表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

アペルピスィアの語り

 あら……あなたは私を感じられているの? キョトンとしてどうしたの? あなたの後ろにいる影に語りかけているわけじゃないのよ?

 そんな焦って後ろを振り向かなくていいのよ? どうせ、あなたにはそれを見ることが出来るわけじゃないから…………え? 私は誰ですって? 私は……


 ああ……ごめんなさい……あなたの次元だと私の名前を認識することができないのね……えーと……


「アペルピスィア」


 これで良いかしら……これがあなたが認識できる私の名前よ。でも、私を感じられるなんて面白いわ。たまにいるのよね……そういうの……

 もののように扱うなって? そんな事をしているつもりはないわ……ただ、私にはあなた達というものが絡まった糸の塊のように感じられているだけだから。


 なに? 興味を持ったの? ……そうね……あなた達は自我を持った人という存在と認識しているかもしれないけど、その認識も私からすれば単にベクトルの糸の塊なの。色々なベクトルの糸が集まって絡んでいるのが、私にとってのあなたという認識。


 あなたがいうところの時間の流れも、肉体も意識も私にとってはベクトルの糸の塊なの。糸という表現はダメかもしれないわ。ベクトルだから細い水のような流れだと考えてもらえばいいわ。常に流れてるから止めることはできないの。


 え? あなたは意識をもった人間という存在ですって? あなたの次元からみれば、そうなのでしょうね……私からすれば、あなたの意識ですらベクトルの塊。あなたの次元には多重人格の人がいるでしょう? それは私には複数の意識を形成するベクトルの束が、たまたま一つの肉体を形成するベクトルの束に入っているような感じかしら……


 ベクトルの流れが絡み合う様は凄くキレイよ……あなた達はそれを人生と呼ぶみたいね……時間のベクトル方向から観察すると一つのアートの様に捉えることができるの。あ……アートというのは、あなたの次元の言葉で表現しているだけだから気にしないでね。


 そんなことを何故あなたに話すのかって? そうね、ただの暇つぶし……キレイだけど退屈…………ベクトルを弄って遊ぶこともあるんだけど、ベクトルの流れはとても繊細だから、いつも弄っていると疲れるの……たまに手元が狂うとベクトルの絡みが解けて、存在そのものが消えることがあるわ。あなたのような私を感じられる存在は貴重だわ。弄ってないのに私を感じることが出来るんだから……


 異世界はあるのかですって? あなたのベクトルの固まりを含めた大きなベクトルの絡みを世界と呼ぶなら、あると答えるわ。でも、行きたいと思わないほうがいいわ。肉体を構成するベクトルから離れると、あなたの意識そのものを構成するベクトルの固まりは解けてバラバラになる場合が多いから……


 たまに時間や肉体を構成するベクトルから離れて、自我を構成するベクトル束を維持したまま別の塊になるのもあるけど……いるのではないかしら? あなたの次元で前世を覚えてる人とか……


 場所のベクトルだけが変われば異世界転移できるのではないのかって? そうね……あなたの次元でいうところの理論上は可能って言葉になるわ……でも、それは独力では無理よ。私も面倒だからそんなことはしないわ。


 私がベクトルを弄ると何が起きるのかって? 細い水の流れのようなものだから、弄ってもそれらしくは復元するわ。……そうね……説明するのも面倒だから物語にして、たまに教えてあげる……面白いかどうかはわからない……それでもいいでしょ?


 あなたに私を感じてもらえて、とても嬉しかったわ。あなたの次元でいうところの過去形の表現ね。そんなものですら私には本当は意味がないのだけども……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ