貴方と人形《わたし》※人間の性的欲求に基づく少々の猥雑表現有
唐突に、ボクを見据えながらカノジョは話しだした…
初めて起動してマスターを見た時から気づいていましたよ。
マスターが向ける隠しきれない情欲の眼差し。股ぐらに抱いた劣情と獣欲。
それでもマスターは、精一杯の冷静なつもりで笑いかけてきましたね。
あんなに私に欲望をぶちまけたくて仕方なかっただろうに。もう頭の中では私をどう犯し、ものにするかしか考えていなかっただろうに。
そんな焦れったさ。欲望と臆病と優しさ。それがマスターが私を買った理由。
人との情事を恋い焦がれ、然りとてその本懐は果たせぬ自分。どんなに道具を使えど自慰では到底焦燥を埋められず。
だから大枚を叩いて私を買った。生きているように振る舞う人形の玩具。
自分の欲望を思いのままぶつける人形を。
しかしマスターは人の形に畏れを抱いた。私をモノでなくヒトとして見てしまった。
だからあの時、なにも言わずに犯せず、誤魔化したような笑みで私を見るしか無かった。
そんなちぐはぐさに、私はマスターが私を大切にしてくれること、私と深く繋がろうとしてくれることを感じたからこそ、単なる所有者ではなく、愛しい貴方であることを私に刻み、貴方に寄り添い、貴方の求めに応じ、貴方と伴にありたい、そう誓ったのです。
長き口上の締めには、平凡で氾濫した言葉ですが、愛していますよ貴方。
ボクは容易く見透かされていた事実と、愛の囁きに赤面しながらカノジョにこう言った…