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第12話 車

「トーヤさんの世界の乗り物は凄いですねぇ、生き物の力使わないなんて。」


 テレビを見ていたリューカルさんからそんな声が聞こえた。彼女が今見ているのはテレビ番組――ではなく、車のCMだ。最新の機能てんこ盛りの今話題の車で、購入者が増えているそうだ。

 ちなみに俺は車を持っていない。自転車通勤だ。


「昔はそれこそ、馬とか牛とかに車を引かせていたらしいけどね。今はもっぱら機械だね。あ、人が曳く車もあるよ?」

「え、何ですかそれ。人がこの鉄の塊を曳くとか拷問ですか?」


 あ、ヤバい人力車を勘違いしてらっしゃる。いや、俺の説明が足りなかったのが悪いんだけどさ。

 慌てて俺は人力車について説明して何とか納得してもらった。


「へぇ、そんな乗り物もあるんですね。」

「リューカルさんのところもおんなじ感じじゃないの?」


 聞く限りではリューカルさんの世界は俺の世界で言うが中世ヨーロッパが一番近いように思える。となると同様に馬車なのだろうか。というか、それ以外の車の系統が思いつかないんだが。


「私の世界では馬車も確かにありますが、ワイバーン車なんてものもあります。」

「ワイバーンってことは飛行機みたいに空を飛ぶんだ?」

「はい。馬より餌代はかかりますが、まー馬より早いわ空飛べるから地面の良し悪し関係なく移動できますから結構重宝されたりします。」


 作品によってドラゴンの仲間か全く別物の存在として扱われるワイバーンだが、リューカルさんの世界では前者に当たる存在みたいだ。しかし、ドラゴン視点で言うとワイバーンは人間で言うところの猿のようなものらしい。

 ……ん?待って。確かリューカルさんもそうだが、ドラゴンって小さいんだよな。ワイバーンも小さいのでは?


「あれ?言ってませんでしたっけ?私たち、確かに小さいですけど力は普通に人間凌駕してますからね?トーヤさん5人だって余裕で持てますよ。ワイバーンも然りです。」


 知らんかった。いや確かに、この空間でそんな力自慢するような場面は訪れないから仕方ないことではあるが……今度くるみ割ってみてもらお。

 しかし、ワイバーンは手懐けることができるんだな。いや、もしかして卵から育てているのだろうか。――どうやら卵から育てるらしい。


「最近では新たな魔物が曳く存在として注目されているんですよ。」

「へぇ?鳥型の魔物とか?」

「鳥型は荷物だけならまだしも人となると揺れやすいので実は不人気なんです。」

「じゃあ狼とか?」

「狼も余程の存在じゃなければ車を曳くほどの力はありませんて。答えはグランスパイダーです。」


 グランスパイダー……え、蜘蛛!?

 それは何とも想像したくない図だな。車を曳けるほどのサイズの蜘蛛となるとそれは大きなものになるだろう。こちらの世界の人間に見せたら大多数は卒倒ものだろう。俺だって平気でいられる自信ない。


「えっと?何でそのグランスパイダーが人気なの?」

「そりゃ6本脚から生まれる安定した走行。半端な魔物を物ともしない力。崖も登れるし、生み出される糸は服にも使えるんです!」

「なるほど……確かに利点は多いなぁ。逆にマイナス点はあるの?」

「見た目不気味なところですかね。」

「あ、そこはやっぱりそうなんだ。」



「リューカルさん的にはどの車が一番いいの?」

「いや、私飛べますし。」

「そうだね。」

「余程の物じゃなければ余裕で持てますし。」

「うん。」

「お金もったいないですし。」

「はい。」

「つまりですね?」

「つまり?」

「乗ったことありません。」

「そっか……」

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