シークレット・ゲーム
馬鹿だと思った。いや、実際全員、馬鹿だ。誰も彼も。神さえも気づかないなんて、馬鹿ばかり。全て、全て俺の計画通り進んだ。ほとんど誤差なく進んだ。『異空間の神世界』を手に入れると、『大切』を守る世界を壊すと決めた、『神の石』を手に入れると決めた、あの日から。
あの日、『大切』に絶望した俺は壮大な計画を立てた。だがその計画には大きな障害がある。それはきっと、誰かが俺の邪魔をするということ。何処かの英雄の物語のように、力を持った誰かに俺は倒される可能性がある。だって、破壊と"死"を望む俺は世界にとって……いや、異世界にとって悪役だから。だったら俺は、悪を挫く正義のように逆に正義を挫いてやる。俺にとっての悪は俺の目的の邪魔をする奴らのことだから。
俺が今一番必要としているのは『神の石』と呼ばれる伝説上のモノ。賢者の石なんて目ではない。錬金術を極めた錬金術師だけが、神だけが触れる事を許される至高の一品。そして破滅をもたらす禁忌の一品。『神の石』は神さえも世界さえも消滅させ、持ち主の願いを叶え、不老不死を与えると云う。まさに俺が願う、望む力だった。俺だけが絶望しない、感情さえもない世界を造るにはその石が必要不可欠だった。
だが、その石を造るには条件がある。『異空間の神世界』と「一人分の絶望」が必要だった。「一人分の絶望」はどうにでもなる。最悪、俺自身を犠牲にすれば問題ない。問題なのは『異空間の神世界』だ。元人間の『原初の五柱』が主人であり守り神を勤める『異空間の神世界』。そこを支配しなければならない。ならば、やることは一つ。俺は目的のために人を殺し、絶望を与え、『大切』を絶望で奪いまくった。俺の技術は俺の負の感情と共に膨れ上がり、ついには神をも超える力となった。
俺が危ない思考を持ち、亡き神々が造った『異空間の神世界』を支配するとなったら『原初の五柱』は絶対に邪魔をしてくる。それは予想が簡単にできた。元人間であろうとも神であろうとも世界を、異世界に調和を与えようとするのは世の常。強くなったのは『原初の五柱』のためとも言える。俺が危険人物としてピックアップされれば、彼らは恐れる。そして、悪を挫く勇者を作り出す。その勇者をおびき寄せるために俺はわざと自分を囮にして、表舞台に登壇した。大きな絶望を、『大切』を奪うためとも云う。そして、『原初の五柱』が守る『異空間の神世界』に足を踏み入れた。案の定、神々達は俺を恐れていた。「そのような恐ろしい目的のために、此処を使わせるわけにはいかない」と。だが、俺は多くの技術を取得した。例え神であっても負けないほどの魔法や錬金術を俺は身に付けていた。さあ此処からが大変だった。相手は五人。俺は一人。元人間であろうともその力は歴然だった。
極端に言おう。支配は失敗だった。此処までは計画通りだ。神を超える力と言っても神五人に勝てるかと問われれば、それは否だ。だがこれで彼らに思い知らせる事が出来ただろう。待とう。神とは言え元人間だ。時期に死ぬ。それに彼らが何か仕掛けて来るのは目に見えている。その一つが『異空間の神世界』を出現させるための条件の改変だ。条件を変えたところで俺は諦めない。それに条件を変えたならばその上を行けば良い。『異空間の神世界』の条件、「解決すること」。俺が解決してもその効果は意味がない。ならば、違う奴にやらせれば良い。道具を使い、改竄した。そうして駒となる者を弾き出した。改竄道具は色んな役に立った。駒の移動とか。だが条件クリアには時間がかかった。『異空間の神世界』を守る砦。そう簡単に行かないのは分かりきっていたし、なにより駒にやらせているのだ。時間はかかるはずだ。しかし、確実に目的達成に近づいている事は間違いなかった。
そんな中、面白い存在がやって来た。俺の名を知る異世界の誰かが、本来呼び寄せた奴の場所に侵入してきたのだ。嗚呼、やっと来たか。異世界から侵入するということは『原初の五柱』を知り、俺を知り、『異空間の神世界』を知る人物だということ。つまり、今回の駒は白ということだ。『原初の五柱』は恐らくこの駒に最善策を加え、俺を倒そうとする。ということは、『異空間の神世界』の扉を出現させる条件を満たす可能性が高い。俺は知らぬフリをした。本来細工を施していたもう一人の駒も無事……そう無事合流した。もう一人の駒は魂を異世界のものに憑依させ、存在を保っていた。長い間憑依している、ということはもう一人の駒は戻れないだろう。帰れるとしたら召喚となる。と、いうことは。だいだいの『原初の五柱』の最善策がわかった。効果はこの目で見ないとはっきりとは分からないだろうが、問題ない。もう一人の駒は俺の攻撃で元に戻るだろう。小さな動物。それは俺の計画を狂わせるほどの歪みにはなり得ない。
やはり、俺の計画通りだ。駒は改竄した設定にそって解決して行き、イレギュラーを引き連れて来た。恐らく『原初の五柱』の細工だろうが、俺にはわかっていた。そうして、扉は開かれ、『神の石』は完成した。駒達は最終決戦だと思っているようだが、違う。『神の石』の力を吸収し、『原初の五柱』が細工を発動させるのを待った。情報通り、『タイムリミット』と名付けられた馬鹿な代物はただ単に馬鹿な代物だった!!もっと考えれば良い案があったかもしれないのに!!神と云うだけあって賢いのだろうと思ったが、俺の手のひらで踊らされていることにも気づかないなんて!!敵がそこにいることにも気づかないなんて!!
そう、『原初の五柱』には敵がいた。俺じゃない、身内。一度目の支配。あの時、俺は成功していた。俺が『原初の五柱』のうち三柱をこちらの手中に納めていた。闇堕ちさせたのだ。だから、残りの二柱の手の内は筒抜けだった。『タイムリミット』を作動させたからと言って俺が倒せるはずもないだろう?そのあとは演技に徹した。『原初の五柱』側が、駒側が有利であるように見せかけた。『タイムリミット』の効果は受けた時にだいたいわかった。ほとんど情報通り。俺の記憶は抹消され、侵入してきた駒の異世界に転生させられた。化け物退治で俺のこの感情が発散されるとか、馬鹿じゃねぇのかな。でも、記憶は本当に抹消されていた。だから暫くの間、俺は幼い頃に戻っていた。記憶はなく、言動は幼くなった。あんなに極めた錬金術も魔法も使えなくなった。あの年齢の時の俺は錬金術に興味はなかった。まぁそんなのどうでも良い。記憶を完全に抹消されていると思っている事の方が重要だ。知っていたから、対策は簡単だったんだ。
『神の石』。あの時俺は、全ての力を吸収していなかった。したのは、半分。その余熱を残りの石に隠し、石を加工して身につけた。没収される事も想定していたから、ちょっと細工をさせてもらった、倒される演技をしている時に。
あとは簡単だった。『神の石』を媒体に少しずつ記憶を取り戻して、少しずつ侵入してきた駒を中心に闇堕ちさせて行った。闇堕ちさせるのは簡単だ。相手のトラウマを最悪な方へ弄り、闇に引き摺り込めば良い。簡潔に云えば、希望を失わせれば良い。幼い姿の俺に彼らは馬鹿にも色々教えてくれた。話だけじゃなく、表情でもわかった。侵入してきた駒は前隊長に未練があった。そこを使った。イレギュラーの駒に似た二人。片割れは肉親や作り主、かつての親友への未練と悲しみ。もう一人は作り主の娘、最初の主を救えなかった事による自分への憎悪と懺悔。そこにいるのは多くの絶望と『大切』を抱えた者達だ。絶望に叩き落とすのは容易いだろう。幼い姿に気を許した、神の最善策は的確だと思い込んだ罰なのだろう。
そうして着々と力を取り戻し、異世界の奴らを手中に納めて行った。『異空間の神世界』は『原初の五柱』のうち二柱によって消滅している。が、三柱はこっち側。無理を云えば新たな『異空間の神世界』を造る事も可能だ。だがそれは最期の策だ。俺の手元には加工した『神の石』がある。余熱があると言っても半分の力には「一人分の絶望」が必要だ。それは補われなければならない箇所。そこが足りない。此処には絶望が多くある。だが、その絶望だけでは俺の復讐はなし得ない。そう、俺を倒す、救うと言ったあの救世主だ。あの駒がいる。俺には多くの技術が戻ってきていた。もう一度、此処に呼び寄せる事は可能だろう。
嗚呼、長い時間がかかった。これで準備は整った。闇堕ちしたの駒の願いも叶えた。それはすなわち、俺の復讐の成功を意味する。そうして、召喚された駒。やはり戻れなかったあの駒は同じものを入れ物にしたようだった。だが、その姿ではなにも出来ないだろう?倒せたと思っていた俺が現れてどうだ?自分の無力さを思い知れ。誰が勝ったか思い知れ。俺の目的は、必ず成し遂げる。その一端をお前にも味わせてやる。お前の「少しでも希望を求めたのに絶望した」を利用して、新たな『神の石』を造り上げよう。そうして、今度こそ始めよう。此処からが本番だ。必然?偶然?そんなの関係ない。これが運命、ただそれだけの事。これからは俺の物語だ。
俺が求めた世界への序章は始まったばかりだ。
『ただいま異世界巡回中!』これにて完結となります!此処まで読んでくださりありがとうございます!楽しんでいただけたならば、嬉しいです。ウチは楽しかったです!いやぁ……ゲームの設定考えるのが一番楽しかったです(笑)あまりメリーバッドエンドってやったことないなぁーとやってみたかったんですが、錬金術師にとってはハッピーエンドの始まりですねこれは。
まぁ良いとして。本当に読んでくださりありがとうございます。予定を大幅に過ぎましたが、満足です。はい。
それでは、また何処かでお会いしましょう。See you!




