4話
リアルが色々忙しすぎました
「どこだよここ!!」
龍之介は森の中を彷徨っていた。理由は単純だ。あの金髪の男の後を追ったからだ。姿が見える位置だと良かったのだが、身長も低く元より一度姿を見失ってから追ったからだ。
「最悪、龍化して近くの街まで行くのも考えとくか。今日中にはここを出たいし」
間違いなく街でパニックが起きる。がそれでも自分が死ぬよりもマシなはず。自分のことしか考えていないと言われればその通りなのだが、自分の生死がかかっているとなると仕方がない。
あの4人が街に着いた時にはもうパニックが起きているのだが、未来の話だ。
「それにしても本当に知らないとこだし、とりあえずいっかい止まって考えるか」
龍之介は立ち止まる。周りは自分よりはるかに高い木がある。大きめの森だろう。それに傾斜があるので山と考えていい。
「地球の知識だと、登った方がいいとは言うがなぁ」
山で遭難したら下るより登る方がいいとされている。理由は、頂上は1つだからだ。救助隊が見つけやすいし、頂上に行くと人がいることだって可能性が上がる。
だが、この世界はどうだろうか。救助隊が無いと考えるべきか。もしあったとしても空から探すことはしないと考えた方がいい。とりあえずあてにならないと思っておいた方がいいはずだ。
「となると、自力で行くしかないか…さっきの人と会った場所から大体20分ぐらい歩いたか?この体だから距離はしれてるな。だいたいで山の大きさと自分の位置を考えたいな……」
位置は知りたいが情報が少なすぎる。だが、龍之介はそこまで高くない位置にいると考えているし、街も近いと考えている。
理由としては、さっきの4人である。そこまでの装備がなかったからである。遠ければ遠いほどそれなりの荷物がいる。テントとか食料とかだ。携帯食料なるものがあったとしても、テントはどうしてもかさばるものだ。
そんな荷物を持っているようには見えなかった。なので1日で行き来できる距離にあると考える。
山に来た理由は分からないが、「ギルド」という単語が出てきたということは、依頼の途中と考えるべきだろう。
なおさら遠くないと考えていい。
子供の体で1日でいける距離と言われれば、微妙と思いたいが、日はいまほぼ真上にあるので、まあ大丈夫だろう。
心配なのは途中で魔物に襲われるかどうかだ。自分は龍化できるし、さっきの4人も武装してたしで間違いなく敵が出てくると考えていい。
魔物はまだいいのだが、盗賊等の場合やばいかもしれない。人を殺せる自信がないからだ。向こうも躊躇いなく殺すことはしないと思いたいが、愉快犯みたいな人もいるわけだから警戒はしておく。いつでも龍化できるようにしておかないといけない。
「空飛べたら便利なんだがなぁ……………って出来るのか?」
神様は『魔法はイメージすれば出来る』と言っていた。実際ウォーターカッターは出来た。他の魔法も同様だろう。出来ないことは相手に直接作用するもの。直接というのは曖昧だなと思う。
まあ、あの言い方だと、相手を無条件に即死させるとか催眠をかけるみたいな呪文はアウトなんだろう。致死量の毒を作って飲ませるとかもアウトなんだろうか。でもそれだと魔法で人を殺せなくなるので、それはセーフと考える。
話は逸れたが、『魔法はイメージすれば出来る』ということは、背中から羽根でも生えるイメージでもすれば飛べるのだろうか。自分の体に作用するのでそれはいけるはずである。
「やってみる価値はある。背中から翼が生えるイメージ…」
イメージは任せてほしい。アニメ大国日本出身だ。魔法の出てくるアニメなんて嫌ほど見てきた。余裕である。
背中が変な感じがしたあと、完全に背中、肩甲骨辺りから、翼が生えてきた。それに神経も通っている。
「やってみたら出来るもんだな。これからは結構やってみることはした方がいいな」
生えてきた翼は、先ほどの龍の翼の小さいのが生えてきた感じである。爬虫類の翼だ。飛べるのだろうか。最近の研究では恐竜のプテラノドン等の翼を持つ飛行型の恐竜は飛べなくて、滑空しかできなかったという研究結果もある。飛ぶには羽毛がいるらしい。
だが、生えてきた翼は見事に羽毛は生えていない。
一応バサバサと羽ばたこうとしてみるが、飛べなかった。
「適当に翼が生えるイメージだったからダメだったのか?羽毛がいるんだよな。羽毛かぁ…」
とりあえず一度羽をもどす。龍化同様人になるイメージで戻れた。もう一度羽をだす。
イメージは鳥…ではなく天使だ。天使といえば背中からでっかい羽毛の生えた翼を持っている。それに人型なのでイメージもしやすい。
イメージを終わると、また変な感じがして背中から羽毛の生えた翼が生えてきた。触ってみると神経も通っている。
「この神経通ってるのっていいのか?翼に攻撃されたら痛そうなもんだが…まあそれは置いといて飛べるかどうかだな」
バサバサとはばたいてみると、体がフワッと浮いた。そしてそのままバサバサとしているとだんだん高度を上げていく。そして木の高さを全て抜けた。
目の前に広がるのは、広大な大地だった。そして近くに街が1つ少し遠くに街が1つと見える限りで5つある。が近くにある街が一番大きい。そこに向かうことにする。もちろん飛んだままでだ。
「空を飛ぶっていうのは気持ちがいいな!これが人のみた夢か!!」
飛行、それは人が見た夢である。飛行機、ヘリなど出たがそれは機械を使ってのこと。自分一人で好きに飛べるのが夢である。
そして、10分ほど飛び終えた後、一番近い街へ向かっていった。
空を飛ぶのは恐ろしくラインで早いと痛感する。山道を見ながらの飛行をしたら、かなり入り組んでいた。そこを無視して街まで直接行くというのはかなりの短縮になるし、そもそも飛行もまあまあな速度だ。原付ぐらいだろうか。
この世界はそんな速い乗り物はないと思う。見てないからなんとも言えないが…
予想だが馬車が一番速いと思っている。
実際は距離が長い場合に限る。瞬速だと人が一番速かったりする。魔法による恩恵が大きく、時速でいうと50キロぐらい出る。大した距離は走れないが…
そして街に到着した。
龍之介は街から少し離れた場所に着地した。理由はパニックを引き起こすことがあると考えたからだ。魔法がどこまで進んでいるかは分からないが、空を飛ぶのは、出来ないと考えている。飛べたら、さっきの四人も飛んでいるはずである。
龍之介は街に向かって歩く。だんだんと街が見えてくる、と思ったが壁に囲まれている。おそらく魔物の襲撃を防ぐためだろう。皆が皆戦えるわけではないのだ。
街の壁まで来ると門番らしき人がいた。見た目は鎧を着ているから体はわからないが、大きく顔は厳しくも優しそうな雰囲気を纏っている。お父さん、が一番わかりやすい例えかも知れない。
「む、なんで外から子供一人で…」
どうやら龍之介の存在に気がついたようだ。龍之介も目が合い気がつかれたことを察する。
街の外は魔物がいるので子供、それも見た目が5、6歳の子供が基本的にいるはずがない。例外としては、別の街からの引越しで親とともに馬車で外に出て、その道中に盗賊に襲われるパターンだ。この街は魔物の巣窟と言われる森がある。龍之介が生まれてきた場所もそこである。強力な個体が多く盗賊もその危険性を加味してあまり出ないため、門番はその可能性を消す。
他のパターンとしたら、見た目が子供なだけで実は大人のパターンに、いたずらで外に出たパターンぐらいだろうか。後者は、その危険性をなくすために門番がいる。変わる時も、そういうことがないように気をつけているため可能性は薄い。消去法で見た目が子供なだけなパターンだと門番は考える。実際そういう人種はいるし門番も何回も見たことがある。
「ギルドカードの提示をお願いします」
龍之介はそんなものを持っているわけがないし、そんなものが必要と思っていなかった。だが異世界ものではよくある設定であるし、地球でも外国に行く時はパスポートが必要だったし、むしろ当然なのかも知れない。
知っていれば魔法で作ってやることもできたのに…とは思うが、もう遅い。ここは嘘をつくことにする。
「すいません、無くしました」
「そうですか、依頼の帰りですか?」
意外にも良い対応を不思議に思うが、あまり疑ってないのかも知れない。失くすのがよくあるとか。実際はそうではなく、そういう対応をした方が穏便にことが進むのを門番が分かっている事にある。
なので、門番はめちゃくちゃ龍之介を疑っている。
「そうなんですよ、魔物に襲われましてね」
「そうですか、それは大変でしたね。ギルドカードを紛失したという事なのでついてきてください」
この一言が龍之介をもっと疑う発言になる。なぜなら、龍之介が丸腰だからだ。そんな人が門番が通すわけがない。
となると、何か秘密があるに違いないと確信する。
よくあるのは、他国のスパイだ。
この街は、魔物が強力なため、冒険者も強い者が多い。なので戦争を吹っかけようとしている国が偵察に来るのはこの街のあるなのだ。端にあるというのもあるが、この街に来れば戦力がだいたいわかるとされている、と言われている。
他には盗賊が巻き上げた金で食料を買いに来たり武器を調達しに来るとか、珍しいパターンだと貴族や王族とかだ。ただその場合、護衛が優秀でかつ人数も多いのでまずない。
もしそんなことがあったら一大事である。盗賊にしろ魔物にしろ討伐隊が組まれる事になる。そしてその可能性も捨てきれなくはない。森でZクラスのドラゴンが確認されたからだ。いきなり襲うということはなかったらしいが偶然かも知れない。おそらくギルドマスターや国に報告されていることだろう。SSランクの冒険者が10人体制で調査する事になるだろう。残念ながらそのドラゴンは龍之介なので龍之介が変身しないと二度と現れない。
門番が連れてきたのは、ある一室。部屋は、ソファと机が置かれている。味気がない部屋であるが他の街から来た人の取調べだとその程度でいいのかも知れない。
「さぁ、質問に答えていただきましょうか」