一話「命を懸けた鍛錬 前編」
剣と剣が衝突し火花が生じ、鋼の甲高い音が鼓膜を強く打ち付ける。
相手の攻撃が森の木にあたり跡形もなく破砕。
飛んできた尖った木屑を腕を振るうことで防ぐ。
ディアン副隊長の光を纏った斬撃。
当たれば確実に致命傷になる攻撃を俺は何度も往なす。
ーーーーああ、どうしてこうなったのか。
命を懸けた鍛錬の中、二週間前のことを思い返す。
ーーーーーーーーーーー
治療師:「体の傷は完全に治りました。今までお疲れ様です」
ラウロ:「ありがとうございました」
完全回復を宣言された俺は部屋の扉を開け病室を後にする。
そこからは早かった。
アルフレットたちがいる部屋に行き、ディアン副隊長の指南を受けること。
仮にガルディアンに入隊できた場合、そうでない場合でも”もう家には戻らない”ことを伝えた。
それを聞いたアルフレットは少し寂し気な表情を作り、俺の背中を押してくれた。
エミリオの方はすっごく泣いていたな。
思わず「大丈夫か、この人」と思ってしまうほど泣いて、取り乱していた。
だが、もう後には引かない。
一連の会話を終えた俺は王城を後にし、一週間前ディアン副隊長が病室に置いていった第三市部を記した紙を手に歩く。
公爵貴族の娘が攫われた事件が起きたのに街と市民は何も変わっていない。
雪崩のように市民は街を歩き、その光景はまるで王国が生きているという錯覚を与えてくる。
しかし、困った。
いくら地図を見てもわっかんねぇ~。
前世ではG○ogleマップのナビしか使ったことがないから、紙の地図は読めん。
しょうがないから、近くの人に聞いてみながら手あたり次第探してみることにした。
一時間後...
やっと、第三市部まで行くことができた。
道中何度も逆方向へ行ったりしたが何とかできた。
第三市部は白を貴重とした城のような建物で、その色と相まって少しだけ神秘的に思えてしまう。
しかも建物から発せられる圧倒的な魔力は尋常ではない。
それでも後に引くことは、引く場所はもうない。
漏れ出ている魔力にあてられながら市部の扉を開け中に入る。
周囲をキョロキョロしていると近くにいた女性に声を掛けられた。
女性隊員:「どうなさいましたか?」
ラウロ:「一週間前に体の完治がすんだら来いとディアン副隊長に言われて来ました」
ガルディアンを訪ねた経緯を語ると女性隊員は笑みを作り、手を別の方向へ向け案内を始めた。
途中、すれ違った隊員に”凝視”を使うと魔力保有量が軒並み2000を超えていて驚いた。
ここにいる全員が王国の騎士団をはるかに凌駕している。
”ヤバすぎない”という一言に尽きる。
何分も市部を歩き回ると女性隊員が止まった。
ここに来るまでに見た茶色を主とした扉と違い黄色の塗装がされている豪華な扉。
女性隊員に促されるままドアノブを握り、扉を開ける。
中にいたのは一週間前ガルディアンに勧誘してくれた金色の髪に戦闘服を着ているディアン副隊長ただ一人。
ディアン:「お前が来たということは俺の指南を受けるということでいいか?」
ラウロ:「はい、これからあなたの指南を受けにきました」
彼の問いに率直な答えで返す。
すると、ディアン副隊長は歩き出し扉を開け廊下へ出る。
俺も促されるまま廊下に出て再び歩き移動すると辺りに木刀が掛けられ、地面や壁には魔法陣が書かている部屋。
それを見た俺はここが”鍛錬の間”だということを察する。
同時に扉は閉まり、眼前の強者は腰に携えていた武器を取り出した。
太陽を彷彿とさせる柄と鍔に刀身が細いレイピア。
ディアン副隊長は抜刀したレイピアを構え
ディアン:「今から三週間、お前を徹底的に鍛えてやる」
目の前の男から溢れ出す膨大な魔力と闘気。
死を肌で感じた俺は腰に携えた二振りの片方、”ただの剣”を取り出し構える。
話は戻り、あれから軽く二週間が経過した。
最初の一週間は訛った体を直し、徹底的に魔力操作の技術を叩き付けられた。
そのおかげで技術の難易度”稀”をすべて会得。
さらに”簡”の練度が数段上がり、無意識に使えるようになった。
次の一週間はひたすら実践。
皇帝級の実力があるディアン副隊長は二つの能力を有している。
”魔技極化”、”絶剣練鍛”。
一つ目の能力は名前の通り能力者の”魔力に関する技術を極限まで上げる”能力。
二つ目の能力は”剣の才能”を極限まで上げる能力。
かなり”技術”に特化した能力だが、そのおかげか二週間の間で実力が数段向上した。
能力が能力だからか彼の教え方は物凄く”わかりやすかった”のだ。
ディアン副隊長の言葉が正しければ、たったの二週間で俺は上級の実力から英雄級の上澄みまで上り詰めた。
まあ、魔力の制御ができず体が爆ぜて何度かしっかり死んだが。
正直にいうとすっごく痛かった。
そうして二週間の鍛錬が終わるとディアン副隊長が剣を下ろし
ディアン:「ラウロ、ここまでは正直前座だ。次の一週間でお前が組織に入れるか素養を計る」
ラウロ:「素養を計ると言っても、何をしますか?」
全身傷だらけの俺の質問に彼は「明日になればわかる」という一言だけ残し、どこかへ行ってしまった。
二週間の鍛錬を思い出すと絶対ヤバいことをする。
死ぬことなんて”絶対的な強者”になるために比べれば些事だが、進んで死にたいわけではねえ。
だが、覚悟を決めないといけない。
そして次の日。
俺はディアン副隊長と共に英雄級から逸脱者の魔獣が生息する森に来ていた。
森は強い魔獣がいるせいか濁った魔力が空気を漂い、魔力探知ができてから、これが不快感を生む。
ディアン:「剣を抜け。今からお前を殺す」
途端、ディアン副隊長から肌を刺し、凍てつかせるほどの魔力が迸る。
突然のことで思考が止まりかけるが彼の覇気がそれを許さない。
魔力量:7000億。
魔力の色は光を思わせる金色。
ーーーー魔力性質は”光”か...
相手の情報を瞬時に読み取り整理する。
勝ち目は極めて低い。
数段次元の違う実力者の殺気を受け、全身から冷や汗と震えが出る。
”本能的恐怖”それが頭の中を過る。
だが、”絶対的な強者”という目的のため、ここで引くことはできない。
茨の道を進むと決めたあの日から。
柄に収められている”ただの剣”を抜き放ち、構える。
互いに構え殺意を敵へと放つ。
今ここに命を懸けた鍛錬が幕を開ける。




