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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

INNOSENCEシリーズ

恋の花咲く ~恋人と行く温泉旅行~

作者: 南條 樹

恋と付き合い出して五ヶ月が経った。

その間に美優と佳奈には、私と恋が付き合っている事をカミングアウトした。二人の反応が怖かったけれど、二人共私達の事を受け入れてくれた。そのお陰もあってか、日々の生活が楽しく過ごせている。

そんなある日、恋の友達である三井さんが、福引で温泉宿の宿泊券を当てたらしく、私と恋、美優と三井さんの四人で行く事になった。佳奈も行きたがっていたが部活が休めないのと、宿泊券の人数が四人までだったのだ。因みに、何故美優が誘われたかと言うと、三井さんと美優は幼馴染だとか。私と恋と互いに友達を紹介する為会った時に、気付いたのだとか。

そんな私達は今、電車とバスに揺られ、温泉宿の近くのバス停に降り立った。


「うわー! 何処を見渡しても、山一面真っ赤だね!」

「本当に綺麗だよね」


目の前に広がる景色は、山々の木々が真っ赤に染まり辺り一面が絨毯の様だ。


「最初の目的地は、こちらの方角で良かったかしら?」

「はい、そちらで合っています」

「それじゃ、行きましょうか」

「「「 はーい 」」」


私と恋が先に歩き、後ろから美優と三井さんが付いてくる形だ。勿論、私と恋は恋人繋ぎで手を繋いだまま歩いている。


「あの二人見ていると微笑ましいね」

「私達も二人みたいに手繋ぐ?」

「え!? な、何急に言い出すの……」

「顔真っ赤にして拒否しても、説得力無いよ」

「だ、だって……」


三井さんをからかいながら一緒に歩いている姿は、幼馴染と言うより初々しいカップルにしかみえない。それを美優に言ったら怒られそうだけど。そんな事を思っていたら、恋に握られている手に力が込められた。


「咲は、私だけ見てれば良いの」

「はいはい」


相変わらず嫉妬心が強い。

恋が私に対する独占欲が強いのは何時もの事だから、ついつい返事も軽くなってしまう。


「もう…… 本当に分かっているの?」

「私が好きなのは、恋だけだよ」


そう返しつつ、ギュッと手を握り返すと、満足したのか恋の表情が和らいだ。




最初の目的地に着いた私達四人は、目の前に広がるコスモス畑に魅了されていた。その奥には川のせせらぎが聞こえ、川を囲うように彼岸花が咲いていた。

先程までは真っ赤な絨毯の様な紅葉に魅了されていたのに、今度は一面ピンク色の絨毯だった。


「綺麗だね……」

「ここまで綺麗だとはね」

「「うん」」


私達の予想を良い意味で裏切ってくれたこの風景は、時間を忘れる程に素敵な景色だった。




コスモス畑を堪能した私達は、宿へと向かった。

宿へ着きチェックインを済ませ、受付の人に渡された鍵を持って部屋へと向かった。部屋に着いた所で一旦私と恋、美優と三井さんに分かれ、夕飯の時間までは自由となった。


「まさか二人部屋になるとはね」

「私は、咲と二人きりの方が嬉しい」


恋は私に抱き着くと、キスを迫ってきた。


「も、もう。しょうがないね」


『ちゅっ』と、軽くくちびる同士を触れさせるだけのキス……

それだけでも十分幸せで心が満たされる。


「もっと……」


軽いキスだけでは足りないのか、恋のおねだりタイムが始まった。学校とかでキスする時は恥ずかしがってねだる事は無いが、二人きりだと途端に甘えてくる。私にしか見せない表情をされると、ついつい私も甘やかしてしまう。


「も、もう…… しょうがないなぁ」


恋を抱き締めると、唇にもう一度キスをする。今度はさっきよりも長くキスをする。面倒臭さそうに言いながらも内心は、こんな恋を独り占め出来るとあって嬉しかった。




「まさか、部屋が別々になるとはね」

「まぁ、それは仕方無い事じゃない。それに私としてはこっちの方が嬉しいからね」

「それは私も同じ」


宿へは、予め予約の電話を入れておいたのだが、受付の人の手違いで四人部屋が用意出来なかった。その代わりとして、二人部屋を二部屋用意して貰い、宿泊代とかは当初の予定通り宿泊券で賄えた。宿側の不手際でもあったので、お詫びで何かしてもらえるらしい。

私としては、美優と二人きりになれるのならそれで良かった。昼間に行ったコスモス畑では、美優と手を繋ぐのを嫌がったが、本当は手を繋ぎたかった。ただ私が、人前で手を繋ぐのが恥ずかしいだけだ。美優だって、その事を知っているから本気で言ったりはしない。それに秋雨さん達には、美優とは幼馴染と言ってしまった以上、今更恋人ですとは言い難い。


「夕飯まで時間あるけど、どうしよっか?」

「私は、美優と二人きりになれるなら、何処だっていい」

「桜は本当に恥ずかしがり屋だね。まぁ、そこが可愛いのだけれど」

「うう…… だって、美優と恋人同士になれると思って無かったし、美優は美人だから、一緒に居ると皆の視線集めて恥ずかしい」

「桜だって、十分可愛いよ」




恋さんに、双子の妹の咲さんを紹介して貰った時、咲さんの友達も一緒に紹介された。その時に居たのが、今私の目の前に居る美優と吉岡佳奈さんだった。小学生までは美優と一緒に過ごしていたけれど、中学生になる前に両親の都合で引っ越す事になった。その為、美優とは離れ離れになってしまった。私は、物心が付いた時から美優と一緒に居ていつの間にか好きになっていた。告白する勇気が無くて、結局離れ離れになってしまい寂しかった。それが高校で再会して、美優から告白されて驚いたけれど嬉しかった。


「そんなにも私の事が好きだったなんてね、告白して良かったと思えるよ。私も小さい時からずっと桜の事が好きだったよ。だから、桜が遠くに引っ越すと聞いて凄く寂しかった」

「私も、美優と離れ離れになって寂しかった」


お互いギュッと抱き合うと、唇同士を触れさせ合うキスを何度も繰り返した。




夕飯の時間となり、私達四人は食事処へ行くと、そこで働いていた仲居さんに案内され個室へ通された。個室に入ると、前菜や食前酒 (?) など色々な料理が所狭しと並べられていた。


「うわあ! 美味しそう!」

「これは、食前酒?」

「桜、これ苦手でしょ?」

「う、うん」


其々席に着くと、目の前の料理に視線が釘付けになる。そうしていると、先程の仲居さんが来て、料理の説明をしてくれた。


「そちらは当宿のオリジナルジュースです。 皆さんが未成年ですので、こちらを用意させて頂きました。それでは、ごゆっくりどうぞ」


仲居さんが去ると、私達は目の前の料理を次々と堪能していった。

料理の数も然ることながら、何れも美味しくて箸が止まらない。


「咲、はい」

「ん?」


恋の方を振り向くと、口の中に何かを入れられた。


「咲もやってよ」

「はいはい」


あーんと、箸を恋の前に持っていき食べさせてあげる。

私達の向かい側で食べていた美優達が、何故か顔を真っ赤にさせていた。


「貴女達、恥ずかしく無いの?」

「「ん? 何の事 (でしょう) ? 」」

「はぁ……二人に聞いた私が間違っていたのかも」

「…………」


その後も、恋と食べさせ合いっこしながら夕飯を満喫した。




「あの二人は私達にカミングアウトしてから、色々とオープンになったよね」

「そうだね……」

「どうした? 何か元気無いけど、夕飯食べ過ぎた?」

「ううん、違うの。あの二人を見ていると、羨ましいなぁって思えちゃって、私も美優にして欲しかった」

「…… 恥ずかしい気持ちも有るけれど、私も桜にしたかったよ。でも、いざやったら桜の方が恥ずかしがると思うけれど?」

「そ、そうだけど…… あの二人を見ていると、私も美優と付き合っている事、言った方がいいのかなって思ったりするし、それすれば、もっと美優と一緒に居られるのかなって」

「無理して言わなくても良いよ。それに、私は桜から離れたりしない」

「……うん」


やっぱり美優を好きになって良かった。私の事をちゃんと見てくれているから。




「食べ過ぎちゃったね」

「咲が食べさせてくれたから、私も食べ過ぎたよ」

「それ、私のせい? でも美優達驚いていたね。顔真っ赤にしてたから、やってる方より見てる方が恥ずかしいのかな?」

「私は、ずっと咲しか見て無いから知らない」

「もう、恋ってば……」

「それはそうと、あの二人付き合っていると思うよ」

「え!? ど、どうしてそう思ったの?」

「雰囲気がそんな感じがした。三井さんは、私と同じ恥ずかしがり屋なのか隠してるけれど、上代さんの方はそうでも無いと思う」

「そうなんだ…… 言われてみれば、そんな雰囲気があるかも。あの二人の事は、本人達が言わない限りそっとしておいた方が良いかもね」

「そうだね。それよりも、折角温泉があるのだから、入りに行こうよ」

「うん!」


着替えを用意して、恋と一緒に大浴場へと向かった。その途中、美優達とすれ違い


「咲達は今から?」

「うん。夕飯食べ過ぎちゃったから、部屋で少し休んでいたの」

「ああ、あれだけ食べさせ合いっこしていれば、食べ過ぎにもなるよ」

「あはは……」

「恋さん、露天風呂からの眺め良いですよ。紅葉がとても綺麗でした」

「部屋から見える眺めも良かったですから、露天風呂の眺めも楽しみですね」

「「それじゃあ」」 と言って別れると、私達は手を繋いで大浴場へと向かった。




温泉を堪能した私達は、部屋に戻るとのんびり過ごしていた。


「……明日で帰るのかぁ」

「また来ればいい。今度は二人きりで」

「そうだね…… また来れば良いよね。恋となら何処に行っても楽しいよ」

「むう。私の台詞取られた」


部屋の灯りを消して、私達は布団に入ると、寄り添いながら一夜を過ごした。




「美優と旅行が出来て、私幸せだよ」

「まだまだだよ。桜はいっぱい幸せにならないと。勿論それは私とだよ」

「美優……」


唇と唇が触れ合うだけのキスを何度も繰り返し、二人でこの幸せな時間を満喫しながら一夜が更けていった。

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