3話
「マスター!!!大変です!!」
クリアナはギルドマスターの部屋をノックするとすぐにドアを開けた。
「クリアナ、俺の返事を聞いてから開けろ。それはいいとしてどうした」
「すいません。そんなことより!!魔の森の山奥で、龍種を確認しました!!!それもSSSランク級、いやZランクかもしれません!」
「なに!!!???Zランクはこの世に3体しかいないんだぞ!!なぜ今まで分からなかった!!」
「分かりません!!ですが、冒険者パーティ『血の契約』からの報告です!!こちらでも、アーリア水晶で確認できました!!」
「ほんとうなのか……個体名は」
「それが……はじめての個体です」
「なに!!!新しいZランクが急に出てきたということか!!??」
「そうなります…」
クリアナとギルドマスターの顔がどんどん悪くなっていく。そもそもランクというのは魔物に付いている危険度だ。低い順に、E D C B A S SS SSS Zとランクがある。SSランクまで行くと『災害級』SSSランクで『天災級』Zランクは『伝説級』と呼ばれることもある。冒険者にも同じようにランクがつけられておりSSSランクは現在30人ほど世界にいる。Zランクはいない。
魔物に付いているランクは同じランクの人が4人いて危険が少なく討伐できる基準になっている。
なぜZランクが冒険者にいないか。理由はいくつかある。まずはZランクが桁違いに強いこと。SSSランクとZランクの間には大きな差がある。Zランクは国を挙げてやっと討伐出来るかどうかというレベルである。SSSランクとはわけが違う。
次にZランクが少ないこと今回確認されたので4体目。この広い世界で4体しかいないのだ。SSSランクは何百体といる。出会う可能性が少ない
次にZランクの個体の性格が穏やかなのもある。強者の余裕というやつだろうか、こちらから攻撃しない限りは、それにダメージを与えれるレベルで敵対される。Sランクの冒険者の攻撃で敵対されることがわかっている。逆に言えば攻撃さえしなければ見逃してくれるということだ。
最後に魔物は長く生きるほど強くなる性質がある。Zランクは最低でも1000年は生きないといけないと言われている。大体はそれまでに討伐されるのが多いのだ。
だが、それは今までの個体であって今回の新個体もそうとは限らない。現に急にZランクが現れたのだ。魔の森は最大でもSSランクの魔物しかいない。要するにSSSランクも確認してないのに急にZランクが出るのはおかしい。確認もアーリア水晶というSSSランクの魔物だけを映し出す魔道具があるから間違あることはないはず。
「種族は?」
「龍種です。『血の契約』が見たと言っています」
「そうか、『血の契約』に話を聞こう。4人いても話が纏まらないからリーダーのマルスだけよんでこい」
「分かりました。失礼します」
ここで落ち着いているのは両方とも長いからだろう。ギルドマスターは考える。
(今回は龍種のZランクか。龍種は3体目。なぜ急に…)
Zクラスは、極彩龍、黒影龍、スライムエンペラーの3体。3体とも1000年は最低でも生きていると言われている。魔物は長い時を過ごすほど強力になると言われている。それに3体とも会話ができる。良い人?たちでもある。国によったら王様直々に挨拶に行くという国もある。なぜそんなことが出来るのかというのはいる場所がほぼ決まっているからというのがある。
なぜかほぼ同じ場所から3体とも動かない。ご飯を食べる時や気が向いた時にしか動かないしちゃんと戻ってくる。1ヶ月ほどの期間はあくが……
要するに会おうと思えば会えるというわけだ。
(今回の個体も穏やかで、話し合えたらいいのだが…)
そんなことを考えていると、部屋をノックする音が聞こえきた。
「マルスです。例の龍について話に来ました」
「入れ」
「失礼します」
目の前にいるマルスはSSランクパーティ『血の契約』のリーダーだ。金髪の長身で顔がイケメンである。残念ながら魔法は使えないが、指示が的確で剣の実力も高い。SSSランクも間近と言われているほどの実力者である。このギルドの一番強いパーティである。
当然ギルドからも周りの冒険者からの信頼も厚い。
「とりあえず座れ。聞こう」
マルスは部屋の中央にあるソファに腰掛けた。ギルドマスターもマルスの対面に座った。
「じゃあ聞こうか」
「はい、まず見た目は、7メートルぐらいの大きさでした」
「7メートル?ずいぶん小さいな」
極彩龍は80メートルほど、黒影龍は70メートル、スライムエンペラーは100メートルを超える大きさがある。それに比べて7メートルというのは小さいというか小さすぎる。
「はい、それで見た目は黒色ベースに赤のラインが入っている感じでしょうか」
「服みたいな例えをするな」
「それが一番分かりやすいです。性格は、とりあえず襲ってくるとかはありませんでしたが、周りにあった大量の木が倒れてました。おそらく気まぐれにブレスでも放ったのかもしれません」
「お前近くまで行ったのか??」
「依頼で、魔の森に入ってましたから。その途中で見かけました」
『血の契約』はSSランクである、カリギュラスという個体を討伐しにいく途中で見つけたのだ。Zランクの個体を見つけるとすぐにカリギュラスの討伐をやめ、街に戻ってきてすぐ報告したというわけである。
「そうか、色々疑問が湧いてくるが、聞いても分からないだろう。ほかに気づいたことはあるか」
「そうですね………あ、そのZランクの近くが地面がぬかるんでたので水属性の攻撃を使えるのかもしれません」
「そうか。もうないか?」
「あとは関係ないかもしれないですけど近くに小屋があったぐらいですかね」
「なに?そんなものあったか?」
「私の記憶にもないですが、ありました。中に入って人を探しましたが誰もいませんでした。あとは僕の読めない文字が書かれた手紙が一枚ありました」
マルスが懐から紙を取り出し、ギルドマスターに渡す。
「俺も読めないな。どこの字だ?こんな文字あったか?」
「一応、呼ばれるまでの間に調べてたんですけど、見つかりませんでした」
「そうか、こっちでも調べておこう。ご苦労だった。下がって良いぞ。それと依頼は失敗にするが罰則はなし、それと後日情報量として今回の依頼の報酬とそれに幾らかプラスして渡す」
「分かりました。失礼します」
マルスは部屋を出て行った。
(俺が直接見に行くのもありかもしれないな。準備だけしとくか)
ギルドマスターは準備を始めた。
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「龍の目は真実を見抜き 龍の牙は障害を噛み砕く 龍の鉤爪は闇を切り裂く 龍の体はあらゆる物から守る盾 我が体内に眠る古の龍よ 我に力を貸せ 顕現せよ!帝王龍!!!」
呪文を唱えると、龍之介の体にある魔力が一気に放出された。そしてそれがまた体に張り付くように身体を形成していく。
そして最後に出来たのは龍、というより竜だ。
それもそこまで大きくない。頭に関しては森から頭が出てないし身体を細めたら木の間を抜けるのもいけるんじゃないだろうか。
(これが龍化か。思ったより小さいな。龍っていうぐらいだから、もっと小山ぐらいあるのかと思ってたのにな)
他の龍はピンキリの大きさである。小さいと言われている龍種のワイバーンは5〜7メートル程度、大きくなると100メートル超えるものもいるし、一番大きい龍は250メートルは大昔に確認されている。
それを知る由もないが…
「な、なんだあれ……」
声がする方を見ると金髪の長身の男とケープを着て杖を持った女、小さい身体の外套を着た人、鎧を着て盾と剣を持った男の4人がいた。
(やばいやばいやばいやばい、見られた見られた見られた見られた)
まさかこんなところに人が来ると思っていなかった。想定していなかったのだ。どうしようかと考えていたところ…
「逃げるぞ!ギルドに報告だ!!!全員生き残るぞ!!」
「「「おう!!!」」」
4人は2人組になって逃げていった。
(たすかった…のか?)
いきなり逃げられると不安になる。
(しかもギルドって言ったか?討伐されるかもしれないんじゃ?)
そうなるとすごい不安になる。そしてもう一つ不安がある。それは、龍化からの人への戻り方が分からないのだ。とりあえず色々試しては見ている。例えば同じ呪文を唱えるとか、魔力の流れは分かっているのでそれを止めてみるとか人に戻るイメージをするとか…
(どれも出来てないんだよなぁ)
『悪い、俺だ』
『やっぱり来ましたか』
龍化した状態で喋るとなんというか、空から声が降ってくるというか不思議な感じがする。
『龍化で喋るとそんな感じなんだな』
どうやら神様も知らなかったらしい。
『それで人に戻る方法だが、呪文とかじゃない。強くイメージするんだ。人になるイメージだ。魔力でできた身体を全部体内に取り込むようなイメージだ。以上だ。じゃあな』
ということらしい。人に戻るではなく人になるイメージらしい。何が違うのかさっぱり分からないがそういうことらしい。
『人になるイメージ…魔力でできた身体を体内に取り込むイメージ…』
ぐ〜とイメージをする。かなりの時間イメージした結果…
光を放って、人に戻ることができた。光を放たないといけないらしい。仕方がない。
「まだなんもしてないけど、多分封印する、危なくなった時に使うやつだな」
龍之介の予想ではかなりの強力な能力だったと思う。さっきの人達もすぐ逃げていったというのもある。もちろんそんなに強くないからと考えられなくもないが、すぐ逃げるとなるとそこそこの強さはある。少なくとも人よりは強い。ので封印することにする。
「とりあえず街まで行ってみるか、さっきの人の後をついていけばなんとかなるだろ」
そんな軽い気持ちで、リーダーらしき、金髪の後を追うように森を降りていった。
龍之介は知らないがマルスは小屋に行くためにその方向に逃げたので街は全く違う方向にある