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二話「決意」

理由はわからないが、どうやら俺は異世界に転生してしまったようだ

偶然なのか、それとも誰かが仕組んだことなのか?

それはわからない

というか考えても仕方がない、だって答えはやった奴じゃないとわからないから


ーーーにしても動けない


まあ、生まれたばっかだから当然か

これは時間が経てば解決するが、もう一つの問題がヤバい

致命的と言ってもいい


ーーー言語がわからない


まるで高校時代、同じクラスメイトがポルトガル語を話していた

その時聞いた言語に近い

今後の課題は「言語の習得」だな


言葉がわからないというだけで、生存率が大きく変わる

なぜなら、本来得られる情報が言語がわからないというだけで全て取りこぼすからだ

わからない世界でそうなった場合、最悪の末路をたどるかもしれない




ーーーーーーーーーーーーー




あれから半年がたった


生まれたての時よりはマシだが、はやり体が動かしずらい

それと、ある程度この世界の言語がわかるようになってきた

両親とよくわからない人たちの日頃の会話や本の読み聞かせで徐々にだ

昔、英語を上達するには単語帳や教材で勉強をするより

海外の映画などで日常的に英語を聞いている方が英語力が付くと聞いたことがある

この体が赤子ということもあるが、多分それだろう


言語がわかるようになって、いくつかこの世界についてわかるようになった

まず、この世界の技術力と文化は異世界転生のオーソドックスと言える「中世」だ

最初はただこの家が他より古臭いだけだと思ったが、どうやらそうではないらしい

実際、ここ半年で両親に何度か外に連れられ、他の人たちと顔合わせをしたとき

何度か相手の家を覗いたが俺の家と大して変わらなかった


しかし、現代人に中世で暮らせとはそれだけでも億劫になる

おっと、そういえば俺の異世界での両親を紹介するのを忘れていた

言語がわかるようになってわかったが俺の名前は「ラウロ・ソルフリー」というらしく

父親の名前はアルフレット・ソルフリー、母の名前はエミリオ・ソルフリー

どうやら俺の家の家名は「ソルフリー」というらしい


中世で下の名前があるとは珍しい

俺の家は貴族なのかな?

まあ、そんなことはどうでもいいか


それと、俺の家にはメイドと執事がいる

メイドの方がレリア・アッヘンバウム、執事の方がシルバリル・アッヘンバウム

両方とも見た目はみんなが思い浮かべるようなメイド執事って感じだ


ーーーにしても名前がカッコイイな


これも中世の醍醐味(だいごみ)というのかね

だが、この世界をいくら分かっても以前体は動かしずらい

空いている扉を少しずらすとかは全くできないほどに


ーーーくそ、なんて不便な


仕方ないが、それでも少しイラっとする

いや、正確にはムズムズすると言った方が正しいのかな?

例えるなら、裁縫(さいほう)をするときに針に糸が通らないときに感じるムズムズだ

でも、毎日歩けばそこそこ鍛えられるだろう


そう思って、さらに半年


半年前に比べると倍以上体を動かせるようになった

イスは登れるし、空いた扉をずらすこともできる

このムズムズ感が取れたことに俺は心の中でガッツポーズをした


そう思っていると、ふと玄関の扉を見る

扉は少しずれていて、今の俺ならこの扉をずらして外の景色を確認できる

周りにはメイドや執事はいない、俺は少しの好奇心で空いていた扉をさらに置くへずらす

そこには、アルフレットとエミリオが互いに木刀を打ち合い、時にはエミリオが炎を放つ

その太刀筋(たちすじ)や動きは洗礼されていて、それは彼らの整った顔以上に芸術的に見える程だ


俺は両親の洗礼された、あまりに美しい戦いに少し慄いた

両親は互いに全力で撃ち合っていたのに俺のほんのわずかな動きを察知し振っていた剣を止める

俺の姿を見た父アルフレットは驚き、母エミリオは本当に謎だが叫んでいた

エミリオが叫んだ瞬間、確かに驚いていたアルフレットだが

一瞬で俺との間合いを詰め、この赤子の体を抱きかかえる


ーーーマジか‼


明らかに人間の動きを超越した動きに、たった一言心の中でそう思った

そして気付いた、この世界はただの異世界ではない

剣や魔術がある王道の異世界だと




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




俺はほかの人より運がなかった

正確に言うと運がないというよりは恵まれなかったというべきか

最初は普通の赤子として地球の日本に生まれた


ただ、父親は俺を母にはらませる前からギャンブル依存で色んな所から借金をし

母はそのことを知らず結婚し俺を生んだ

借金の額は○千万円あったらしく、母はそれを返すために毎日休まず働いたらしい

父親の方は飲んだくれパチ屋に行き遊びつつ出ていたとのこと

働きすぎた母は痩せこけ疲れ切り

父親は違う女性と浮気をし、それに愛想をつかした母は離婚をした

しかし、母はこの件でノイローゼになり俺を「育てられない」という理由から

当時小学生だった俺を児童養護施設に預けた


俺はそこで3年間過ごすことに

普通の人なら「育てられない」という理由で、施設に送られて

「許せない」と思うのが一般的なのかもしれない

だが、俺にはこれが合っていた


そして、3年後親に引き取られる日

俺は「もう二度とこの人たちと会えない」と思いながら施設を出た


イイことか悪いことかはわからないが

俺はこの時価値観が凝り固まった


引き取られて半年、母や酒によって帰ってきたとき

いきなり殴られたのだ

理由は誰もが聞いても心底うんざりする理由で

何度も蹴られ殴られ、罵倒(ばとう)された


酔いがさめた母は第一声「私を怒らせたお前が悪い」と笑いながら言ってきたことを覚えている

小学生だった俺は親がそういうならそれが正しいと思い何の疑いも持たなかった

そこからさらに何年か時がたち俺が小学校を卒業するとき、ふと思ったのだ

「俺の人生はずっと誰かに振り回されているのでは」と

誰かのせいにしたいから思ったのではない、本当にふと

算数の分からない式の解き方が理由もなく()き出てくるかのように


そう思った時ある動画を見た、その動画はゆっくりを使いオリジナルのストーリーを動画に出している

要は「茶番劇」だ

そこに出てきたとあるキャラの一言「この世は力、力がない奴がすべて悪い」というたった一言のセリフで俺の人生に激薬が落ちた


俺はその言葉が正しいと、力があれば誰にも振り回されないと思い

財力という力を得るためにお金の勉強を

戦闘力という名の力を得るために限界までトレーニングをした

そこから何年か経ち学生を卒業し就職をした後

ブラック企業で働いているサラリーマンの自殺の巻き添えで死んだ


俺は何も為せず、ただゴミのように

だから嬉しかった

人生をやり直し、尚且つ(なおかつ)剣術や魔法がある異世界に転生できたことを

そして今度こそは、前世のように何も為せず人に振り回される人生を歩まないように

剣術や魔法があると思われるこの世界で

前世のような力がなかった弱者の人生とは違うように生きようと


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