三話「剣術について」
剣術や魔術があると知ったあの時から3年が経った
3年前よりも体を鍛えているおかげか筋力もある、だがこの筋力で剣を振るには2年は掛かると思う
そう思った俺はアフルレットに鍛えてもらうことにした
「父様、僕も剣の修業をしたいです」
「え!!、マジで」
いきなりのことでアルフレットは驚いている
それもそうだ、3歳の息子がいきなり剣を習いたいなんて言ってきたら俺も驚く
ただ俺は強くなりたいからそんなことは無視する
「まだ、剣を握るには若すぎるということでしたら体を鍛えたいです」
現役の剣士の下で修行をする、今の俺ができる最も単純な方法だと思う
「ラウロ、お前」
アルフレットは何故か涙ぐんでいた
どうしてだ?
涙ぐむほどなんてどういうことなの?
思考する、何度も頭を回転させ正解を導き出そうとする
ダメだ、いくら考えてもわからなかったので、近くにいたイケメンエルフ執事シルバリルに聞いてみた
「ねえシルバリルさん、何で父様は涙ぐんでいるのですか?」
「坊ちゃま、それはですね」
どうやらアフルレット、いや両親や使用人たちは勘違いしていたようだ
5年前、俺が初めて剣術や魔術を見たあのとき
両親は俺の顔は驚きと興奮に満ちていた感じ取っていたらしい
そこまではよかったんだが、それが自分たちが振っていた剣ではなく
母エミリオが放っていた魔術に向けていた顔だと思っていたとのこと
だから3年前から夜な夜な会議をしてたらしい
「5年後、ラウロには魔術に詳しい教師を雇いその人の下で魔術を学んでほしいと思う」
「そうね、ラウロはあの時剣じゃなくて、魔術に惹かれていたと思うわ」
「でしたら奥様方、5年後に私と夫の方で魔術の教師を雇えるように根回しをしておきます」
「言い方が悪いがお願いするよ」
とのこと
確かに魔術に驚いたけどやめてよね、あの時俺は魔術以上に両親の剣舞を見て興奮したんだぜ
「父様、確かに魔術に驚きはしましたが、それ以上に剣に心惹かれたんです」
「そうか、でもお前あの時のことは覚えていないだろ」
「覚えてますとも」
そこからあの日のことを事細かに話した
「ほ、本当に覚えている、もしかして天才?」
「天才ではありませんが、企業秘密です」
「??、それが何なのかわからんが、まあいいか」
アルフレットは泣きそうな顔から、晴れやかな笑顔に変わった
隣にいるエミリオはアルフレットとは真逆で涙を流していた
嘘だろ‼
エミリオが泣いていることに気付いたアルフレットは慌ててエミリオを落ち着かせると一言
「わかった、お前を鍛え剣を教えよう」
「やったー、父様大好き」
「よしラウロ、剣を買おう」
「「「こら」」」
息子に好きと言われたアルフレットは嬉しさのあまり剣を買おうとするが
エミリオや使用人たちに止められてしまう
そしてメイドのレリアが
「ラウロ様の言うとおり、まずは体を鍛える方が先だと思いますが」
とあまりに冷静で的確な一言をアルフレットに言う
「おっと、そうだな」
「よし、ラウロ剣術の知識は教えるが最初はお前の言う通り体を鍛えよう」
メイドの冷静で的確な意見を飲んだアルフレットは俺にそう言う
「わかりました」
俺のこの一言で会話が終えると、俺はアルフレットと共に体を鍛え始めた
今日の鍛錬
腕立て伏せ:20回
短剣を持った状態でスクワット:30回
走り込み:2キロ
鍛錬を終えると全身が痛い
ズタズタな筋肉、動かすたびに鈍器で殴られたような鋭い痛みが意識を打ち付ける
3年間、剣を触れるように鍛えていたが甘かった
自分の意識の甘さに怒りを感じるのと同時に嬉しさがある
だって、俺は自分の体をもっと追い込めると証明できたから
それがわかっただけでも今日の鍛錬はズタズタな筋肉以上の成果が得られてと言えるだろう
そう思っていると
「よしラウロ、お前はここまでだ」
「わかりました」
「お‼素直だな」
もっと食いつくと思ったのか、アルフレットは俺の予想外の返答に驚いていた
俺は驚いているアルフレットに
「もっとやりたいですが、ここで体を壊したらそれこそ目も当てられません」
「そうだな、冷静でいいことだ」
「なら、後で剣術について教えてやるよ」
その言葉を聞いた俺は「やっと剣術について知れる」と思い
嬉しさのあまり大声で「ありがとうございます‼」と言ってしまった
少し恥ずかしい
だが、アルフレットは満面の笑みで俺を見送る
家の中に入るとレリアが「ラウロ様、お風呂を沸かしましたのでどうですか?」と言ってくる
汗もいっぱい出たし俺はレリアの言葉に甘えた
「わかりました、お風呂ありがとうございます」
そういい俺は風呂が沸かしてある部屋に行く
そこには裸のエミリオがいた
前世では一人でふろに入っていたから俺は心の中で盛大に驚く
なんでエミリオがいるんだ
頭の中でぐるぐると考えていると当然のことに気がついた
俺は3歳のガキだったことに
そう思うと彼女がこの部屋にいるのは普通だと思い、そのまま俺は服を脱いだ
服を脱ぐ途中エミリオがアルフレットとの鍛錬について聞いてくる
「ラウロ、主人との鍛錬道だったの?」
「体を限界まで鍛えれて楽しかったです」
嘘のない純粋な答えにエミリオは衝撃な一言を俺に行ってくる
「私はね、本当はあなたに剣を持ってほしくないと思っていたの」
「どうしてですか?」
暖かい水で俺の体を拭きながらエミリオは答える
美人な顔を少し曇らせて
「剣っていうのは危ないのよ」
「当たれば体は切れてそこから血が流れたり、最悪死んでしまう」
「そんな道にあなたを進ませたくなかったの」
エミリオの言うことは正しい、剣は所詮誰かを斬る道具で自分の息子にはそういった道を進ませたくない
正しい、正しいが一つ彼女の考えには抜けがある
「そうですか」
「ですが、剣は奪うばかりではないと思います」
そうだ、あの時剣は俺に「輝き」を与えてくれた
前世で何もできなかった俺に与えてくれた輝き
今母の言葉を受け入れたら、俺はあの時の決意を輝きを自分で否定することになる
ーーーそれはだめだ
あの決意は本物だ
前世で人に振り回されて、人生に希望を見いだせなかった俺の数少ない決意なのだから
「剣は確かに人を傷つけてしまうかもしれません、ですがその剣で大切な人を守ることだってできると思います」
「母様もそうだったのではないのですか?」
「っ‼、そうね」
俺の言葉を聞いたエミリオは少し驚いたが、すぐにその顔を微笑みに変えた
「私も誰かを守るために剣を振るっていたわね」
エミリオはどこか遠くの、まるで過去を振り返るような顔をしてそういった
そして彼女は過去を振り返るような顔から一気に真剣な顔に変え
「私と約束をしてほしいの」
と突然エミリオは俺にそういってくる
「約束ですか?」
その言葉を言われた俺は頭に疑問符を思い浮かべながら、その一言をエミリオに言う
「ええ、たとえいくら傷ついて挫けそうになっても、大切なもののために剣を振るうって」
その言葉は剣を握る者たちの誰もが心に刻む約束だった
それが悪でも、正義でも
「わかりました、約束します」
真剣な彼女に心の底からそう答えた
俺は軽く約束を取り付ける奴が嫌いだ、だって約束とは本来物凄く重たく、重視しないといけないものだから
それを軽く、あまつさえ地面に落ちている埃のように取り付けるなんてもってのほかだ
だから、エミリオの真剣な顔から出た約束を俺は嘘偽りなく、心の奥底から答えた
「僕はどんな時でも大切なもののために剣を振るいます」
その言葉を聞いた彼女は一寸の後悔の無いどこか安堵した顔で
「ありがとう」
最も相手に伝わる感謝の言葉
その日の夜、俺はアルフレットとエミリオに剣術について教えてもらった
まず剣術には大きく四つの流派がある
次元闘神流:剣や素手での攻撃的な戦闘を繰り広げる流派
剣とは言ったが人によってはナイフなどを装備するらしいから
古武術に近い流派なのだろう
夜桜心眼流:剣を使い主に居合やカウンターを使い、軽やかな足運びで戦闘をする流派
この流派は前世でいうところの「柳生新陰流」だと思られる
魔道流:魔術と併用して戦う流派
剣に魔法を宿らせ火の斬撃を飛ばしたりするらしい
歪曲流:特殊な武器を使った読めない戦闘をする流派
アルフレット曰く、化物みたいに強い剣士は大体この流派を習っている確率が高いとか
ちなみにアルフレットは次元闘神流を、エミリオは夜桜心眼流を習っているらしい
それと、この世界には強さを表す指標みたいなやつがあるとのこと
下から
初級→中級→上級→英雄級→逸脱者→皇帝級→神話級
というのがある
これは剣術だけでなく魔術や本人の強さもこの指標で測られるらしい
ちなみにアルフレットとエミリオは逸脱者とのこと
それを聞いた俺は心の中で「スッゲエ~」と感心した
実際どれくらい強いのかわからないけど、上から三つ目だぜ
俺はそう思いながらふと俺より身長が高いアルフレットを下から見上げる
そこには自信満々というか「どうだ、すごいだろ」と自慢している顔をしたアルフレットがいた
その顔を見た俺は「これも父心なのかな?」と思いながら「すごいです」と言ったが
いかんせん、この強さの指標がわからない
いや、上の方になれば名前的にもこれくらい強いんだろうと感じれるのだが
初級から逸脱者までの強さの基準が謎だ
「ねえ母様、初級から逸脱者までの違いが判らないのですが?」
その言葉を聞いたエミリオは
「そうね、初級は一般人よりかは強いわね」
そこから、彼女はスラスラと初級から逸脱者までの強さの違いを教えてくれた
中級の強さはある程度の大きさの大岩を剣で奇麗に真っ二つにでき、拳で粉砕することができるらしい
上級の場合は風より速く走れて、崖とかによくある人何十人分の大きさもある岩を斬り粉砕できる
英雄級の強さは上級5人分の強さとのこと、多分戦闘機より強いと思う
逸脱者は人によるが英雄級より、はるかに強いとのこと
それを聞いた俺は心の中で「上級5人より強いということは現代兵器は全く効かないということかな?」と思った
そして皇帝級の実力は両親でもわからないらしい
「父様と母様は皇帝級の人たちに合ったことはないのですか?」
それを聞いたアルフレットは
「会ったことはあるが、強さの次元が違いすぎてわからなかったんだ」
エミリオも
「私も何度かあったことはあるけど、主人と同じであの人たち強すぎてわからなかったのよね」
それを聞いた俺は興奮した
この世界の実力の高さに、そして思った俺もそれくらい強くなりたいと
「ただ、皇帝級の人たちは国の王様になっていることが多いぞ」
満面な笑みでアルフレットがそういった
それを聞いた俺は「ということは皇帝級の実力を持った人たちに会いたいなら謁見をしたらいいのか」
と至極単純な答えを俺は導き出した
そして話しているうちにまた新しい疑問がわいたのでエミリオに聞いてみる
「そういえば、母様たちはどうやって自分の実力が逸脱者だと知ったのですか?」
息子にそう聞かれたエミリオは少し恥ずかしそうに
「少し野蛮だけど、私と同じ戦い方をする逸脱者に戦いを申し込んで、一騎打ちで倒したのよ」
それを聞いた俺は心の中で「え‼」と思った
いつもお淑やかなエミリオの口からそんな戦闘狂のような言葉が出たからだ
隣にいたアルフレットも
「エミリオの言うとおり、俺もそうやって逸脱者の実力があるって知れたな」
そうかここは中世だ
この世界において自分たちの実力を知る方法はそれしかないのか
現代に染まり切っていた俺の脳を改め、考えを中世に切り替える
そして俺はまず最初に上級レベルの剣士になろう決めた