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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

神々と龍達  外伝

作者: 仙人掌

初めは二つだった卵がいつしか八個になっていた。


魔王と魔族が滅び、魔族によって消滅した国々と食べられた人々。


残された者の悲しみや恐怖も復興が進むにしたがい少しづつ薄れ始めていた。


直接の手助けを禁じられている神々は自然を戻したり、動物や魚等を増やしたり食物が育ちやすいように天候を操作したり目立たぬ補助をしている。


「ラゴーラ様は何故、この時期に龍の卵を創ってはここに置いていくのだろう。」


鍛治の神グホバはあまり復興を影からは支えれないので、必然的に卵のお世話係になっていた。


農林漁業の神ケラセ、自然の神シーシア、生き物の神ウルフェは忙しい。


慈悲の神エリーナもさりげなく癒しの風を吹かせ人々の疲れを少しだけ取ったり、傷や病いの治りを少しだけ早めたりしていた。


「復興に鍛治だって必要だけどな。」


グホバは卵の世話だけをしている訳ではないが、五体の中では一番手をあけられる。


「卵といっても暖めは魔術でしているし、三時間毎に上下をひっくり返すだけだ。

神でなくとも出来る。」


そう言いながらも定時に卵をひっくり返している。


鍛治の神はドアーフの様に酒好きだ。


卵の側に椅子とテーブルを用意してあり、酒を呑みながら卵に話しかけている。


死なずのダンジョンが出来ても卵はまだ孵らない。


復興も進み他の神々も時間に余裕が出来てきて、卵の周りに集まって過ごすようになった。


「神々の住まう所に色とりどりの大きな卵がゴロゴロと。

いつ見ても可笑しいですね。」


神々のメイドのニーシャが食事の用意をしている。


「ここは安全だからね。」


「ご主人様もお茶目ですよね。

卵に色をつけなくてもいいのにカラフルな配色にして。」


「スッと来られてはサッと置いて無言でいなくなられる。

ラゴーラ様は確かにお茶目な方かもしれないわね。」


一つとして同じ色の卵はない。


それから数年がたち一斉に卵の中からコツコツ音がする。


神々とニーシャはウキウキと産まれるのを待っていた。


一番目は黄地に黒眼と黄角の雷龍。


二番目は赤地に金眼と赤角の炎龍。


三番目は銀地に青眼と銀角の氷龍。


四番目は緑地に黒眼と水色角の風龍。


五番目は白地に金眼と金角の光龍。


六番目は黒地に金眼と黒角の闇龍。


七番目は薄青地に濃紺眼と青角の水龍。


八番目は茶地に緑眼と草色角の土龍。



「一本角か。」


「可愛いわ。」


「一気にここも狭くなったな。」


「ラゴーラ様は山脈が龍の生息地になるとおっしゃっていたけど、四体づつ分けるのかしら。」


「その前に獲物を獲れるようになるまでは我らが育てないとならないだろう。」


「まずは餌を食べさせよう。」


卵の殻は硬いので何かに使えそうとニーシャが収納した。


そして龍の寝床を八つ出して端の方に並べている。


「準備がいいな。」


「何といっても神々のメイドですから。」


ニーシャは得意げに胸を張る。


龍の餌は生肉だ。


毎日大量の生肉が神々の住まう所に運ばれる。


それからの神々は龍の赤ちゃん達に振り回される事となった。


神々は特に大きくも力自慢でもない。


赤ちゃん龍が戯れてくると押し潰されそうになる。


鍛治の神グホバぐらいしか遊び相手になれないが、八体もグホバだけでは無理だ。


当然他の神々も遊び相手の対象となる。


毎日ヨレヨレになりながらも龍達のお世話を焼いていた。


「世の母親達が寝ている時は天使ね、と我が子の寝顔を見ながら言っていたのが分かるな。」


「本当ね。

こんなに寝顔は可愛いのに。」


「束の間の休息だ。

ニーシャの淹れてくれたお茶を飲もう。」


天使族のニーシャは起きている時は悪魔ってことかしらと悪魔族達を思い出すが、それはピンとこなかった。



月日が流れ、赤ちゃん龍達が羽をバタバタ飛ぶ練習を始めたのを境に大きい方の山脈、カルヴィン山脈へ八体共移動した。


大きな翼を羽ばたかせると神々の住まう所でも狭かったから。


すでに龍の巣に丁度良い渓谷をSSランク冒険者のジゼルが見つけて巣を用意してくれている。


ここからは神々が渓谷で面倒を見る訳にはいかず、冒険者パーティの輝きの雫と囁く音色が協同でお世話を受け持つ。




「さっきまであんなに騒がしかったのにね。」


龍達の去った神々の住まう所は静まり返っている。


「親離れ子離れってやつか。」


「寂しいもんだな。」


元の静寂が戻ったのだが、つい龍達を目で捜してしまう神々だった。








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