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【本編完結】ワケあり事務官?は、堅物騎士団長に徹底的に溺愛されている  作者: 卯崎瑛珠
第二章 誤解!? 確信! 仕事!!

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 再びの、団長室。

 傾く日の光が、オレンジ色に壁を焼いている。

 

 ヤンがレナートに先ほどの顛末を報告すると、レナートは

「……はあ」

 額に手を当てて、盛大に溜息をついた。


 しばらく考えてから、顔を上げる。

 

「幸い今は討伐任務も少ない。ヤンは明日から団長付け事務官見習いとする。ルイスには言っておく」


 ヤンが、踵を鳴らしてから、騎士礼をする。

 

「は! 事務苦手ですが、精いっぱい勤めさせて頂きます。キーラ、色々教えてくれな~」

「え? ……え?」

「というわけだ。しばらく、二人で事務を行ってくれ」

 

 ヤンが、事務官見習い? なんで?


「キーラは、タウンハウスからの通いになるんだが」

「それは……うーん」

「ヤンも、うちに住み込んでくれるか。部屋ならある」

「……はあ。ですねえ。洗濯は得意ですよ」

「それは助かる」

「え? え? はいー?」


 私の頭の中は、疑問符だらけだった。

 でもそれを置き去りに、どんどん話が進んでいく。


「ルイスに話をするから、先に帰ってくれるか。ヤン、鍵を。タウンハウスの場所はここだ」


 話しながらレナートはさらさらとペンを動かして、紙と鍵を一緒にヤンへ手渡す。

 

「は。確かに受け取りました」

「えーっと?」

「夕食は……いつ帰れるか分からん。二人で取ってくれ。食事代はのちほど経費申請していい」

「お言葉に甘えて。キーラ、荷物はこれかな? とりあえず行こう」

「はい……あの、お先に失礼します……」

「ご苦労」


 ばたり、と団長室から出た私は、ヤンの横顔を見上げる。


「私、なにかまずいこと、しちゃった?」

「うーん」

「……ごめんなさい」

「あー違うよ。団長はさ、キーラを守りたいのさ。せっかく来てくれたんだし」

「私が、弱いから」

「違う、違う!」

 

 ヤンが笑う。


「普通なら、こんな護衛つけるみたいなこと、しなくていいんだって」

「やっぱり! 護衛ですよね」

「うん。そのぐらいここが、()()だってこと」

「!」

「そしてそれを、団長は力技で正そうとしてるんだ。だから危険だって判断しただけだよ」


 ロランとわざと不仲なフリをしているのも、きっとそれに関係あるんだね……

 

「私……足引っ張っていないですか?」


 なんだかまた、泣きたくなってきた。

 

「そんなわけないよ」

「私でも力に、なれますか?」

「なれるよ! だから団長はこうして気にかけてくれるんでしょ?」

「そう、ですかね……あ! もしかしてヤンさんも、どこからか呼ばれた? 私の二日前、ですもんね」


 ヤンの肩がびくっとした。


「あーと、そのー」


 私はあたりをキョロキョロうかがってから、ヤンの耳元に背伸びして口を近づけ、囁いた。

 

「ロラン様が?」

「あーあー、あーのーねー。うーん。ま、そのうちわかるよ」

「今は、内緒?」

「うん。キーラは、賢いなあ」

「本当に賢かったら、さっきみたいなのも、うまく」

「いや。ああいう(やから)からは逃げようがない。助けを求めるしかない」


 だから、俺から離れちゃだめだよ?

 と念を押すヤンの目が、少し――怖かった。




 ◇ ◇ ◇


 


「あの、タウンハウスって」

「ん? ここみたいだね」


 騎士団本部から、歩いて十五分ほど。

 キーラの目の前に立っている建物は、洒落た飾り付き鉄柵にぐるりと囲まれた、二階建ての邸宅だ。

 白壁にはたくさんの窓が見え、バルコニーもある。庭には季節の花が色鮮やかに咲き乱れ、門から玄関まで数十歩は歩かなければならない。

 正面には小さな噴水があり、その横には馬車が置いてある(馬は繋がれていない)。


「私、ここ、住む?」

「キーラ、言葉おかしくなってるよ」

「だって!」

「まあ、気持ちは分かる」

「ヤンさんも?」

「身に余る家だねえ」

「はああ~」


 そりゃ、部屋は余ってるよね!

 ていうか、ここに一人で住んでたの!? さみしくない!?


 呆然としていると、ヤンがポケットから紙と鍵を取り出し、紙を広げて読んでいる。


「えーと何々『現在使っている部屋は二階の奥』『部屋はそこ以外の好きなところを使え』『キーラ優先』……ぶは!」

「へっ!?」

「あからさまな贔屓! 清々しいな!」


 ヤンが笑顔で、玄関を開ける。


「さあ、お貴族様のお家だ。滅多にない経験だぞ。楽しんで暮らそうぜ!」


 明るく言ってくれて、助かった。

 


 

 お読み頂き、ありがとうございました!

 ロランの作戦失敗! 同棲ならず、なぜか共同生活スタートです。

 

 ヤンは誰に呼ばれたんでしょう?そしてその任務とは?

 ラストまでに、きちんと明らかになりますので、どうぞお楽しみに♪

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