「マックスVSオスカー」
俺とオスカーが教室の後ろで話していると……。
「おいおいジロぉ~。おいおいオスカぁ~」
茶髪をリーゼントにした同じクラスのマックス(15歳男)が、にやにやしながら近づいて来た。
「おまえらさあ、最近調子に乗りすぎてんじゃねえ~? 料理番になったとかいってよお~。他の生徒らを偉そうに指揮してよお~。しかもたいして美味くもねえくせによお~。何様なん? ああん? あんま調子こいてっとヤキ入れるぞ? おおん?」
授業に非協力的で、真面目な生徒をバカにする。
自らの存在を大きく見せようと腐心する、典型的な少年ヤンキー。
最近なにかと俺たちに絡んで来るようになったのだが……。
「なんだマックス? ケンカを売ると言うなら買うぞ?」
オスカーが、16歳とは思えぬ恐ろしい眼光でマックスをにらみつけた。
抜き身の剣のような冷え冷えとした眼光に、マックスは冷や汗ダラダラ。
「ば、ババババカ言え。オオオオレたちは神に仕える身だぞ? ケンカなんてするかよ」
言葉の端々を震わせながら、慌てて自分の席に逃げて行く。
「……ふん、弱者め。たかがひとにらみで、なんたるザマだ」
いかにもな小物ぶりを、オスカーは鼻で笑うが。
「おまえね……ま、いいけどよ」
「なんだ、何か言いたいことがあるのか?」
俺の反応に、不機嫌そうに眉をひそめるオスカー。
「同じクラスの奴とあんまバチバチにやるもんじゃねえぞって言おうとしたんだよ。どうあれ一年は一緒に教壇に向かい合う仲なんだから。仲良しになれとまでは言わねえが、無用な争いを避けるのもまた信徒としての道なんじゃねえの? 知らんけど」
「そのためならば、言われなき非難をも見過ごせと?」
「にらむなにらむな。そうじゃねえよ」
オスカーとケンカするつもりではないのだ。
俺はひらひらと手を振った。
「戦う時は戦わなきゃならねえ、そいつはたしかだよ。だけどくだらねえことにまでいちいち反応して疲れるだろ。そうゆーのはもっと大事な時のためにとって置けって言ってんの」
「ごめんこうむるね。ボクは決して、ならず者相手に自らの信念を曲げたりしない」
「ちぇ、めんどくさいやつ」
あくまで強情なオスカーに、俺が舌打ちしていると……。
「なあジロー。もし今のがボクらじゃなくセラに対して向けられたものだったらどうする? キミの愛しい妻に対して向けられたものだったとしたら、それでも無用な争いは避けるのか?」
「誰が誰の妻か。だがまあそうだな、もしそうなったとしたら……」
あのマックスがセラにだる絡みしている姿を想像した俺は……。
「とりあえず蹴っ飛ばすんじゃねえかな……あれ?」
「そら見ろ」
オスカーは目を細め、楽しげに肩を揺らした。
「ボクにとってのプライドは、キミにとってのセラぐらいに大事なものだ。そういうことなんだよ」
「いや別に、大事とかそういうことを言ってるわけじゃ……」
「はいはい、わかったわかった、この話はもういいよ」
オスカーは俺の弁解をぴしゃりとはねつけ、もう聞いてくれなかった。
「くそっ……マックスの奴が絡んできさえしなきゃ……」
事の発端となったマックスへの憎悪を募らせながら、俺はひとつのことを決めていた。
「ようーっし決めた。この恨みは料理で晴らしてやる」
「料理で晴らす? マックスにだけ出さないとか?」
「バーカ、そんな意地悪するかよ」
「マックスにだけ死ぬほど辛い料理を出すとか?」
「料理人の仁義に反することもしねえよ。真っ向勝負だ」
首を傾げるオスカーに、俺は力強く告げた。
「あいつ、俺らの料理が『たいして美味くねえ』って言っただろ? それを目の前で覆してやるんだよ」
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