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唐突なフラグ。

「っあーー結局無駄金使って終わったな…今日は運ねぇわ」


むしゃくしゃした気持ちを抑えるように、俺はがあっと髪の毛を掻き乱す。結局あの後も馬券を何枚か買ったものの、つぎ込んだ金の元を取ることが出来るほどの当たりは出なかった。あたりが出るまで有り金全部をつぎ込んでやりたいが、今悔しさに身を任せて教会の金を使ったりなんかしたらもっと泥沼にハマる気がしたので、俺は仕方なく帰る決意をする。たまに拝借するくらいならバレはしないが、こういうことが起こるたびに調子に乗って金をすくねていると大きなしっぺ返しが来るものだ。こういうのに大切なのは程度と引き際。まあ教会の金を管理しているのは神父の俺だから、よっぽどの事がなければバレる心配はないとは思うが。


「帰るか…」


とにかく帰ろう。ここからは本当の自分にはまた蓋を占めて、仕事の時の優しくて控えめで聡明な(笑)神父さんに戻るのだ。いつもここへ来る時はショッピングセンターに買い出しという大義名分を使っていて、今日もそれは変わらない。つまり俺は、1週間に1回ショッピングセンターへ買い出しに行っている裏でこっそり競馬場で自己を解放してるのである。だがそんな時間ももう終わりだ。ああ、さよなら俺の聖域サンクチュアリ……

そんなふうに後ろ髪を引かれるような思いで出口に向かっていると、肩に何かがぶつかる感覚がした。ほぼ同時に小さく「わっ」という声も聞こえる。声の方を向くと、小柄だが大人っぽい格好をした女の子だった。大体高校生とか大学生ぐらいだろうか?


「あ、すみません…!」

「こちらこそすみません。」


俺は基本的に競馬場にいるくだらなくて面白いおっさん以外信頼していないので、仕事モードの爽やかな対応を咄嗟にした。というかこんな大人しそうな女の子の前でいつもの態度をとったら怖がられるに決まっているのだ。あまり頭の良くない俺だってそれくらいは分かる。


「えっと…」

「?なんですか?」


女の子は遠慮がちにそう言うと、上目遣いで(俺が180cm半ばぐらいなので当たり前ではあるが)微笑みながらこう続けた。


「競馬のルール…教えてくれませんか?」


***


「へえ、馬が好きで興味あったはいいけど、下調べとかもせずにぶっつけで来ちゃったと。」

「後悔してます…」


彼女はここらに住んでいる大学生らしく、この間成人になったばかりらしい。記念に競馬でもしてみようと思い立ってそのままここに来てしまったのことだった。確かにここまでカオスかつトチ狂ったオッサンの巣窟は他にない。大人しそうな女の子が1人で来るべき場所では絶対に無いのだ。そもそも女の子1人ということ自体目立つのに、大体こんな所にいるオッサンは酒が入ってる。酔った知らないオッサンに絡まれること自体、女子大生にとってはだいぶキツいだろう。それに加えてこんな所にいるおっさんは総じてクソなことが多いので(もちろんいいオッサンもいる)、セクハラだってされる危険性は高い。こんな大人しい感じなら尚更だ。基本的に害はあるが悪意はないので、俺はそんなオッサン達が大好きではあるが…女の子にはきついだろう、やはり。


「まあ、女の子1人で来る場所では無いかも知れませんね、ここ。」

「そうなんです…入ってきたらまず酔ったおじさんに『そこの姉ちゃん、髪の毛触っていい?』って絡まれて…1回トイレに逃げ込んで、気を取り直して戻ってきたら今度は遠くから『いいケツしてんね姉ちゃんー!』って叫ばれました…」

「ああ…」


ああ、どこぞオッサンよ、恐らく口説いただけ、褒めただけのつもりかもしれないが現代の価値観では明らかにそれはセクハラなのだ…


「それで萎縮しちゃって…女の人とかはいても誰か連れがいるし…話しかけられそうな人がいなくて…だから、あなたにぶつかって良かった。」


俺が彼女の方を向くと、彼女は俺を見て笑っていた。スタイルは結構子供っぽいのに(足は微妙にムチムチしているが)何故か妙な色気があって、笑顔なんかも何故か艶っぽく感じた。オッサン達に絡まれる理由がもっとよくわかった気がする。


「どういたしまして。こんなむさ苦しいところなので、女の子がいると華やかになって僕も嬉しいですよ。」


とりあえず俺はそう笑って返して、この女、貧乳で一見おとなしそうに見えたが、実はそんなに大人しくもないのかもしれない…と考えたりした。

ちなみに謎の女の子は152cm、幸夜は184cmです。

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