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【本編完結】ワケあり事務官?は、堅物騎士団長に徹底的に溺愛されている  作者: 卯崎瑛珠
第二章 誤解!? 確信! 仕事!!

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 そうして戻った団長室。

 買ってもらった物を、机の中に整頓しながら入れていくだけで、地味に時間がかかる。


 レナートは、私が下着を買っている間に「便利そうだった」と鞄まで買ってくれていた。

 柔らかくて手触りの良い、落ち着いた赤色の革。肩から斜めに下げられるようになっていて、大きさも丁度よい。上から蓋をして、ベルトみたいなバックル(金色だけどきらきらしていなくて、いやらしくない)で締めると形がコロンと丸く変わって、すごくかわいかった。肩掛けのベルトも同じようにバックルがついていて、長さを好きに調節できた。


「その赤。キーラに似合うと思った」


 私の髪の色? 嬉しい……


「ありがとうございます。すごく……すごく嬉しいです……」


 贈り物なんて、今までで初めて! 大切に、大切に使おう。


「気に入ってくれたか?」

「はい! とっても! 大切にしますね!」

「良かった」


 目を細めるレナートが嬉しそうで。さっきまでの胸の痛みが消えて、ポカポカした。

 私、変だ。レナートのせいで、胸が苦しくなったり、温かくなったり。今は少し泣きたくもなってる。これって、一体なんなんだろう。


「キーラ? どうし……」



 コンコン。


「団長、ロランです」


 私は、急いで笑顔を作って、なんでもないですよ、と頭を振る。レナートは、眉間にまたしわを寄せたけれど、渋々

「っ……入れ」

 と言った。

 がちゃり、と入ってきたロランは、とても不機嫌だった。


「アーチーを処分したそうで」

 開口一番、むすりと放つ。

「そうだが」

 レナートは、あくまで冷静だ。

「ボイドが暴れて大変でした」


 あー、ボイドの部下だったのか……納得!

 

「だろうな」

「はあ」

「ヤンは」

「巡回に戻してます」

「そうか、ご苦労」

 

 そしてジトリと私を見るロラン。


「楽しかった?」

「へ?」

「団長と王都デート」

 


 ――時が、止まった。

 


「げほっごほごほ」

「へ!?」

「大変仲睦まじく、いちゃいちゃしてたそうで、羨ましいことこの上ないですね。この僕が! あの暴れるイノシシと! 戦っていたというのに!」


 あ、八つ当たりかな。イノシシって?


「えっと、イノシシってなんです?」

「今度討伐に連れてってあげるよ! そこらじゅうにいるから!」

「ありがとうございます?」

「あー、ロラン。その」

「化けの皮、剝がれてますよ」


 私が言うと、またレナートの目がまんまるになった。

 呆気にとられるレナートを無視して、ロランはずかずかと入ってきて、どっかりとソファに身を投げ出す。私は、慌てて扉がきちんと閉まっているか確かめた――閉まっていた、良かった、と胸を撫で下ろす。

 

「もう、ここでは脱ぐ。やってらんない」

「おい……」

「キーラ、表向き僕とレナートは『超絶仲が悪い』からね」

「え?」

「そういうことで、よろしく」

「理由があるのですね?」


 私がレナートを振り返ると

「そうだ。今はまだ言えんが」

 と渋い顔。

「分かりました! 私も銀狐の弟子として、きっちりと化けの皮、被ります」

「っ」

「狐っていうより、子猫ちゃんだけどね」

「む!」

「レナートが、可愛い可愛いってうるさいけど、頑張ってね」

「へ!?」


 ドン!

 

 派手な音がしたかと思うと、机の天板にレナートは額を打ち付けていた。ぷしゅううう、て音がしそうなほど、耳が真っ赤になっている。


「あの……団長? 大丈夫です……か?」


 ものっすごい音でしたよ?

 可愛い? って……

 

「あ!」


 レナートは、突っ伏したままだ。

 

「あ?」

 

 ロランだけが、反応した。

 

「もしかして、あの『かわ』って言いかけてたのは……」

「ぶっ! レナートが!? ぶっははははは! 駄々洩れてる! 駄々洩れてるよ! 可愛いが駄々洩れてる!」

 

 ロランって、本当に伯爵家の人なのかな?


「ひー! ひー! あの堅物がねー!」


 あ、また引き笑いしてる。それ、やめた方がいいよ、どんな恋心も、きっと一気に冷めちゃうよ。

 

「あの、団長、私気にしませんから……その、小動物的なやつですよね……大丈夫ですから」


 ぴたり、とロランの動きが止まった。

「ねえキーラ、それ本気で言ってる?」

「え? はい」

「うわあ」

 

 今度は憐みの目。なんだろう、こんな綺麗な顔してものすごく残念。ある意味すごい。


「んん! ごほん! それより今後の仕事の話をしよう」


 レナートが仕切り直そうとするけれど、おでこが真っ赤でイマイチしまらなかった。


「団長、その前に。おでこ、冷やしませんか?」

「うぐ」

「キーラ、やさしいね」

「普通ですよ?」

「……仕事の話をさせろ」


 ロランと私は、顔を見合わせて、肩をすくめた。

 

「「はーい」」

「ごほっ。まずはボイドだが……」

 


お読み頂き、ありがとうございました!

二人を早くイチャイチャさせたくて、頑張って続きを書いております!

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