表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結】ワケあり事務官?は、堅物騎士団長に徹底的に溺愛されている  作者: 卯崎瑛珠
第二章 誤解!? 確信! 仕事!!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/75

17 レナート side



 俺は、レナート・ジュスタ男爵だ。

 つい最近までは、アルソス王国で騎士団の師団長をしていた。つまり、アルソスの人間だ。


 アルソスとメレランドは、王族同士に直系の繋がりがある、まさに兄弟国だ。

 メレランドが弟、というと響きは良いが……アルソスは、海の向こうの魔法大陸にある『大帝国』からの脅威に備えて、メレランドに防波堤の役割をさせている。表向きは、貿易を任せると言って、それなりの益を渡しているが。

 そのためアルソスは――表立っては言えないが――メレランドを下に見る傾向がある。(メレランドは、アルソスを兄と慕っているため、それには気づいていない。)

 

「レナート。メレランド騎士団の評判がすこぶる悪い。このままでは、帝国に攻め入られる隙となっても、おかしくはない」

 アルソスの国王陛下から、騎士団長とともに呼び出されたと思ったら、そのような密談だった。

 

 海のはるか向こうにある『魔法大陸の大帝国』ブルザークは、魔道具の開発が盛んだ。

 船にも大量の魔道武器を搭載でき、かつ船足も速い。攻め込まれたらあっという間に負けるだろうが、補給が追い付かないという距離の優位性でもって、なんとか平和を維持している。

 が、メレランドの武力弱体化に付け込まれたら、その平和など蠟燭(ろうそく)の灯を吹き消すより簡単だ。

 

 不思議と、魔法大陸には(魔法大陸と呼ばれるだけあって)魔力を持つ人間が生まれるのだという。

 こちら側は、魔石を用いた魔道具を使用するのが一般的だが、魔石を使わず「魔力」のみで「魔法」を使われたら……いかなる武力も敵わないだろう。こちらで魔法を防ぐ手段は皆無だからだ。


 そういうわけで、いわば「出向」を命じられてメレランドの騎士団長としてやってきたのが、半年前。

 ――怠惰(たいだ)傲慢(ごうまん)な騎士団に、本当に絶句した。


 時を同じくして副団長に任じられたロラン・ビゼーは、メレランド沿岸を治める由緒あるビゼー伯爵家の次男。優秀なので有名で、アルソスに出向してきており、俺の師団で面倒を見ていた旧知の仲でもある。


「レナートが団長になるなら、いいですよ」


 そう言って『銀狐』と言われるほどの策略家であるロランは、嫌々ながら帰国を決めた。

 

「……嫌だったんじゃないのか?」


 ロランは、実は自国も家も、好きではない。小さな王国では、彼の才能は収まりきらないのだろう、と勝手に思っている。


「レナートだけだったら、たぶん無理だからね。入り込んで懐柔(かいじゅう)して、あとでまとめてたたき斬る役が必要だよ」

「……それほどまで、か」

「うん。腐ったらもう、刈るしかない、てやつだね」

「……それは辛い立場になるぞ、ロラン。裏切り者と呼ばれるかもしれん」

「自分の国のことだし、僕には伯爵領があるし、何ならメレランドに未練もないからね。幸い陛下は期限切ってくれたしさ。それまでやるだけやってみるってだけ」

「わかった。一人で背負うな。俺もだ」

「相変わらずクソ真面目だね」

「クソ言うな、銀狐」

「はは!」


 そして半年。


「我慢してきたけど、聞きしに勝るだったね」

「まったくだ」


 怠け癖のついた暴れん坊ほど、手に負えないものはない。

 厳しい()()()を実行すべき、と思い始めたところだった。

 

「うーん。これから実力行使に出るとして――レナートだけじゃ書類仕事がさばけなくなるね」

「だが」

「外から事務官探してこよう。できれば可愛い子ね!」

「おい」

「裏表がなくて、しゃきんとしてる、明るい子が良いなー。レナートも好きでしょ?」

「ロラン……」

「堅物にも癒しが必要でしょうよ」

「カタブツ言うな」

 


 ――そうして連れてこられたのが。

 

「キーラと申します。一生懸命勤めさせて頂きます。宜しくお願い申し上げます」

 

 肩より少し長いくらいの鮮やかな赤い髪は、少し癖があって跳ねている。

 翠がかった碧眼は大きく、くりくりと良く動き、彼女の感情をそのまま映すかのようだ。

 声も元気で明るくハキハキとしているし、小柄な体にも関わらず、生命力に満ち溢れている気がする。


 本当に連れてくるとはな、という驚きで、しばらく言葉を発することができなかった。隣のロランがどうだ! という顔でこちらを見ているのにも、少し苛立った。

 宣言通りの人材を探してきたというのか……まったく。だからどうしろというのだ!


「んん。彼女を、寮に入れたいのですが。許可願えますか」


 ――お前、今絶対笑うのごまかしただろう!


「ああ。ロランはまたすぐ戻ってくれるか。不在時の申し送りをしたい」


 ――案内するとか言って、逃げるのは許さんぞ。ちょっと文句言わせろ……おい、口角が震えてるぞ!

 


 そして戻ってきたロランは、団長室に入るなり、相好(そうごう)を崩す。


「奇跡的に、見つけちゃったよ! 僕すごくない!?」

「銀狐の化けの皮、剝がれてるぞ」

「うわっ、それヨナにも言われたんだよね」

「気をつけろ」

「クソ真面目」

「詐欺師」

「言いすぎじゃない!?」

「すまん」

「……大変な境遇でがんばってきたみたい。だから、大切にしてあげないと」

「そうだったのか」

「うん……ここからが、勝負だね」

「ああ」


 

 キーラは、本当にコロコロ表情が変わって(時々うっかり本音が漏れすぎるが)、一日に何度も「可愛いな」と言ってしまいそうになるのが、最近の悩みだ。

 特に豚の鳴き声を「ぶーぶー」と言った時など、あやうく悶絶して変態になるところだった。

 

 ――その度に、「また悪口でしょう!」とふくれるのがまた、とても可愛いのだが。


 


お読み頂き、ありがとうございました!

レナートsideいかがでしたでしょうか。

続きが気になると思って頂けましたら、是非ブクマしてくださいね。

いいね、評価ありがとうございます!

励みになります!m(_ _)m


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ