飛んだ。


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