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【本編完結】ワケあり事務官?は、堅物騎士団長に徹底的に溺愛されている  作者: 卯崎瑛珠
第三章 疑惑!? 騒動! 解決!!

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「書類、レナート様の、黒引き出しの中に入れました」

「ああ分かった。ありがとう」


 夜も()けた、タウンハウスにて。

 皆でダイニングに集まっていたので、軽い夜食のスープを用意する前に、大事な書類を安全な場所に置いてきた。


「え、キーラあのさ」

 ロランが目を丸くしている。

「はい」

「レナートの部屋、良く分かってる感じ……?」

「? はい」


 スープを皿に入れてそれぞれの前に置きながら言うと、ロランとヤンがぽかんとした。

 

「えっと……自分、いま、もんのすごいアレな想像しちゃったんすけど」

「ぐうぜん! ぼくも!」

 

  二人とも、言葉がおかしいよ?

 とりあえず、スープどうぞ?


「あの……レナート様のお部屋で一緒に寝てるだけですよ」

「一緒に……?」

 ロランが唖然として、

「寝てる……?」

 ヤンも同じ顔をした。

「うおっほん。念のため言っておくが、二人が思うようなことは、一切何も無い」


 レナートが上品な仕草で、スープを飲み終えてから発言しても、ロランとヤンは動かない。

 

「キーラ……ヤンに言って良かったのか?」

「? はい」

「そ……か」


 あ、レナートの眉間、少し緩んだ。

 

「変なレナート様。あ! 今日のナイトティーはですね、ハーブの香りの……」


 忘れないうちに伝えたかったのに、ロランが遮る。

 

「ちょおー! まってまって。置いてかないで。え? 待って。ふたり、一緒に寝てるの?」

「私がお願いしただけです――夜が、怖くて」


 しばらくの沈黙。そして。

 

「なっ、るほど、つまりは警護上でという理解で良いですか?」


 ヤンがようやく呼吸できた、みたいな顔をして言った。

 でも、警護上だけというわけでもないから。

 

「私のワガママです。レナート様の隣が安心するので」

「ごほん。つまりキーラの安心のためだ」

「いや、あのさあレナート、そんなエッヘンみたいな顔してるけど……理性すごいね。尊敬した」

「うぐ」

「ほんとっすよ! 自分なら確実に無理っす! とっくにやっ」

「ヤン!」

「やべっ! さーせんっ!」


 ちょっと男性陣が、何を話しているのかわからない。

 

「あの……?」

「見ろ、この目だぞ!」

「「うわ、辛い」」

「そうだろう」


 はああ~、とレナートの溜息が深い。


「お疲れ様」

「すげーっす! 尊敬します!」

「ありがとう」

「えっあの?」


 ロランがニコニコしている。

 

「男の話だから、気にしなくて良いよキーラ。今日は、僕かヤンでどう?」

「はあ……え?」

「一緒に寝るの」


 ロランの言葉に、レナートもヤンも目を見開いている。

 

「嫌ですけど」

「うわ、即答! 二人して一瞬で振られた!」

「勝手に巻き込むのやめてくださいよぉ~」

「だってさあ」

「おい、いい加減本題に」

「またまたー! レナート嬉しい? 嬉しいでしょ? ね? ね?」

「うぐ」


 なんか、楽しそうですね? でも、止めます。

 パンッ! と大きく手を叩きます。

 

「相談! ちゃんとしましょう!」

「「「はい」」」

 

 アーチーが見つからないまま四日が過ぎ、帝国要人が来る日まで、三日を切っていた。


「もし大掛かりなことを計画しているのなら、そろそろだと思うのです」


 ロランが、いつものように即座に化けの皮をかぶった。――毎回器用だなあ。

 

「僕もそう思う。お偉いさんはもうメレランド国内を移動中だからね」


 レナートが、無言で心配そうな目をロランに向けた。

 それに応えるように、ロランは続ける。


「僕にはまだ言えない情報がある。キーラ。どうか、僕を恨まないで」

「え?」


 ヤンが、なぜかびくりと肩を波打たせた。


「いつだったかの、機密文書を覚えている?」

「あ! はい。外交上の、と仰っていましたね」

「うんそう。あれはブルザーク帝国から来た通知なんだ。中身については、()()()()言えないけど」

「私はただの事務官ですから。知らなくても」

「……うん。でもこれだけは信じて欲しい。レナートも僕もヤンも、キーラを大切に思っている」

「急に、何を? あの、大事な情報を全て言って欲しいわけではないですよ? ただ、備えたくて」

「分かっているよ。でも、忘れないで。僕たちは、()()()()()が好きなんだ。ね?」

「? はい、ありがとうございます」

「良かった。それだけは、絶対に覚えておいてね」


 そう言って微笑むロランの顔にどこか憂いを感じて、とても美しいと思った。


「さーて。じゃあ、この半年で僕が掴んだ情報を暴露する! 覚悟は良い?」

「ひえっ!」

「あ、自分もわずかですが」

「ヤンまで?」

「俺が持っている情報と合わせると、見えてきそうだな。この際全部吐き出して整理して、対策を練ろう」

「はい、レナート様! さすがです!」

「んん。ありがとう」

「「イチャイチャ」」

「してませんし!」

 


 ――私は、とりあえずお皿を片付けて、お茶の用意をしにキッチンへと向かった。

 長い話に備えて、焼き菓子も出して、それから冷えるからブランケットも持っていこうかな。


 

「キーラ、一人になるな。危ない」

「レナート様、ありがとうございます」


 ここ、家の中なのに。過保護だなあ。


「ごほん。心配なのだ」

「ふふ。はい」


 ――あなたに出会えて、本当によかった。

 

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