↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
69/74

第六十九話「5時間チャージ1日キープ」

もぐもぐ もぐもぐ


幾度かの休憩を挟みながら、10個目の果実を咀嚼する。


人間の先祖とされる猿。


その食事時間は、日に5時間を超える。


木の芽や果実を食べる猿にとって、植物とはそれ程に低カロリー。


この自然界に10秒チャージ2時間キープは存在しない。


今日の食事は、5時間チャージ1日キープなのだ。


ゴクン


「はい、ご馳走様でした。」


真っ赤な果汁でベトベトになった両の手のひらを合わせ、食した果実に感謝を捧げる。


僕のお腹はパンパンである。






「ウェップ。超食べた。お腹いっぱい。」


服(チャードル)の上から大きくなったお腹を擦り、自身の胃袋に健闘を称えて空を見上げる。


太陽の位置から判断するに、今は昼過ぎ2時前後。


午前中から食事を開始したのだ。


休憩を含めて、実に5時間以上である。


うむ。


満足である。






さてさて、食事も終わったことだし、そろそろ木から降りるとしよう。


お腹を擦っていた手を木の枝へと移動させ・・・。


ベトッ


「あ・・・。」


自分のやってしまった失態に、思わず声が漏れる。


僕の手は、真っ赤な果汁でベトベトだったのだ。


服の上からお腹を撫でればどうなるのか・・・それは、火を見るよりも明らかである。


神様から貰った大事な白い布で作った服(チャードル)・・・そのお腹の部分に、真っ赤な手形がついてしまったのだ。






赤く染まった白い布を呆然と見つめる。


「やってしまった・・・。」


川床に戻って穴を掘り、地中から湧き出る伏流水で洗濯をすれば、果たしてこの染みは取れるのだろうか。


否、白い布に付着した果汁は、赤くて濃い。


強力な漂白剤でも無ければ、この染みを完全に落とすことなど、とても不可能だろう。


幼稚園に通っていた頃は、大好きだった色水づくりで服にいくつもの染みをこしらえたのだ。


中でも、こういう赤い染みが落ちにくいのは、よく知っている。


ん・・・。


服についてしまった真っ赤な手形と、スミレ色の房に生った射干玉(ぬばたま)色の果実を交互に見比べる。


このベトつき、この色合い・・・加えて、疎らながらも規則的に実る果実の配列・・・。


「ヨウシュヤマゴボウ・・・?」






“ヨウシュヤマゴボウ”


それは、僕が、かつて色水づくりに使用していたお気に入りの植物の名前である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。