ストロングえもん
「びえぇ~ん! ストロングえも~ん!!」
「どうしたんだい? なる太くん」
「今日もジャイアント馬場にいじめられたよぉ~!」
「まったく、バカだな君は!」
「16文キックを顔面に喰らって僕の美しいお顔に傷がついてしまったよぉ~!」
「君って奴は、鏡を部屋に置いた方がいいよ!」
「何かジャイアント馬場をギャフンと言わせる秘密の道具を貸してよ、ストロングえも~ん!」
「またそうやって楽して勝とうとする! まったく、バカだな君は!」
ゴソゴソ。青い顔した“ストロングえもん”が胸ポケットからいつものように秘密の道具を取り出した。
「テテテテン! ストロングゼロ~~!!」
「またそれかよー!」
「このストロングゼロを飲むと嫌なことをさっぱり綺麗に忘れてしまうんだ!」
「うん、知ってるよ親父。忘れたくない家族の思い出も、な」
親父、あんたが好きだったジャイアント馬場の話をしてももう、昔のことを思い出したりはしないんだな。
酒ですっかり頭がおかしくなっちまって……自分のことだってよくわかっちゃいない。
けど、けどよ。
俺は最後まであんたの面倒を見るよ。
だって俺達は、親子じゃねぇか……。