1.
結局教会のお金はギリギリ使わなかった。
そんなに取り柄もない俺だが、一つだけ自慢できるものがある。
「おはようございます。こんな朝早くから教会の周りのお掃除ですか。大変ですねえ。」
「ははは、おはようございます。そんなこと言ったらそちらも大変でしょう。いつもしてるじゃないですか。この時間帯に畑の見回り。」
人当たりが良くて、
「ハイ、今日の分のパンだよ神父さん!いつもえらいねぇ朝早くから!」
「ありがとうございます。散歩みたいなものですし、偉くなんかないですよ。それに失敗した形のおこぼれが少し貰えるし。」
「もぉ、神父さんったらそれ目当てでしょう!」
慕われてて、
「おはよう神父さん!」
「神父さんおはよう!今日はわたし寝坊しなかったのよ!」
「神父さん!」
こんなにも、周りから好かれている。
「おはよう、みんな。いい朝ですね。今日も一日よろしくお願いしますと主にもご挨拶しましょう。」
「はーい!」
そして、
「おーーーいブロッサムホマレッッ!!!!お前に全部つぎ込んでんだよおこっちはーー!!!いけーーーっ1位取れ1位……ああああんだよクソッッ!!!ふざけんなぁ!!!俺の金どうしてくれんだよクソッタレーーー!!!」
「あんちゃんうるせえぞ!一体いくら賭けてたんだよお」
「3000円だよ!!……あーイライラしてきた。また馬券買っちまうかなあ。教会の金入れればもうちょい残ってるし」
「え、もしかしてあんちゃん神父さんなんか!?全然見えんなあ…」
こんなにも、競馬に夢中になっている。
「まあ、俺ぁ外面良いから。」
俺はとある街の教会の神父だ。名前は幸せな夜と書いて幸夜。苗字はない。
長所は、プライベートと仕事はきっちり分けられること。