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【本編完結】ワケあり事務官?は、堅物騎士団長に徹底的に溺愛されている  作者: 卯崎瑛珠
第四章 別離?? 決意!? 溺愛!!

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 ぎゅ、とルイスが目をつぶり、(こうべ)を垂れる。


「え? 私が決めるんですか!? じゃあえっと……これから、仲良くしましょう!」


 ルイス、口をあんぐり開けた。ちょっと可愛い。

 

「は?」


 私は、ルイスの剣だこまみれの手を、両手でギュッと握った。


「ルイスさん、ギリギリのところで私を救おうと努力してくれました。お家と妹さんのこともあって、すごく怖かったと思います」

「だがっ」

「それに! 私、ボイドに絡まれて怖い思いをしたんですけれど、一番隊の皆さんが、さりげなく守ってくれるようになったんです。ヤンさんかな? て勝手に思ってたけど……隊の皆さんに指示してくれたの、ルイスさんだったんですね? 今、確信しました」

「っっ……私は……何とか……どうにかしたくて……」

「はい。すごく素敵な騎士だと思います! ほんと、お手本みたい! だから、この騎士団に、なくてはならない人なんです」

「っ!」

「キーラの言う通りだ。貴様は、騎士として模範となれる人物だと俺も思う」

「団長……」

「僕も。ルイスには頼りっぱなしだからさ。いなくなっちゃったら、困る」

「副団長……」

「そっすよー。この騎士団が辛うじて形になってたの、隊長のお陰っすからね」

「ヤン……」


 ルイスが、両目から滝のように涙を流すから、私はたまらなくなって。


「もう大丈夫ですよ。苦しかったですね。悪い役人も、ボイドも、捕まりましたから。今日アルソスの国王陛下が来て、全部正すそうですから」


 言いながら、強く抱きしめた。

 

「そ、れは、ほ、ほんとうか」

「はい! もう、大丈夫です!」

「あ、あ、良かった、良かったあぁ……ああああぁ……」


 私も、涙があふれて止まらなくなった。

 ――そして、ますます許せなくなった。


「絶対許さない」


 思わず言ったら、

「絶対に、許さん」

「報いを受けさせる」

「全力で、やりましょう」

 レナートもロランもヤンも頷いた。


「さあルイス。今日は忙しいぞ。がんばれるか?」


 レナートが、その肩を優しくぽんと叩く。


「帝国海軍に恥を晒す前にと考えて、罰を受けに来たんだろう? キーラと仲良くすれば許されるのなら、予定通り任務に戻ればいい。どうだ?」

「ふは、そんなに話す団長を、初めて見ました」

 私から身体を離して、涙を手の甲でぬぐって、ルイスが笑う。

「ありがたく。顔を洗ってから、戻ります」

「うむ」

「そうだ、待ってレナート! その前にキーラのこと、ルイスには申し送りした方が良いんじゃない? 警護のこともあるし」

「ああそうか……」


 私は、ハンカチを差し出しながら、隊長には言っておいた方が良いのか、と悟る。


「キーラ嬢が、なにか?」


 ルイスがハグから離れ、ハンカチで顔を拭いながら首を傾げた。

 憑き物が落ちたみたいにさっぱりしている。良かったね、と思ったのに。

 

 ロランが説明したら、

「ブルザーク帝国皇帝の妹君……?」

 また死にそうになっちゃった!


「ごごご、御無礼を……!」

「ちが! あの! 私が勝手に抱きつきましたし!」

「いやしかし」


 ひたすら恐縮するルイスに、ロランが

「大丈夫だよルイス。僕もハグしたし、レナートなんか毎日一緒にね」

「わー!」

「ッロラン!」


 私とレナートが慌てたら、ヤンがのほほんと

「あーそれ、斬首案件っすねー」

 と言い、

「そ、そうか、言われてみればそう、だな……」

 レナートがまともに受け止める。


 ――悲壮感!

 

「レナートの命って、いつまで?」


 ロランは、悪ノリがすぎるよ!


「あの……私はどうしたら……」


 あ、ルイスが死んじゃう!


「おいおい、一体どうした……」


 気づいたら、背後に海軍大将ヨナターンのご登場です。あ、これルイスのトドメ刺しちゃう。


「ヨナさん」

「遅いから、その辺のに案内してもらったんだが、また取り込み中か?」

「いえ、今終わったところです、閣下」

「ヨナってそういうとこあるよね」

「あー、確かに」

「!?!?」

「ルイスさん!」

「「「あ」」」


 ふらあ〜と気絶したルイスを受け止めようとして、でもやっぱり重さに耐えきれず、私は床にべしゃりと……ならなかった。


「キーラ、大丈夫か」


 ルイスごと両腕で抱きとめてくれたレナートの、優しい瞳が間近にあって、やっぱり大好きだなと思った。


 ――その隈は、私のせい? ごめんなさい、私、変だ。悩ませたのが嬉しくて、ごめんなさい。



「あー……なるほど」

「ね、ヨナ。僕が言った通りでしょ」

「あんなん離したら、自分が殺されますって」


 そんな三人の背後に。

 

「えーっとあの、俺らっていつ紹介してもらえるんかね」

「待っていましょう、ボジェク様」

「オリヴェルって我慢強ぇ……」

「ヤンといれば、そうなれますよ」

「ちげえねえ! はー、陛下の妹君、可愛いな」

「……」


 嵐の前触れが、来ていた。

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