「フレデリカは告げる」
一国のお姫様の来訪ということで、俺たちは大急ぎでおもてなしの準備をした。
セラがハーブティーを淹れて、ケーキ……はさすがになかったのでホットケーキを焼いて蜂蜜をたっぷりかけて。というかさあ……。
「フレデリカ。おまえさあ……こんな予定があるなら事前に言っとけよ。こっちにだって準備ってもんがあるんだから」
「そんなの言う暇あるわけないでしょっ⁉ ザントからこっち、わたしだって驚きの連続なんだから!」
聞けば、大人っぽいシックな旅装に身を包んだフレデリカは、王都の実家に里帰りして来たところらしい。そんでもって、ちょうどザントへの帰り道にあるカルナックの別荘に立ち寄り、ついでに神学院に顔を出すつもりだったのだとか。
「だって、セラが返事のひとつも寄越さないから……っ」と憤っていたところから察するに、友達からの連絡がなくて寂しかったようだ。
子細はともかくそんなツンデレお嬢様が道中で偶然遭遇したのが姫だ。幼少期からの知己である姫はフレデリカの置かれた状況を知るとニヤリと笑い……。
「ほう、素敵じゃの。ならばフレデリカよ。わらわと共に来い。そなたの想像もつかぬような、世にも珍しいものを見せてやろう」
とだけ言うと神学院に無理やり同行。そしてここに至る……と。
「フレデリカ! ハイタッチ! ハイタッチ!」
「はいはい、こうすればいいの?」
「んぎゃああ~⁉ それタッチじゃないよおぉ~!」
「はいはい、んーで? ティアとかいう女の子は?」
再会のハイタッチをせがむセラのこめかみに拳をあててぐりぐりしたあと(可愛さあまってなんとやらというところか、さすがはツンデレさん)、フレデリカはなぜかティアを探した。
「ティアならそこにいるけど……おまえ、ティアのことなんてどこで知ったんだ?」
セラはここに来てからまったく手紙を書いておらず、つまり神学院での生活についてはまったく教えていない。
ティアをザント修道院に連れていく計画があったのでハインケスへの連絡自体はいってるはずだが、フレデリカが気にするような内容ではなかったはずだが……。
「あ、あの……ティアはわたしですが……ってぴぃぃぃっ⁉」
おずおずと手をあげるティアにぐいと顔を近づけると、フレデリカは「……ふう~ん?」と値踏みをするようなまなざし。
「まあいいわ。見た目も悪くないし、セラと違って出来がよさそう」
「なんかセラが悪く言われてるっ⁉」
突然の流れ弾を被弾したセラが憤るが、フレデリカはこれを完全スルー。
いまもなおポカンとしているティアに向けて――
「いーい? ティア・ジグムント。あなたはこれから、レーブ公爵家に仕えるの」
とんでもないことを言い出した。
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