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堺県まちかど人情記

屋根裏から見つかった祖母の意外な遺品

作者: 大浜 英彰

−冬は年寄りに辛いし、年末になってから慌てて片付けたのでは遅過ぎる。

 そんな両親の主張に納得した私は、一足早い実家の大掃除の一環として久々に屋根裏へ上がったんだ。

 私の実家の屋根裏は、小窓や換気扇といった断熱対策を施してあるから収納スペースとしても活用出来るけど、一人娘の私が結婚して巣立ってからは老夫婦二人暮らしで持て余し気味なのよね。

「これも良い機会だから、整理整頓して要らない物を処分しようかな。」

 そうして適宜運び出していった屋根裏の荷物の中に、その古びた段ボール箱があったんだ。


 両親に見守られながら開封した段ボール箱には、意外な物が詰まっていたの。

「これは…ソノシート?」

 薄いビニール製のレコードは、どれも昔の特撮ヒーロー番組の主題歌やオーディオドラマを収録した物だった。

「へえ…『まぼろし仮面』に『少年マッハ』、それに『超鉄神19』に『怪傑アラワシ天狗』ねえ。どうしてこんなのが家にあったの?」

 それも私はおろか、両親達すら生まれる前の古い番組だった。

「そのソノシートは、亡くなった俺の母さんの遺品なんだよ。」

「えっ、御祖母ちゃんの?」

 父を産んで間もなくして此の世を去った祖母は、そう言えば特撮映画の大好きな人だったらしい。

 確か、婚約時代に祖父と観に行った映画も、日露戦争を題材にした「樺太にかかる虹」という特撮戦争映画だったと聞くし。

「このソノシートは、樟葉(くずは)が持って行きなさい。修久(のぶひさ)君や京花(きょうか)なら、こういうのは喜ぶだろう。」

「えっ!良いの、お父さん?」

 熱心な特撮ヒーロー番組のファンである夫や娘なら、これらのソノシートは垂涎の品であるはずだ。

 何しろ夫は怪獣少年がそのまま大きくなったような人だし、娘もヒーローショーやトークイベントが大好きな特撮女子なのだから。

 だが父にとって、これは大切な母の遺品であるはずだ…

「良いんだよ、樟葉。母さんの書置きにも、そう書いてあるからね。」

 そうして父が広げた古い便箋には、「この手の映画が好きな人が私の子孫にいたら、その人に挙げて下さい。」と書いてあったんだ。


 私の父が生まれてすぐに亡くなった祖母は、私にとっては昔話の中の人物だ。

 ましてや私の夫や娘に至っては、写真を見せられてもピンと来ないかもしれない。

 だけど、生前大切にしていた品を受け継いで貰えるなら、きっと祖母も喜ぶはずだ。

 そうして物と思い出が引き継がれる事で、祖母の生きた証も受け継がれていくはずだもの。

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― 新着の感想 ―
[一言] コレクターにとって、大切にしていた物が次世代に受け継がれて行くのは、この上ない幸せなのではないでしょうか。 お祖母様も本望だと思います。
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