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【紙書籍発売中】追放されたやさぐれシェフと腹ペコ娘のしあわせご飯  作者: 呑竜
「第2部第3章:起死回生の逆転料理」
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「ティアの一日は①」

 ~~~ティア視点~~~




 ティアの一日は、まだ日も昇らぬうちから始まる。

 しかもけっこう忙しい。


 二段ベッドの下から這い出てまずすることは、二段ベッドの上で寝ているセラを起こすことだ。

 うんしょうんしょとハシゴを登り、案の定まだ寝ているセラを揺り動かす。


「隊長、セラ隊長。もう朝ですよ、起きてください」

「ん~、むにゃむにゃ。もう食べられないよ~、さすがのセラもお腹いっぱいだよお~」


 毛布をはだけたままベタな寝言をつぶやくセラは、簡単には起きてくれない。

 何度話しかけてもダメで、ぺちぺちと頬を叩いてもダメ。

 いつまでもその、天使のように可愛い寝顔をさらしている。 

 

「もお~、しょうがないですねえ~」


 最初の頃は戸惑っていたティアだが、一緒に寝起きして三か月にもなるとさすがに慣れた。

 ティアはスウと息を吸い込むと、セラの耳元で叫んだ。


「ああー! ジローさんがオスカーさんと手をつないで歩いてますうううー!」

「う、う、う……っ?」


 瞬間、ぱちりとセラの目が開いた。


「浮気だああああああああああーっ!? ジローがとうとう『びーえる』に目覚めちゃったあああーっ!?」


 セラはがばりと身を起こすと、敵はどこだとばかりに首を巡らせた。

 

「いっこくも早くセラがただしー道に戻してあげないと! おかーさんが『びーえる沼って、一度はまったら抜け出せないのよね……』って苦い顔して言ってたもん!」

「落ち着いて隊長! 空耳です空耳! ジローさんは『びーえる』に目覚めてなんかいません!」


 ティアとしては、たびたびセラが口にする『びーえる』が何を意味するのかはわかっていない。

 男性同士が仲良くすることになんの問題があるのかわからない。

 ただひとつ言えるのは、それがセラの嫉妬心を刺激することであり、絶好の目覚ましになるということだけだ。


 が、いつまでもこの調子で騒がれたのではたまならない。

 隣の部屋や上下の部屋の生徒たちを起こしてしまったのでは申し訳ない。


「……え、え? じゃあジローは大丈夫? 『びーえる沼』にはまってないの?」

「ないですないです。そしてわたしたちは起きなきゃダメです。もう朝なんで、ジローさんが厨房で待ってるんで」

「ハッ……朝っ?」


 そこまで言われて初めて気が付いたのだろう、セラはハッとしたように自分の格好を見下ろした。

 起きたてのセラは薄い灰色のワンピースタイプの寝巻きを着たままだ。


 セラたちが室外で活動するためにはまずシスター服を着てコイフをかぶりベールをかぶり、胸元にアンクをぶら下げなければならない。

 どれかひとつでも欠ければお説教や反省文などの罰を受けることになるので、厨房での作業に間に合わなくなる。


 また、厨房についたらついたで今度はコイフとベールを脱ぎ、シスター服の袖をまくって紐で結んで、エプロンを身につけねばならない。

 着替えだけでもなんだかんだで相当を時間をとられる上に、さらに顔を洗ったり歯みがきしたりなどして身だしなみも……。


「あわわわわ、大変だあぁぁーっ!?」

 

 慌てたセラが「どーしよ、どーしよ」と騒ぐのを、ティアは辛抱強くコントロールした。

 着替えを手伝ってやり、寝癖を整えてやり、セラがパシャパシャと水で顔を洗っている隙に自らも身支度を整えて……。


「よし、大丈夫ですね。では急いで走って……いるところを見つかると怒られちゃうので、びみょーに速足で行きましょうっ」

「うんっ、行こう行こうっ。ジロー、ジロー待っててね。お嫁さんのセラが今行くからねええーっ」


 廊下に出たふたりは、ひそひそと囁き交わしながら厨房へと急ぐ。

幼女の朝は早い|д゜)


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