モンタークシティー
ドナスタークシティーに着いた。するとそこには異様な光景が広がっていた。見渡す限り壊れた建物と人々の死体が転がっている。
「こ、これは。どういうこと?」
私はあまりのことに叫んでしまった。
「どういうこともこういうこともこういうありさまだよな」
勇者がそう言った。
「だから、なんてひどいことなの。これは」
魔法士ちゃんが言った。
「しゃべるんだね、君」
エメラルドが驚いていった。
「よく来たわね。勇者」
私と同じ茶色い髪に、私の金の目とは反対の色の紫の目をした女の子がいった。身長は勇者と同じくらいだ。
「お前誰だ」
勇者が軽くキレながら言った。
「わたし?私はそこのドラゴンの妹よ」
謎の少女はショコラを指さして言った。
「え、ショコラ。おまえドラゴンなのかよ。信頼したのに」
勇者が驚いたように言った。
「え、知らなかったの?言ってたよね。ショコラ」
エメラルドが驚いている。
「はい。言ってましたよ。あっでも勇者さん寝てました」
魔法士ちゃんが言った。
「ふふふ、そうよ。私ドラゴンなの。でも、今は人側よ」
我ながら不敵な笑みだと私は思う。
「おねーちゃんはなんで人に味方するの?」
謎の少女が涙を浮かべていった。
「そもそも、私はあなたを知らない」
「私はレイ=キャンディーロール。デヴィルお父さんの子供でお母さんはアスカ=キャンディーロールよ」
なぞの少女の発言に一同は驚いている。
「それって、私のお母さんと同じ名前。もしかして、私のお父さんもデヴィルなの?」
ショコラは驚いて聞いた。
「そうよ。だから、あなたには父親の名前は知らされていない。だって、あなたとは双子でその年に勇者が攻めてきてパパが悪者になったことを知ったから。それで母親のアスカは離婚を決めた。二人とも子供は好きだった。私は母の愛を知らない。代わりに父がいた」
レイは言った。
「おそらく、守りたかったのであろうな。ショコラを。人間との懸け橋として。そしてドラゴン側のあなたとの和解を望んだということか?」
エメラルドは疑問を口にした。
「そうだよ。さあ、わかったでしょ。戦うわよ」
レイが答えた。
「いや、なんでだよ」
全員の声がハモる。
「私が暴走したときに止められる力があるか試すためよ」
レイが答えると早速戦闘が始まった。先手を取ったのはレイだ。
彼女は即死魔法を唱えると勇者に向かって放った。しかも盾を貫通して勇者に当たってしまった。なぜなら勇者は盾を過信しており矢の弾幕を破られるとは思っていなかったからだ。
その結果人間陣営には動揺が走った。しかし一人だけ動揺していなかった。ショコラだ。彼女はレイをにらみつけるといった。
「レイ。人の命を何だと思っているの。即死魔法は禁術でしょ」
「あら。そうだったかしら。父上は身を守るための護身術っていってたわよ」
レイがそう言った。
「確かに護身できるでしょうね。だって相手は死ぬんですもの。でも生命倫理に反するわ。あなたには道徳がないの?」
「確かに死なすのはいけない。でもそれなら死なないからだを持てばいいじゃない」
「人間側は無理なの。私も持ってるけど」
ショコラが言った。
「それじゃ意味なくね?」
エメラルドがツッコむ。
「そうなんだ。ごめんなさい。私は父上が倒されないように強くなろうと思った。その結果、行きついたのは相手の生命活動を止めれば強いと思った。でも違うんだね」
「そう。本当の強さはきっと自分の弱さを知ること、そしてそれを受け入れ、他者のそれを認めることだと私は思うわ」
ショコラが言った。
「つまり、他者を許す強さと自分の弱さに立ち向かう強さってこと?」
レイが言った。
「そう。私の答えはね。人によってきっと強さの定義は変わるの。だから争いが続くの。強さを示すために」
ショコラが言った。