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【本編完結】ワケあり事務官?は、堅物騎士団長に徹底的に溺愛されている  作者: 卯崎瑛珠
第四章 別離?? 決意!? 溺愛!!

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「ぶは!」

 

 ヨナターンがレナートを見舞いに訪れてくれた。残念ながらレナートは深く眠っていて話せず、その代わりに私が毎日一緒に寝たいのと言ったら、盛大に吹かれた。

 

「で、殿下? 俺は何を聞かされてるんです?」

「だって、レナート様が、ヨナさんに説明をって!」

「ぶははは! なるほど、クックック」

 

 ばしばしと自分の膝を叩きながら笑う海軍大将と、なぜか微笑ましい顔でこちらを見ているブルザーク帝国の軍人たちに、私は戸惑いを隠せない。

 

「おっほん。分かりました」

「え! 良いの!?」

「良いも何も……あー、ちょっと後でレナート殿と話します」

「叱らないで。私がお願いしたの」

「大丈夫ですよ。事情はヤンからも聞いてます」

「うん……斬首案件て言ってた」

「ぶっ」


 ごん!

 

「ってえ!」

「えっ!?」


 音と声に驚いて振り向くと、アルカイックスマイルで拳を握りしめるオリヴェルと、頭を抱えてしゃがんでいるヤン。


「お気になさらず」


 そう言うオリヴェルの笑顔がなんか、怖い!


「ん、……ん?」

「うお、起こしちまったか」

「! これ、は、閣下……わざわざすみませ……」


 目覚めたレナートが、上体を起こす。

 その様子を見て、かなり力が戻ってきたのは分かった。

 

「いい、いい! 寝てろ!」

「いえ。オリヴェル殿のお陰ですっかり良くなりました。ありがとうございました」

「そうかぁ? まあ、顔色は良くなったな。包帯も取れたな。うん」

「閣下、それ完全にお父さんのやつっすよ」


 ごん!


「あいたあ!」

 

 ヤン、涙目!

 今度は私、思いっきり笑っちゃった。

 すると、控えめなノック音がした。

 

「はい?」

 ささ、とオリヴェルが扉を開けてくれ――


「レナート!」


 起きているレナートを見て、涙目(こちらは、感動の方)の銀狐が走ってきた。


「ロラン」

「ああ、起きれたんだね、良かった……心配したよ」

「もう大丈夫だ」

「良かった! そのガーゼ、痛々しいけどね!」

「そうか?」


 包帯の代わりに、頬にはまだガーゼを貼られている。

 

「ロランが来たならちょうど良い。レナートが倒れた後のことを話したいのだが、大丈夫か」

「! 是非お願いしたい」

 

 ベッドの側にヨナターンが座り、その両隣にロラン、そしてボジェクが立つ。

 私はヤンとオリヴェルと一緒に、三人掛けソファに腰かけた。少し遠いけれど、話し声は問題なく聞こえてきてホッとする。


「まず、酸をかけられたクレイグは……今朝死んだ」

「そうですか」

「色々聞き出したかったんだけどなあ。だめだった」


 それから、ヨナターンが話してくれたのは。


 メレランド国王シミオンは、自分の左手にも毒を受けて、失った。痛みからかなんなのか、それ以降は「余は悪くない! 兄者が悪い!」しか話さなくなったのだそうだ。まるでこどものようだぞ、とヨナターンが溜息をつき、ロランも同意するように頷く。

 仕方がないので、アルソス王宮の奥で幽閉することになったそうだ。


 王妃はもともとアルソス国王を慕っていたのに、シミオンに見初められて無理矢理嫁がされたらしい。物静かな人で、王女を連れて修道院へ行きたいと言っているそうだ。王女のことも、父親に似ているので全く愛せず、放置してしまっていた。こうなった以上、親としての責任を取りたいと申し出たというのが、切ない。

 ちなみに王女はぎゃあぎゃあ騒いでいるので、自室に監禁しているのだとか。

 

 メレランドは、国王の病を理由に、一時アルソス王太子ナルシスの直轄領になる(書類上、もうなったらしい)。

 賭け事によって背負わされた王国民の借金については、地方の屯所(とんしょ)へ届け出れば不問とする。不正に騎士となった人間たちは、レナートと私がまとめた名簿を精査の上、適宜解雇。その代わり、一定期間の生活保障金を支給する。

 職人たちへの支払いは、請求に基づいてアルソス王国が補填。

 などなど、アルソス国王が予め準備していたであろう通達を、王宮役人たちが次々とさばいているところなのだそう。

 

 落ち着いたら、適した領主を見つけて割譲(かつじょう)するか、下賜(かし)するかになるそうだ。


 首謀である国王とクレイグがこうなった以上、事の真相を知っているのはボイドのみ。

 だが、騎士団管轄の牢獄に収監されている彼は、未だ沈黙を貫いている。レナートの体調が回復次第、改めて聴取することになっているそうだ。


「だからまあ、帝国としては不完全燃焼だなあ~」

 ヨナターンが伸びをしながら言うと

「そうでしょうね」

 レナートが同意する。

「これ以上は越権行為すぎんぜえ」

「ですが、その方が良い。アルソスのためにも、メレランドのためにも。帝国が来て牛耳り、王国が直轄領になったなどとは」

「……民の矜持(きょうじ)が許さねえよな。分かる。ま、その代わりきっちり取り立てしていくぜ?」

 

 ヨナターンが唐突に振り返って、私にぱちり! と盛大なウインクをした。

 

 ――ぞぞぞぞ!

 

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