デヴィル=ドラゴニア
そうこうしているうちにドラゴニアに着いた。
「久しぶりだな。ショコラよ。そこにいるのは仲間か?」
低い威厳のある声が響く。
「ええ。久しぶりね。デヴィル=ドラゴニア」
ショコラが言った。
「まだ呪いの事を恨んでいるのか?あれは若いことも強さだと思ったからだ。それとも何かあるのか?」
デヴィル=ドラゴニアが低い声で言った。
「強さは許すことですもの。怒ってないですわ」
ショコラが言った。
「しかし、顔は怒っているな」
デヴィル=ドラゴニアが言った。
「何よ。なら純粋な力勝負よ」
ショコラが言った。
さて、戦闘が始まった。やはりショコラは強かった。しかし、デヴィルにあと一歩届かない。ショコラが光属性最強なら、デヴィルは闇最強だ。
「なぜ、お前に光と回復呪文、蘇生魔法、アンデッド化させる魔法を残したと思っている」
デヴィルが言った。
「力がすべてだからでしょう?」
ショコラが言った。
「違うな。戦う力がないと死ぬ。だから残した。それもあるが、希望の星となってほしかった。魔王とか勇者とか人間とか魔族とかそんなものを抜きにして同じ星に生きるものとしていきたいのだ」
デヴィルが言った。
「そんなことできるはずないじゃない。今でも偏見が強いのに」
ショコラが言った。
「そこにお前を16歳の体のままにする呪いをかけた理由がある。可愛ければ何とかなることもある。しかも実年齢は重なるから、人生経験をいろいろできる。身体の衰えなしにな」
デヴィルが言った。
この間も戦いは続いている。
「技名がダサいな。ショコラよ」
デヴィルが言った。
「ほっといてよ。父上」
だんだん砕けてきている。
「戦闘力は申し分ない。あとは言葉で勝てないとな。今のドラゴニアの流行は言葉による強さ。討論だ」
デヴィルが言った。
「例えば?」
ショコラが問う。
「税の是非や公共事業の是非。予算の審議だな」
デヴィルが言った。
「税はなくていいし、公共事業は必要よ」
ショコラが言った。
「そうだな。だが、お前の言うことは矛盾している。公共事業には金が要る。働いてもらう報酬にな。しかし、国の財産は有限だ。ならどうするか。国民から税をとる。ちょっとずつな。こうすると、国民の負担はそこまで多くない。更に財源が確保できる。反論は?」
デヴィルが言った
「む~」
ショコラが考え込む。
「責め立てるとこはあるぞ。例えば、ちょっととはどのくらいかとかどのような公共事業に使うのかとかだな」
デヴィルが言った。
「負けたわ」
ショコラが言った。
「賢さも強さ。魔法も強さ。人を許すのも強さ。これから知っていけばいいさ」
デヴィルが言った。
「ならしばらく、呪いは解かなくていいわ。不便なことないし。お酒飲めないくらいかな」
ショコラが言った。
「あ、お母さん。久しぶり」
レイが言った。そこには50歳手前のおかあさんがいた。
「最近肩がこるわ。あと腰も」
アスカが言った。
「やっぱり歳を重ねるのって怖いの?」
ショコラが言った。
「そうね。思ってるのと違うってなるかも。20歳になると無条件で大人になると思うでしょう?ならないの」
アスカが言った。
「でも法律上はなるよね?」
ショコラが言った。
「多分お母さんの言っている大人とお姉ちゃんが言ってるのは違う」
レイが言った。そして一呼吸おいてレイが続ける。
「お母さんのは中身が成熟していること。お姉ちゃんのは成人。二十歳を超えていること。20超えてもダメな人もいれば超えていなくてもしっかりした人もいる。多種多様なのよ」
そんなことを言っていると雨が降ってきた。神の涙だろうか。少しうれしそうに降っている。
この景色を見たレイとアスカがドラゴニア民謡を歌った。題名は『caught in a shower』異世界から来た、英語という言語が得意な日本人が作ったらしい。