バンドセッション見学記
体験は伝聞では得られないことを得る。
体験に飛び込んでみるのは、何時でも一興なものだ。
知り合いのバンドがおこなった二時間のスタジオセッションにお邪魔する機会があった。
断っておくと筆者は音楽についてはてんで素人だし、恥ずかしいことにライブにも行ったことはないので、生演奏を聞くというのはこれが初めてになる。
技術的なことは分からないので、抽象的でなんともありきたりな感想だが、生というのはこんなにも圧倒されるものか。それがいの一番に感じたことだ。
普段音楽プレイヤーで聞く音楽とは全く別物に感じる。スタジオの空間を震えさせながら体を叩き入ってくる音。奏者全員の入り込んだように、観覧者には神妙さを感じさせる顔。
確かにこれは『生』ではないと感じ得ることが出来ない代物だが、逆にこれほどの威力を秘めているからこそ普段の聞く形になっても、音楽には人に働きかけ心に作用するのだと、素人の的はずれな理解やもしれないが思った。
さて、セッションの雰囲気だが、基本はまるで雑談するように誰かが演奏し始めた音に合わせるように各々が演奏したり、今日演奏する主題の曲をそれぞれが各人にアドバイスを交えながらフレーズフレーズ、時には通しで演奏したり。なんとも和気藹々とした中で心地よく音が響き、ネットスラング表現を用いれば『エモい』とでも言うのか、なんとも言われぬ良さを感じる。
終了四〇分程前、バンドオリジナルのキャラクターをテーマに曲を作ろうという話になった。
テンポから曲調までアイディアを出し合いながら即興で組み上げていく。メンバー各々が演奏者のみならず作曲者でもあるが故なのか、素人の筆者には驚くようなスピードで曲の全体像が作られようとしていた。
ただ、そうしていると終了まで一五分程に。二時間とはこんなに短いものと驚くとともに締めの曲を演奏しようとなり、少々の相談から今日の主題である曲がチョイスされた。
演奏が始まると心地よさとともに、この時間が終わることへの心残りを強く感じた。
たまたま入り込んだ闖入者の立場でおこがましい推察だが、こんな気持ちだからこそ彼らは忙しい日常からこうして集まる機会を幾重も作り、そしてこれからも作っていくのだろうと思った。
筆者は三日坊主なんて目ではないくらい物事を続けないが、何からをやってみたいとゆう気持ちだけは一丁前だ。
この体験を通して何に挑戦してみたくなったかは、ご想像にお任せしよう。