プロローグ
ガリグリオ歴1500年5月6日世界を揺るがす夫婦喧嘩があった。王妃の日記「魔界創成記」には以下のように記されている。
王が浮気していた。王になる前はすごくいい人だったのに。もう許さない。宝を持って逃げてやる。謝っても許さないから。
そして、次のページから王妃のその後の行動が書かれている。
5月6日(逃亡当日) 朝、政務の確認事項があったため王の部屋へ。そこには、たくさんの女性に囲まれた王がいた。男女同権ではない時代だけどこれはひどい。許さない。だが、私だって好きな男性だったので殺しはしない。日ごろから小遣いをためてあったので、部屋に戻り、出ていくことにした。確かに他国でも男性優位だろうし仕方ないのかもしれないが、一人の女性として、これは許せない。出てきたのはいいものの、行く当てがない。とりあえず、近くのぼろやで泊めてもらった。私どうすればいいの?
5月7日(逃亡二日目) 雨が降っている。まるでシャワーのようね。強くなっている。とりあえず、次の町まで歩きましょう。そこにだったら、昔助けた僧侶がいるはず。思った通り泊めてもらえた。よかった。情けは人の為ならず。日ごろから助けておくとピンチの時に助かるのよ。是非皆さんも人助けをしよう。
5月13日(逃亡から1週間が過ぎた) 中間の町ミットヴォッホタウンを通過。さすが水の都。凄くきれいだ。もう王室の事なんてどうでもいい。私生きている。次の町ぐらいからお金を稼ごう。ドナスタークシティーには冒険者ギルドがあるはずだ。
5月14日(逃亡から8日) 旅最高。剣持ってきてよかった。お父さんありがとう。今日はスライム倒します。ぬめぬめして気持ち悪いけど、これはこれであり。さて、宿どうしよう。知り合いいないし。
5月15日(逃亡から9日) 結局教会にとまった。あの僧侶凄いじゃない。人助けもいいものだ。なんで出てきたんだっけ。まあいいや。通りすがりのイケメンに声かけられた。宿も用意してくれるらしい。さすがイケメン。心がイケメンだとにじみ出るのね、そのオーラ。
5月16日(逃亡から10日) イケメンとお茶することになった。昨日は別部屋でとってくれていた。さすが。さて、今日飲んだのは、カモミールティーだ。リンゴみたいな香りとミントのような味がすごくおいしかった。夜から、ドラゴンであるイケメン君の背中に乗って、龍の国ドラゴニアへ。
ここからは、飯と離乳食と遊びしか出てこない。どうやら、結婚して子供ができたようだ。
妃の子の代から「魔界公記」がつけられ始め、代々書いているようだ。「魔界公記」によると、1600年ごろ、人ドラゴン戦争があった。原因は、王妃の死をドラゴニアが公表したからだ。人間側の記録では、このころからすでにドラゴンを魔王と言い始めている。さらに二百年たつとパーティーを組んで龍王(魔王)に挑む者が増えた。このころから凄い力を持った転生者が勇者に選ばれ始める。もちろん強かったが、戦った後はお茶をして、結果のお茶を濁し、おいしいお茶を飲ませドラゴニアでは「おーい」が流行語になった。余談ではあるが、画号にした人もいるらしい。「魔界公記」には、悪い龍王デヴィル=ドラゴニアが登場する。それが二百年前であり、勇者が来始めた時期と重なる。おそらくちはやぶる神々が下した天啓であろう。そのころ、ドラゴンは、ヒト化して人間界にも行っていたようだ。
さて、今年の勇者は、最初からめちゃめちゃ強いチート持ちの転生者だ。名前は、陰翔院聖夜。前世でのあだ名はサイレントナイト=ホーリーナイトだ。彼は、小柄でクリスマスによく「きっと君は来ない」を連発していたためそうなった。そこで、ボッチしなくて済むようにしてくれと神に願ったのだ。結果めちゃくちゃ強くなった。
さて、ある町の教会にドラゴンの血を引く聖女がいた。彼女の名前はショコラ=キャンディーロール。彼女は、例のデヴィル=ドラゴニアによって、アンデッド化呪文を除いて光属性の魔法と回復魔法しか使えなくなった。ただし、見た目年齢が16歳から変わらないという呪いだ。ただ単にデヴィルがかわいい子が好きだったからである。そして、ショコラは童顔だが、とても賢かった。おそらくデヴィルに敵対しないように呪いをかけたことには気づいていた。ちなみに、この世界では5属性の魔法がある。地、水、火、光、闇だ。